銀ひげ師匠の「妹弟子」という人が、書道教室を訪ねてきた。 名前は、ちとせさん。 書道の妹弟子ではなく、魔法の妹弟子なので、つまり魔女だ。 どことなく、晶太が小さいころから知っている看護師さんに似ている。注射が上手で、いつもゆったり構えているその看護師さんが好きだったから、一目でちとせさんに親しみを感じた。 ちとせさんは、おにぎりの専門店をやっているという。 (おにぎりって、あんまり魔女っぽくないかも……) と思ったけれど、師匠の考えは違っていた。 「おにぎり専門店。なるほど、魔女にうってつけの仕事だな」 感心したように笑っている。 「いいかい、晶太。大抵のものには、それを司る神様がいるが、稲には『稲魂(いなだま)』といって、まあ、別格の神霊が宿っているわけさ。その神様にお伺いを立てながら精米し、おにぎりに最も適したごはんを炊き上げるというのは、魔女の腕の見せどころだろうね」 師匠のことばに