『週刊新潮』 2017年3月9日号 日本ルネッサンス 第744回 聖徳太子は、その名を知らない日本人など、およそいないと言ってよいほどの日本国の偉人である。だが、文部科学省が2月14日に突然発表した新学習指導要領案によれば、その名が子供たちの教科書から消されることになりそうだ。 聖徳太子は新たに「厩戸王(うまやどのおう)」として教えられるというが、神道学者の高森明勅氏が「厩戸王」の事例をアマゾンで調べたところ皆無だったと書いている。皆が親しんできた名前を消して、殆ど誰も知らず、アマゾンでも一例も出てこない名前に変えるとは、一体どういうことか。名は体を表す。聖徳太子という英雄を日本民族の記憶から消し去ろうとする愚かなことを考えたのは誰か。 周知のように聖徳太子は数え年20歳で叔母、推古天皇の摂政となった。現代風に言えば成人前後の年頃の青年が日本国を主導する総理大臣に就任したのである。その若さ