『龍馬がゆく』をはじめて読んだのは中三の時だった。 それが司馬さんの作品との出会いだった。 こんなすごい本が世の中にあるのかと興奮しながら読んだ。歴史上の人物が生きいきと描かれ、歴史を精密に解釈している。単行本で五冊とかなりのボリュームなのだけど、文章のリズムが非常にいいから、一気に読めてしまう。維新のために東奔西走する龍馬がまぶしかった。家の本棚に父が買った司馬さんの本が何十冊も置いてあったので、『龍馬がゆく』を読み終えた後、司馬さんの小説をかたっぱしから読んだ。 司馬さんの作品はどれも面白いのだけど、ただ、司馬さんの歴史小説を「小説」と呼んでいいのかどうかは、わからなかった。司馬さんの「小説」は、 「筆者は考える」 と、作者が頻繁に登場して歴史をどう解釈すべきか考察しているからだ。登場人物が考えるのならわかるけど、一般的にいって、小説ではそんなことをしない。作者が登場して迷ったところを