→紀伊國屋書店で購入 「ポピュラー音楽はすでに伝統芸能か?」 タイトルだけからすると正統派の音楽史だが、実際にはなかなか強烈な〝斜めの目線〟を隠し持った本である。 音楽批評はしばしば「そのとき、オレは現場にいた!すごかった!」的な熱気にのせて語られることがある。対象が音楽であれば、たとえ録音されたものであってもナマモノな的な迫力は大事だろうから、「そのとき」の熱気を「オレ」の一人称で生々しく伝えることにはたしかに意味がある。しかし、それは報告ではあっても、批評の域にまで達することができるだろうか。批評というからには、巻き込まれつつも対象と一定の距離を保つことも必要となる。 同じような問題は、いわゆる音楽史にもついてまわる。歴史というからには、単なる「過去に起きた現在」の寄せ集めだけでは十分ではない。これは歴史です、と宣言する以上、そこには個別の「そのとき」を越えた何かが、流れを持った議論と