綾野剛さん 過去の僕はもう自分ではない ――本作のタイトル『牙を抜かれた男達が化粧をする時代』には、どんな思いがこめられているのでしょうか。 このタイトルを決めた当時は「牙を抜かれた男達が化粧する時代」だと感じていました。と同時に、「どうやって牙を獲り戻した男達になるべきか」という思いは静かにあったのでしょう。それは、作品に向ける牙なのか、全く違うところに向けるのかでも変わってきますが、自分じゃ背負いきれないタイトルがちょうどいいのだろうと。 ――本書には、執筆当時の自分を今の自分が振り返る「証言」が追記されていて、この時はこの作品の撮影中だったのか、ということが分かるようになっています。「自分の私生活が反映される言葉は一語一句ない」と書かれているように、この連載に綴られているのは、常に役者として生きてきた綾野さんの言葉と思いの数々ですね。 この連載で紡いでいる言葉は、その時その時の役を介