今更言うまでもないだろうが、敢えて言おう。 なんて年だったんだ! 誰にとっても記憶に強く残るであろう2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを中心に(ここ重要)、悪夢的な出来事が次々と起こった。僕は例年、年末のベストテン選出時には90本以上の新作映画を観ているが、今年見た新作はなんと36本だけ! そもそも市場が止まっているので観たい映画がやっていないし、それでも頑張って劇場で公開された映画もあったり、配信で公開された新作映画もあったが、これだけ現実が非日常的だと、本来ならば現実逃避として機能していたはずのフィクションの世界には浸ろうとは思わなくなってしまうものなのだろう。当然、逆にステイホームで鑑賞本数を増やした映画ファンもいらっしゃるでしょうが、少なくとも僕にとって今年は大好きだった映画とはちょっと距離を取っておきたい年となってしまった。 ただ、それでもやっぱり映画は好きで、少
1.幸せへのまわり道 未就学児向けのテレビ番組で長年ホストを務める〝ミスター・ロジャース〟と、彼の記事を任される記者との交流の物語。ロジャースの番組のセットという体で、例の〝二つの塔〟が象徴的に写るが、これは恐らく、たかだか20年程しか経過していないのに世界が決定的に変わってしまった分岐点というか、その前時代を描く「最後の寓話」といったような意味合いがあるのではないかと思う。 2.燃ゆる女の肖像 アデル・エネル演じるエロイーズの初登場シーン、ローブのフードがはだけてブロンドが覗くタイミングに見惚れていれば、以降はあっという間の122分。女と女で始まった物語にもう一人の女が加わり、そして再び二人の女の物語になる。 3.ナイブズ・アウト 幅広い層にアピールするミステリ・医療ドラマ・法廷ドラマなどは社会を写す〝鏡〟であるように思うので、その意味で「選挙の負けすら潔く認めない」卑劣な男が、恐怖と憎
例年ならば大晦日の映画ベストテンの発表前に、前夜祭としてコメディ映画ベスト10を選ぶのですが、今年は全然映画を見ていないので、10本も選べませんでした。ただ、こういう現実がファックオフな時にこそ、コメディ映画は僕たちを救ってくれるんですね。それでは未曾有の2020年に輝いたコメディ映画を観ていきましょうか。 毎回言っていますが、これはあくまで「コメディ映画」のベストになります。 【2020年コメディ映画ベスト】 続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画 『サウスパーク』「Pandemic Special」(TVスペシャル) The King of Staten Island ラブバード ホリデー・オンリー:とりあえずボッチ回避術? ユーロ・ヴィジョン歌合戦〜ファイア・サーガ物語〜 【解説】 現実がクソッタレていればいるほど、コメディは最高のエンターテイメントを
シャーリーズ・セロン、グザヴィエ・ドランら、今を煌めく映画人が大絶賛 生涯忘れ得ぬ痛みと喜びを人生に刻んだ恋を辿る 追憶のラブストーリー かつてない熱狂と陶酔の幕開けは、2019年のカンヌ国際映画祭だった。 天才監督グザヴィエ・ドランを「こんなにも繊細な作品は観たことがない」と夢中にさせた作品、それがセリーヌ・シアマ監督の最新作『燃ゆる女の肖像』だ。カンヌ国際映画祭コンペティション部門でパルム・ドールを受賞した女性の監督は、『ピアノ・レッスン』(93)のジェーン・カンピオンただ一人だったが、シアマは本作で脚本賞と、女性監督としては初となったクィア・パルム賞の2冠に輝いた。近年、エンターテイメント業界で問題視され、カンヌでも変革が叫ばれているジェンダーギャップの課題にも、鮮やかな一石を投じる結果となった。その後も、シャーリーズ・セロンが「この映画を本当に愛しています。4回観ました」とまさに愛
「DAU. ナターシャ」はその膨大なフッテージから生まれた映画化第1弾で、ランダウが勤めていた物理工学研究所に併設されたカフェのウェイトレス、ナターシャが主人公となる。スカウトで起用された新人ナターリヤ ・ベレジナヤが演じるナターシャの目を通し、独裁の圧制のもとでたくましく生きる人々と、美しくも猥雑なソ連の秘密研究都市が描き出される。ナターシャの壮絶な運命を予感させる特報はYouTubeで公開中だ。 キャストたちはセットとして当時のままに再建された秘密研究都市で約2年間にわたり実際に生活し、カメラは至るところで彼らの姿を捉えた。町の中ではソ連時代のルーブルが通貨として使用され、出演者もスタッフも服装も当時のものを再現した衣装や食料で生活。毎日当時の日付の新聞が届けられるという徹底ぶりだったという。なお本プロジェクトにおいては、すでに劇場映画第2弾「DAU. Degeneration(原題)
ボウイーをリアルタイムで聞き始めたのは「ロジャー」から。 中三の時だった。 sycob.hatenablog.com 次の「スケアリー・モンスター」を発売と同時に買って、あの奇妙なボウイワールドにどっぷりハマった。 それなのに、次の「レッツ・ダンス」「トゥナイト」 のポップな路線にがっかりした。 更に「ネバ―・レット・ミー・ダウン」では怒りを感じ、それからボウイーを追わなくなった。 最近Youtubeでボウイのインタビューを見た中で、ボウイは『トゥナイト』と『ネバ―・レット・ミー・ダウン』の2枚だけは自分じゃないアルバムだったと白状してる。当時ツアーに出て、「なんでフィル・コリンズのファンが、俺のステージを見に来てるんだ? ってふと思ったんだ。 いや待てよ、今の自分はフィル・コリンズと同じことをしてるではないか、大衆を喜ばすだけの音楽を自分はやっていたんだ」、でもすぐ、「別にフィル・コリン
『復讐者に憐れみを』(’02年)、『オールド・ボーイ』(’03年)、『親切なクムジャさん』(’05年)。ダークなユーモアと緻密な構図、過激な暴力描写の“復讐三部作”などで知られる、韓国を代表する映画監督パク・チャヌク。白黒の字幕のない洋画にあこがれた少年時代から、失敗に終わったデビュー作、そして韓国国内で最高の興行収入を記録した出世作『JSA』――。苦節の時代から変わらぬ不屈の情熱、自らの映画術を語るインタビューの後編。 『お嬢さん』で、パクは物語を牽引する力として、かつて暴力を用いたのと同じようにセックスを意識的に使った。彼はもともと、原作の小説『荊の城』の激しいエロティシズムに惹かれていた。原作はビクトリア時代のイギリスの田園地帯を舞台に、レズビアンの詐欺師を描いたものだったが、彼は脚本を書くにあたり、1930年代の日本占領下の韓国を舞台に設定した。パクは、日本統治を支持した者たちが、
韓国、坡州(パジュ)にある混み合った麺料理店で、パク・チャヌクは2台のカメラとデジタル音楽プレーヤーをカバンから取り出してテーブルにのせた。「これは私の腕の延長なんだ」と彼は言う。 この秋、54歳になるパクは、おそらく韓国で最も有名な映画監督だ。2002年から2005年にかけて製作した復讐三部作――『復讐者に憐れみを』(’02年)、『オールド・ボーイ』(’03年)、『親切なクムジャさん』(’05年)によって、国内外でその名を知られている。この3作品は、韓国映画が世界の舞台へと進出するのにひと役買い、同時に、人々の心に潜む暴力性をつぶさに暴き出す、怖いもの知らずの監督としてパクの名を知れ渡らせた。クエンティン・タランティーノは彼をお気に入りの監督として挙げ、スパイク・リーはパクの名を国際的に知らしめたヒット作『オールド・ボーイ』に心酔するあまり、2013年にそのリメイク作品を製作している。
昨年ポン・ジュノ監督の『パラサイト』が『カンヌ国際映画祭』のパルムドールを受賞し、続いて今年2月に発表された『アカデミー賞』で作品賞を含む4部門を受賞した。そのことで、韓国映画が言語の壁を超えて世界で認められるに至った背景に注目が集まった。 そんなとき、よく見かけたのは「韓国は国内市場が小さいから、海外に観客を求めているのだ」という主張である。果たしてそれは本当なのだろうか。本稿では、1997年のIMF危機(韓国通貨危機)以降の映画の中で、韓国国内で500万人以上(韓国の人口の約10分の1にあたる)の動員を記録した作品を中心に、韓国における国産ヒット映画の変遷を見ていきたい(以降、動員数は1万人以下切り捨て表示とする)。 (メイン画像:『パラサイト』 ©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED) 『シュリ』のヒット。
カルト・モキュメンタリーの14年ぶりの続編『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』を鑑賞。監督はコメディ・グループのヒューマン・ジャイアント出身のジェイソン・ウリナー、脚本・原案・製作はボラット演じるサシャ・バロン・コーエン。共演にボラットの娘トゥーターを演じたマリア・バカロヴァ他、マイク・ペンスにルディ・ジュリアーニ(!?) 『ボラット』が公開された2006年のアメリカは、ジョージ・ブッシュ政権下であった。ボラットは「カザフスタン」出身であることを盾に、アメリカ中を回ってドッキリを仕掛け、行く先々で迷惑をかけまくり、大人を怒らせまくった。 あれから14年、オバマ政権を挟んでアメリカは随分様変わりした。今回もボラットがアメリカ中を回ってドッキリを仕掛け、行く先々で迷惑をかけまくり、大人を怒らせまくる基本的な構造は変わりがないのだが、今回のボラットには使命が
ウイスキーの出てくる映画は数あれど、その役割は映画によって様々。美味しく飲まれるウイスキーから、意外な?使われ方をするウイスキーまで。今夜は、ウイスキーの出てくる名場面を観ながら、一杯やってみてはいかがだろうか。 Index 『お熱いのがお好き』(59)水まくらでシェイクしたマンハッタン 『アニマル・ハウス』(78)ロックなジャック・ダニエルで憂さ晴らし! 『遊星からの物体X』(82)寒さしのぎ以外のJ&Bの活用法とは? 『ブレードランナー2049』(17)過去を蘇らせる、ジョニーウォーカーブラックラベル 『007 スカイフォール』(12)特別な時をザ・マッカランの50年物で 『天使の分け前』(12)シングルモルトで人生立て直し 映画とウイスキーの親和性 『お熱いのがお好き』(59)水まくらでシェイクしたマンハッタン 監督:ビリー・ワイルダー 出演:トニー・カーチス、ジャック・レモン、マリ
先日も書いた通り、『クローン・ウォーズ』シーズン7を観終わった事で一通りアニメ版『スター・ウォーズ』シリーズを完走しました。アニメ版『スター・ウォーズ』は長きに渡る銀河史における小市民的な視点が魅力なシリーズであり、またエピソードによっては実写シリーズの世界観への理解を深めさせるような傑作もあるので、ニワカの僕が言うのもなんですがSWファンには是非とも観てほしいです。 が、そもそも僕はその長さゆえにTVシリーズが苦手なのですが、『クローン・ウォーズ』だけで映画1本+7シーズン133話、『反乱者たち』が4シーズン70話、観なくてもいい『レジスタンス』ですら2シーズン40話あります。合計240本以上のエピソードがあり、世間には『スター・ウォーズ』以外の娯楽も沢山ある中で手を出しづらいファンの方々も多くいると思います。 しかし、今月配信予定の『マンダロリアン』シーズン2にも『クローン・ウォーズ』
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