エリートたちの反撃 ドイツ新右翼の誕生と再生 [著]フォルカー・ヴァイス 2010年、ドイツで論壇を揺るがす「ザラツィン論争」が起こった。 中道左派の社会民主党(SPD)の財政専門家で、独連銀の理事になってまもないティロ・ザラツィンが、ドイツに帰化したトルコ系などを「福祉に依存するクズ」と呼び捨て、排外主義と人種差別むきだしの著書『ドイツは自滅する』(未邦訳)をベストセラーにしたのである。本書はこの論争を吟味し、右派言論の歴史的系譜を探る社会思想史。日本では続編にあたる『ドイツの新右翼』が先に訳されたが、シュペングラー『西洋の没落』以来の「没落文学」を概観し、日本の読者にはむしろわかりやすい順番だろう。 この種の本はえてして保守主義とナショナリズム、排外主義、人種主義などが混然としがちだが、記述と言葉遣いも慎重かつ平明。日本でヘイトスピーチが現象化したのと同時期のこの論争が、単にドイツの特