少女時代の濃密な友情は期間限定。学校や部活という枠組みから離れると、雲散霧消する。社会に出れば、正社員か非正規か、未婚か既婚か、子どもはいるか、といった「属性」によって、いとも簡単に疎遠になる。それでも、地に足つけて歩む女たちはまた出会い、ゆるやかなつながりは続いていく――。 山内マリコさんの著書『一心同体だった』(光文社)は、1980年生まれ、いわゆる就職氷河期世代の終わりの方に属し、今年で42歳になる女たちの30年間を、小学校から40歳まで8つのステージに区切って描いた短編連作である。同年生まれの作者が育った平成まるごと30年余りの時代の空気が、女子たちの日常や会話から立ちのぼる。キーワードは「女の友情」。ジムスタッフと利用客という袖すり合うほどの縁から、ほぼ恋のような濃い友愛まで、女同士はさまざまにつながり、章ごとに主人公をバトンタッチしながら令和へとたどり着く仕掛けになっている。