一直線に数学だけを究めてきたと想像されがちだが、実際は、結婚、子育てとライフステージの変化とともに柔軟にやりくりしながらの研究生活だった。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子) * * * ――小学生のころから算数が得意だったのですか? いえいえ、私は計算が遅くて、算数ができない子でした。数の感覚がすごく鈍いんです。そういう数学者は他にもいらっしゃいますよ。小学校時代はいじめられっ子で、よく泣いていました。学校にいるのが嫌で、早退したり、仮病を使って休んだり。 ――高校生のときに相対性理論に惹かれたとか。 相対論にはローレンツ変換という式が出てきますね。それを見てなんかすごく感動したんです。一つの式ですべてのことが記述できるというところに。たぶん物理の感動とは違うと思いますね。でも、そのころは物理が好きだと思って、物理の偉い人のいる大学に行きたいと、京大志望でした。 とこ