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Synodosに関するエントリは360件あります。 社会政治思想 などが関連タグです。 人気エントリには 『「月曜日のたわわ」を人々はどう見るか/田中辰雄 - SYNODOS』などがあります。
  • 「月曜日のたわわ」を人々はどう見るか/田中辰雄 - SYNODOS

    1.はじめに 日経新聞に載った「月曜日のたわわ」の広告は波紋を呼んだ。「月曜日のたわわ」は青年漫画誌の連載漫画であり、その漫画のキャラを使った広告が不適切であるとして批判されたのである。批判の趣旨は、広告で描かれた絵は女子高生を性的に扱っており、新聞の広告として不適切という点にある。これに対し、表現の自由で許される範囲であるという反論がなされ、活発な論争が起きている。 これに類似の論争はこれまでに何度も繰り返されてきた。古くは、人工知能学会表紙事件(2014年)、新しくは宇崎ちゃん献血ポスター事件(2019年)、そして直近では温泉むすめの事件(2020年)が記憶に新しい。 これらの論争では、人々がその表現をどう受け取るかが争点の一つである。しかし、騒動の渦中に人々がその表現をどう受け取っているかが調べられた例は多くはない。本稿ではこれを試みる。この広告に対して批判する意見、容認する意見はど

      「月曜日のたわわ」を人々はどう見るか/田中辰雄 - SYNODOS
    • 「論理的思考」の落とし穴――フランスからみえる「論理」の多様性/『「論理的思考」の社会的構築』著者、渡邉雅子氏インタビュー - SYNODOS

      「論理的思考」の落とし穴――フランスからみえる「論理」の多様性 『「論理的思考」の社会的構築』著者、渡邉雅子氏インタビュー 社会 「ロジカル・シンキングを身につけよう」「これからの教育に必要なのは論理的に話す・聞く・書く能力である」……論理的に考え、書いたりプレゼンテーションしたりする能力はビジネスや教育分野でもてはやされ、現代では欠かせないスキルとして広くうたわれている。 しかし改めて考えると、「論理的」とはなにか? 「論理的」であることは何に立脚しているのか? どこでも共通する普遍的なものなのか? 『「論理的思考」の社会的構築』を著した渡邉雅子氏は、「「論理的」だと感じる思考や論理の型は、実は文化によって異なっており、それぞれの教育の過程で身につけていくものだ」と指摘している。本稿では、「論理」の多様性やその社会的構築過程、小論文教育から見えるフランス独自の論理のあり方、日本におけるア

        「論理的思考」の落とし穴――フランスからみえる「論理」の多様性/『「論理的思考」の社会的構築』著者、渡邉雅子氏インタビュー - SYNODOS
      • ゲームプレーヤーを精神疾患にするディストピア――久里浜医療センター「ゲーム障害の有病率5.1%」論文のからくり/井出草平 - SYNODOS

        ゲームプレーヤーを精神疾患にするディストピア――久里浜医療センター「ゲーム障害の有病率5.1%」論文のからくり 井出草平 社会学 社会 エグゼクティブ・サマリ 久里浜医療センターの樋口進氏らのグループが発表した論文から、ゲーム障害を過剰診断していく方針が読み取れる。この論文は厚労省・文科省の政策にも影響があると考えられ、ゲーム好きの健康な子どもや若者たちが、精神疾患とレッテルを貼られ精神科病棟に入れられる未来も現実味を帯びてきた。 先日、ゲーム障害の有病率調査が久里浜医療センターによって発表された。【注1】英語論文として発表されたため、まだ一般には知られていないが、専門家の間ではかなり話題になっている。というのも、久里浜医療センターはゲーム障害でない人を診断しようとしているのではないか、と、いわゆる過剰診断を懸念する声が湧き上がっているからである。 本稿では、久里浜医療センターの研究を紹介

          ゲームプレーヤーを精神疾患にするディストピア――久里浜医療センター「ゲーム障害の有病率5.1%」論文のからくり/井出草平 - SYNODOS
        • 「趣味の歴史修正主義」を憂う/大木毅 - SYNODOS

          拙著『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)を上梓してから、およそ3 か月になる。幸い、ドイツ史やロシア・ソ連史の専門家、また一般の読書人からも、独ソ戦について知ろうとするとき、まずひもとくべき書であるという過分の評価をいただき、非常に嬉しく思っている。それこそ、まさに『独ソ戦』執筆の目的とし、努力したところであるからだ。 残念ながら、日本では、ヨーロッパにおける第二次世界大戦の展開について、30 年、場合によっては半世紀近く前の認識がまかり通ってきた。日本のアカデミズムが軍事や戦史を扱わず、学問的なアプローチによる研究が進まなかったこと、また、この間の翻訳出版をめぐる状況の悪化から、外国のしかるべき文献の刊行が困難となったことなどが、こうしたタイムラグにつながったと考えられる。もし拙著が、そのような現状に一石を投じることができたのなら、喜ばしいかぎりである。 しかし、上のような事情から、日

            「趣味の歴史修正主義」を憂う/大木毅 - SYNODOS
          • こんな「リベラル」が日本にいてくれたらいいのに/大賀祐樹 - SYNODOS

            「自民党には入れたくないけど、かといって他に入れたい政党は無いなぁ……」 選挙で投票する時、こんな風に感じたことのある人もいるのではないだろうか。自民党の一強状態が続いているとしても、無党派層の数は多い。二〇一九年七月のNHKの世論調査では、自民党の支持率34.9%に対して、「支持なし」の回答は38.3%と上回っている。一方、野党で一番支持を集めた立憲民主党でも5.8%に留まる。安倍内閣を「支持しない」という回答が31%であるのに対して、与党の公明党を除いた野党の支持率の合計は保守寄りとされる日本維新の会を入れても14.1%に過ぎない。 このことから考えられるのは、自民党や安倍内閣を支持する人が多く存在している一方で、自民党や安倍内閣を支持したくないと考えている人も少なからず存在していること、それにも関わらず、自民党や安倍内閣以外に積極的に支持したいと思える政党があると感じる人がかなり少な

              こんな「リベラル」が日本にいてくれたらいいのに/大賀祐樹 - SYNODOS
            • “子育て罰”を受ける国、日本のひとり親と貧困/桜井啓太 - SYNODOS

              ◇子どもの貧困は、大人の貧困である。 たいていの場合、子どもだけがひとり貧困になるわけではない。一緒に暮らす大人が贅沢な生活をしているのに、子どもを困窮させているのであれば、それは貧困問題ではなくネグレクトである。子どもの貧困は、子どもの親たちが貧しいからこそ生じている経済的問題である。 第一線の貧困研究者たちは、ずっと「子どもの貧困」における「罪のない子どもが貧困におかれている」という台詞の裏側に見え隠れする「大人の貧困は自己責任(罪)である」という価値に対して危惧を表明し続けてきた(注1)。 (注1)松本伊智朗編(2017)『「子どもの貧困」を問いなおす:家族ジェンダーの視点から』法律文化社。編者の松本は、「子どもの貧困」が貧困問題一般から切り離され、「家族責任」や「学習支援」に矮小化されることに明確な反対を示している。 どんな個人も、貧困のままに放置されるほどの罪などない。子どもであ

                “子育て罰”を受ける国、日本のひとり親と貧困/桜井啓太 - SYNODOS
              • なぜ日本に社会民主主義は根付かないのか?/近藤康史 - SYNODOS

                筆者は以前に、『深まる社会民主主義のジレンマ』というタイトルで、近年のヨーロッパ各国における社会民主主義政党の状況について考える論考を寄稿した(2019年3月26日公開)。今回はそこでの議論も踏まえ、その続編として「日本における社会民主主義」について考えてみたい。 現在において「日本の社会民主主義」を考える場合、まず思いつくのは、かつての日本社会党の系譜を受け継ぐ社会民主党の存在であろう。しかし直近の参議院選挙(2019年7月)で社会民主党は比例区にて得票率2.09%で、かろうじて1議席を獲得するにとどまった。この選挙で話題となったれいわ新撰組と比べても得票数は半分以下である。また、同じく話題となったNHKから国民を守る会を、比例区ではかろうじて上回ったものの、その差は6万票程度、得票率にして0.12%の差であった。 もちろん、社会民主党だけが社会民主主義を体現する政党というわけではないだ

                  なぜ日本に社会民主主義は根付かないのか?/近藤康史 - SYNODOS
                • ネットは社会を分断しない――ネット草創期の人々の期待は実現しつつある/田中辰雄 - SYNODOS

                  インターネット草創期の人々は、ネットは人々の相互理解を進め、世の中を良くすると期待していた。時間と空間を超えて多くの人が意見交換すれば、無知と偏見が解消され、世界はよくなっていくだろう、と。しかし、今日、ネットで我々が目にするのは、罵倒と中傷ばかりの荒れ果てた世界である。相互理解に資する建設的な会話はほとんど見られない。ネトウヨ、パヨクという侮蔑語が示すように、人々は相反する二つの陣営に分断され、果てしなく攻撃しあっているように見える。 ネットとはそういうものだという、あきらめに似た見解もひろがってきた。人間にはもともと自分と似た考えの人や記事を選ぶ傾向があり、それは「選択的接触」と呼ばれている。ネットでは情報の取捨選択が自由にできるため、この選択的接触が非常に強まる。自分と同じ意見の人をツイッターでフォローし、フェイスブックで友人になり、自分と似た見解のブログを読めば、接する情報は自分の

                    ネットは社会を分断しない――ネット草創期の人々の期待は実現しつつある/田中辰雄 - SYNODOS
                  • ネット炎上の驚くべき実態――『正義をふりかざす「極端な人」の正体』(光文社新書)/山口真一(著者) - SYNODOS

                    2020.09.28 ネット炎上の驚くべき実態――『正義をふりかざす「極端な人」の正体』(光文社新書) 山口真一(著者)計量経済学 #SNS#炎上 あなたは、このように思ったことはないだろうか。 「最近社会が不寛容になった」 「ネットは攻撃的な人が多く、怖いところだ」 確かに、SNSやネットニュースのコメント欄を見ると、実に多くの罵詈雑言に出会う。「コイツ頭おかしいだろ」などの誹謗中傷はもちろん、「死ね」などの、非常に直接的で攻撃的なワードを使う人も少なくない。今年5月には、ネット上の誹謗中傷を苦に、プロレスラーが亡くなってしまうという悲しい事件も起きた。 今月発売された拙著『正義を振りかざす「極端な人」の正体』は、社会にあふれるそのような「極端な人」について、様々なデータ分析結果からその正体を炙り出す本だ。本書では、 ・なぜネット上で極端な意見が溢れているのか? ・「極端な人」はどれくら

                      ネット炎上の驚くべき実態――『正義をふりかざす「極端な人」の正体』(光文社新書)/山口真一(著者) - SYNODOS
                    • ロシアによる非合理的な軍事侵攻とプーチンの「世界観」/溝口修平 - SYNODOS

                      はじめに 2022年2月24日に始まったロシア軍のウクライナ侵攻から約2ヶ月が経過し、戦争被害の悲惨さが連日報じられている。この間、さまざまなところで「プーチンの狙いは何か」が議論されてきた。本当の「プーチンの狙い」を知るのはプーチン自身のみであり、どのような議論も結局は推測の域を出ないものになってしまう。しかし、この小論では、次の2つを目標に定めて議論を展開することで、「プーチンの狙い」に接近していきたい。1つ目は、「プーチンの狙い」は合理的には説明できないという点を明らかにすることであり、2つ目は合理性に基づかない決定が今回の悲劇を招いているとすると、何がそのような決定をもたらしていると考えられるかを検討すること、である。 ここでの仮説は「利益」ではなく「価値」の実現こそがプーチンの目指すものではないかということである。これはあくまで仮説に過ぎない。しかし、ロシアの行動を合理的に説明で

                        ロシアによる非合理的な軍事侵攻とプーチンの「世界観」/溝口修平 - SYNODOS
                      • 入試国語選択問題の「正解」について――早稲田大学教育学部の説明責任/重田園江 - SYNODOS

                        2022年2月19日に行われた、早稲田大学教育学部一般入試の国語問題(第一問)に、私の著書『フーコーの風向き-近代国家の系譜学』(青土社、2020年)の一部が用いられた(44-51ページ)。 それについて、はじめは何の気なしに問題を解いてみた私は、結果的に以下の問い合わせを早稲田大学入学センターに行うことになった(3月4日。メールの一部を改変なしに引用)。 貴学の教育学部国語の第一問に、私の著書『フーコーの風向き』からの出題がありました。 先日解答例が公表されましたので、それについての質問です。 貴学の解答例 問一 イ 問二 ハ 問三 ニ 問四 ホ 問五 イ 問六 ホ 問七 ニ 問八 ハ 河合塾・代ゼミの解答速報(全く同じ) ホ ハ ニ ホ イ ホ ニ ハ 駿台予備校の解答例 ホ ハ ハ ニ イ ホ ニ ハ この論文全体の論旨、およびフーコーの思想を研究してきた上での私が考える解答例 ハ 

                          入試国語選択問題の「正解」について――早稲田大学教育学部の説明責任/重田園江 - SYNODOS
                        • 「リベラル」なリベラリズムの再生に向けて――『リベラリズム 失われた歴史と現在』ヘレナ・ローゼンブラット(青土社)/三牧聖子(訳者) - SYNODOS

                          2021.02.05 「リベラル」なリベラリズムの再生に向けて――『リベラリズム 失われた歴史と現在』ヘレナ・ローゼンブラット(青土社) 三牧聖子(訳者)国際政治学 #「新しいリベラル」を構想するために 『リベラリズム 失われた歴史と現在』は、Helena Rosenblatt, The Lost History of Liberalism: From Ancient Rome to the Twenty-first Century, Princeton University Press, 2018の全訳である。著者ヘレナ・ローゼンブラットは、ジャン=ジャック・ルソーおよびバンジャマン・コンスタンの研究者として知られる。それらの個別研究を踏まえ、またフランス・リベラリズムについての共著の公刊も経て(注1)、より広い視点から政治思想としての「リベラリズム」の歴史そのものの見直しに正面から取り

                            「リベラル」なリベラリズムの再生に向けて――『リベラリズム 失われた歴史と現在』ヘレナ・ローゼンブラット(青土社)/三牧聖子(訳者) - SYNODOS
                          • 戦後メディアの病――悪と対峙し、弱者を代弁する自分こそが善である/佐々木俊尚 - SYNODOS

                            2011年の福島第一原発事故にまつわる新聞やテレビの報道は、日本の戦後メディアが内包していた問題をまざまざと浮かび上がらせたと言える。風評被害を抑えるべき報道機関が逆に風評を煽ったケースは少なくなく、そうした報道はいまも続いている。これらの風評は福島の人たちへの差別を生じ、大いなる苦しみをもたらした。この問題はおそらく、広島・長崎における被爆者差別とならんで未来への長い期間にわたって禍根を残し、後世に研究される問題になっていくだろう。 「弱者の味方」であったはずの新聞やテレビの記者たちが、なぜこのような差別を引き起こしてしまったのか。本稿では、加害者と被害者の関係という構図からこの問題について論考していきたいと思う。前半ではなぜ戦後メディアがこのような構図に陥っていったのかを歴史を振り返りながら概観し、後半ではこのような構図が社会にどのような影響を与えているのかを論考する。 戦後マスメディ

                              戦後メディアの病――悪と対峙し、弱者を代弁する自分こそが善である/佐々木俊尚 - SYNODOS
                            • 西欧社会民主主義はなぜ衰退しているのか?/吉田徹 - SYNODOS

                              ポピュリズム伸長と社民の衰退 西欧各国の社民政党が大きなダメージを受けている。 2017年から2018年は、英EU離脱と米トランプ大統領誕生があったこともあり、西ヨーロッパ各国での選挙が大きな注目を浴びた。オーストリアやイタリアではポピュリスト政党が参画する連立政権が発足したが、フランスといった欧州の中核国ではポピュリスト勢力は政権の座から遠ざけられ、グローバルなポピュリズム・ドミノは押しとどめられたようにもみえる。 もっとも、これまでの各国選挙の推移を注意深くみれば、留意すべきはポピュリズム政党の伸長以上に、各国政治で中心的な役割を占めていた社民政党の決定的な衰退である。 まず、2017年3月のオランダ総選挙では、与党・労働党がわずか9議席(改選前38議席)という、歴史的敗北を喫した。1980年代から90年代にかけ、同党は中道右派政党のキリスト教民主アピールとともに2大政党のひとつだった

                                西欧社会民主主義はなぜ衰退しているのか?/吉田徹 - SYNODOS
                              • 「不自由展」をめぐるネット右派の論理と背理――アートとサブカルとの対立をめぐって/伊藤昌亮 - SYNODOS

                                2019年8月、「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が右派からの抗議を受け、中止に追い込まれるなか、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のキャラクターデザインなどで知られるクリエーターの貞本義行が発したツイートが物議をかもし、炎上するという一幕があった。 「キッタネー少女像。/天皇の写真を燃やした後、足でふみつけるムービー。/かの国のプロパガンダ風習/まるパク!」などというその発言には、リベラル派からの激しい批判を中心に、千件を超えるリプライが付けられる一方で、右派からは続々と賛意が寄せられ、2万件近くもの「いいね」が付けられた。そうしたなか、貞本は釈明のツイートを投じていったが、するとそれに受けて5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)には関連するスレッドが立てられ、その援護が試みられた。 「不自由展」の検証委員会によれば今回の騒動は、「電凸」などによる抗議が「祭り」に転

                                  「不自由展」をめぐるネット右派の論理と背理――アートとサブカルとの対立をめぐって/伊藤昌亮 - SYNODOS
                                • 日本のプラスチックごみの行方を知って、冷静な議論を/小野恭子 - SYNODOS

                                  このところ、海洋プラスチックごみが海の生物などに与える影響に注目が集まっている。このため、使い捨てプラスチックの代表格とされるレジ袋が全面的に有料化されることになったという。しかし、この因果関係、何かおかしくない?と違和感を持った。 海洋プラスチックごみは、海岸で、または、海中に漂っているうちに摩耗して、マイクロプラスチックになる可能性がある。そのため、海に流出するのを極力防ぐことが重要である。そのため、プラ製レジ袋をもらわず、ペットボトルの飲み物を買わないという行動は一定の意義があると思う。しかし、海洋プラスチック問題解決のため使い捨てプラスチックの使用量を減らす、まずはレジ袋削減から取り組むと言われると、ちょっと待てよ、という気がしたのだ。 ここでは日本は海洋プラスチックごみをどのくらい排出しているのか、そして日本のプラスチックごみはどのように処理されているかをまとめ、プラスチックリサ

                                    日本のプラスチックごみの行方を知って、冷静な議論を/小野恭子 - SYNODOS
                                  • 呉座・オープンレター事件の対立軸――キャンセルカルチャーだったのか?/田中辰雄 - SYNODOS

                                    1.はじめに 2021年、大学関係者の間で呉座・オープンレター事件が話題になった。本稿はこの事件で何が対立軸だったのかを、人々へのアンケート調査の形で調べることを目的としている。 事件のあらましを簡単に述べる。ベストセラー『応仁の乱』の作者である歴史学者、呉座勇一氏が鍵付きツイッターアカウントで、ある女性研究者を揶揄あるいは誹謗していることが明るみに出て、炎上する。呉座氏は謝罪し、NHKの大河ドラマの歴史考証役を降板した。その後、有識者よりこの事件を一般的な女性差別問題として広く世に問うオープンレターが出され、1300人もの学者らが署名する。半年後に呉座氏の所属機関は予定されていた呉座氏の採用を取り消した。 この事件はいろいろな角度から議論が可能で、すでに多くの記事が書かれている。オープンレターが出るころまでは呉座批判一色であったが、採用取り消しで呉座氏への同情論が出るようになり、最近では

                                      呉座・オープンレター事件の対立軸――キャンセルカルチャーだったのか?/田中辰雄 - SYNODOS
                                    • 「みんながマイノリティ」の時代に民主主義は可能か/吉田徹×西山隆行×石神圭子×河村真実 - SYNODOS

                                      アメリカにおけるトランプ政権誕生とイギリスのEU離脱を支持し、その原動力となったといわれる「白人労働者階級」の人々。ポピュリズムと片付けられがちな彼らの政治行動はしかし、これからの民主主義のゆくえを占うものであることには誰もが薄々気づいている。 喪失感に苛まれる英米の白人労働者たちの生の声から彼らの政治行動を分析したジャスティン・ゲスト著『新たなマイノリティの誕生:声を奪われた白人労働者たち』の訳者陣(吉田徹・西山隆行・石神圭子・河村真実)に、同書が問いかける様々な先進国共通の課題について思う存分、語ってもらった。(聞き手・構成 / 弘文堂編集部・登健太郎) 吉田 ゲスト『新たなマイノリティの誕生』は、アメリカのオハイオ州とイギリスのイーストロンドンの白人男性労働者層のエスノグラフィであり、彼らの政治意識を調査した本です。帯に書かれたコピーにもあるように、彼らこそがトランプ大統領とブレグジ

                                        「みんながマイノリティ」の時代に民主主義は可能か/吉田徹×西山隆行×石神圭子×河村真実 - SYNODOS
                                      • 「ネットは社会を分断しない」? ―― 楽観論を反駁する/辻大介 - SYNODOS

                                        本年1月末、イギリスはついにEUを離脱した。だが、それをめぐって二分された世論の溝は、そう簡単に埋まりそうにはない。ふたたび大統領選挙を迎えるアメリカでも、共和党と民主党の、あるいは保守とリベラルの激しい反目が続いている。トランプ大統領が一般教書演説をおこなった直後、そのスピーチ原稿をびりびり破り捨ててみせたペロシ下院議長のパフォーマンスは、そのことを端的に象徴していよう。 日本でも安倍政権シンパとアンチの対立には、これまでになかった根深さが感じられる。たとえば近い将来、憲法改正の国民投票が現実のものとなったとき、はたして私たちは、今のアメリカやイギリスにみられるような社会・世論の「分断」状況を避けることができるだろうか? その意味で、この問題は私たちにとっても決して対岸の火事ではない。 本題に入ろう。ネットが、こうした社会や世論の「分断」をもたらす要因のひとつになっているのではないか、と

                                          「ネットは社会を分断しない」? ―― 楽観論を反駁する/辻大介 - SYNODOS
                                        • 「家族」を擁護する――『事実婚と夫婦別姓の社会学』(白澤社)/阪井裕一郎(著者) - SYNODOS

                                          本書は、事実婚と夫婦別姓をめぐる諸問題を、社会学の視点から検討したものである。 大学院時代の私は、「家族の多様化」をめぐる研究関心から、日本における事実婚カップルの実態を明らかにしようと、いわば「見切り発車」状態で当事者へのインタビュー調査を開始した。 しかし、話を聞くなかで、まず私が抱いていた「事実婚vs.法律婚」という素朴な前提が覆されていった。調査を通じて、当事者の多くが、「夫婦別姓」のために(より正確に言うならば、婚姻時に双方が姓を変えないために)、事実婚という選択を強いられているという現実に直面する。多くの当事者が法律婚を望んでいたり、「結婚」そのものに肯定的な態度を有していることに気づかされたのである。 当初私は、「意外に保守的?」という印象も抱いた。だがしだいに、そもそも自分自身が「保守的」だと感じたこの感覚それ自体が正しいのだろうかと考えるようになった。自分はどのような部分

                                            「家族」を擁護する――『事実婚と夫婦別姓の社会学』(白澤社)/阪井裕一郎(著者) - SYNODOS
                                          • ひきこもりはロスジェネ世代に多いのか――ロスジェネ仮説を検証する/井出草平 - SYNODOS

                                            朝日新聞がひきこもりは40代が多いという趣旨の記事を出した(2019.11.19)。 ・ひきこもり、40代が最多 支援先は若年層が中心 https://www.asahi.com/articles/ASMB954RDMB9UUPI00C.html 最近、行政や新聞記者の人とひきこもり関係の話をすると、「ひきこもりは40代が多いんですよね?」と話題になることが多かったので、気になっていたトピックである。 一部を引用しよう。 朝日新聞が47都道府県と20政令指定市にアンケート。32自治体が「実態調査がある」と答えた。 このうち17自治体は、民生委員などが地域で把握している当事者の数をまとめる形式で2013~19年に調査。詳細を取材に明らかにした16自治体のうち、14自治体で40代が最多だった。 また、16自治体すべてで40代以上の割合が30代以下より多く、今年2月現在で調査した長野県では年齢不

                                              ひきこもりはロスジェネ世代に多いのか――ロスジェネ仮説を検証する/井出草平 - SYNODOS
                                            • ひきこもりと犯罪/井出草平 - SYNODOS

                                              昨今、ひきこもり状態にある者の犯罪が立て続けに起こっている。それに対して、「ひきこもりの犯罪は稀である」という啓蒙記事が新聞には掲載された。この種の報道は正しい。たとえば、東京新聞には下記のような記事が掲載されている。 関連事件の割合わずか 本紙と本紙が加盟する共同通信の記事データベースで、殺人、殺人未遂事件の容疑者で引きこもりだったと報じられたケースが何件あるかを調べた。その結果、1999年から2019年までの過去20年間で43件あった。事件発生後の捜査当局での証言、証拠などから明らかになったものですべてを網羅するデータとは言えないが、年平均で約2件だ。…(中略)…殺人の認知件数は1999年に1265件で、2003年頃に1400件を越えたが、それ以降は減少傾向。過去5年では900件前後だ。そうすると、「年2件」は全体の0.002%でしかない。(「東京新聞」2019年6月6日) 東京新聞に

                                                ひきこもりと犯罪/井出草平 - SYNODOS
                                              • 全国学力テストの失敗は日本社会の縮図である――専門性軽視が生み出した学力調査の問題点/『全国学力テストはなぜ失敗したのか』著者、川口俊明氏インタビュー - SYNODOS

                                                全国学力テストの失敗は日本社会の縮図である――専門性軽視が生み出した学力調査の問題点 『全国学力テストはなぜ失敗したのか』著者、川口俊明氏インタビュー 情報 #新刊インタビュー 2007年から実施されている「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)は、開始当初から実施手法や競争原理の導入など様々な問題点が指摘されてきた。近年は、教員評価に用いることへの懸念、また長時間労働が問題視される学校現場での大きな負担という声も上がっている。 2020年4月は、新型コロナウイルスの影響により実施が中止になったが、それを契機に全国学力テストそのものの見直しの議論も広がっている。新刊『全国学力テストはなぜ失敗したのか』著者の川口俊明氏(福岡教育大学)に、全国学力テストにまつわる誤解と今後の議論の方向性について話を伺った。(聞き手・構成/岩波書店 大竹裕章) ――『全国学力テストはなぜ失敗したのか』では、

                                                  全国学力テストの失敗は日本社会の縮図である――専門性軽視が生み出した学力調査の問題点/『全国学力テストはなぜ失敗したのか』著者、川口俊明氏インタビュー - SYNODOS
                                                • ゲームは学力を低下させるのか――香川県のゲーム条例について/田中辰雄 - SYNODOS

                                                  香川県がゲーム時間の規制条例を打ち出して以来、ネットではさまざまの論評が行われている。この条例の背景にあるのは親が心配するゲームの悪影響であり、具体的にはゲーム依存症とゲームによる学力低下の二つが関心事である。本稿ではこのうち学力低下について筆者の行った調査(注1)を元に論評を加えて見よう。 結論から言うと、条例でプレイ時間を制限する案は良い方法とは思えない。それよりは子供にゲームについて自分でルールをつくらせ、それを守らせる方がよいだろう。 (注1)田中辰雄,2020,ゲームによる学力低下に閾値はあるか―想起による大規模調査―」、GLOCOM DISCUSSION PAPER_No.15(20-001)」 http://www.glocom.ac.jp/discussionpaper/dp15 1.ゲームをしている方が進学率が高い? ゲームと学力の関係では、ゲームのプレイ時間と学業成績の

                                                    ゲームは学力を低下させるのか――香川県のゲーム条例について/田中辰雄 - SYNODOS
                                                  • 非常事態宣言は再再延長すべきか――自粛の強者、自粛の弱者/田中辰雄 - SYNODOS

                                                    2021年3月7日、一都3県の非常事態宣言が再度延長された。2月初めの延長に続く2回目の延長である。 この延長は一部で驚きをもって受け取られた。なぜなら当初予定された解除条件は、ステージ3まで下がること、あるいは、新規感染者数が500人を下回るまでとされており【注1】、これはすでに達成されていたからである。現在ではステージ2まで下げることを目指せという声があがり、東京都は解除条件として新規感染者数が140人以下になることを打ち出した【注2】。いわばゴールに達したところでゴールポストを動かしたことになる。 これについてはいろいろな理由づけがされているが、政治的に最大の理由は世論が延長を支持していることであろう。新聞社の世論調査では、延長を支持するとの答えが8割に達しており、解除を求める声を圧倒している【注3】。この点は、少し状況が改善すると解除を求めてデモが起こる欧米とは状況が大きく異なる。

                                                      非常事態宣言は再再延長すべきか――自粛の強者、自粛の弱者/田中辰雄 - SYNODOS
                                                    • 掃除で、美しい日本人の心を育てる?/『掃除で心は磨けるのか』著者、杉原里美氏インタビュー - SYNODOS

                                                      ――本書はさまざまな場面で進む「教育の道徳化」の例を数多く取り上げています。一連の取材をはじめようと思ったきっかけを教えていただけますか。 私が社会部の教育担当になった後、下の子が公立小学校に入学しました。子ども自身が生活態度の目標を定めて自己評価するような活動があったり、「あいさつ運動」が驚くほど盛んだったりと、10歳以上離れた上の子のときと比べて、明らかに学校が変化していると感じたんです。 それはちょうど第二次安倍政権の下で、教育再生実行会議が道徳の教科化を打ち出すなど、教育政策が大きく動いていた頃です。こうした国の教育政策の方向性と、子どもの内面に介入するような活動や、親に宿題の丸付けをさせたりするような「家庭教育の強化」が進行している学校現場が連動しているのではないか、と思ったことがきっかけです。 取材成果は2017年に、「『教育再生』をたどって」と題した夕刊の連載10回にまとめま

                                                        掃除で、美しい日本人の心を育てる?/『掃除で心は磨けるのか』著者、杉原里美氏インタビュー - SYNODOS
                                                      • 「近所」というフロンティア――地元観光のすすめ/吉永明弘 - SYNODOS

                                                        2020年度は大学人にとっても想定外の年度となった。私は今学期、一回しか大学に行っていない。あとはすべて自宅でオンデマンド式の講義を行った。授業を録画してそれを配信し、視聴してもらうというやり方だ。しかしこれでは出席も取れないし、双方向のやりとりができない。そこで出席を兼ねて質問をメールで受け付けたところ、例年のコメントペーパーよりも本気度の高い質問が多く届いた。それに長文の返事をすると、再びメールが来て、何度かやりとりが交わされる。実はオンデマンド授業のほうが、対面授業よりも個々の受講生と「対話」する機会が増えている。去年までの、特に大人数の授業の場合は、対面といっても実際には「講師」と「聴衆」であり、教員と話をすることなく学期を終える学生が少なくなかった。 そんなわけで、講義については、オンデマンドでもメール等を用いれば何とかなる(ある点では授業が改善される)ことがわかってきた。問題は

                                                          「近所」というフロンティア――地元観光のすすめ/吉永明弘 - SYNODOS
                                                        • 漫画村異聞――海賊版の前向きの解決/田中辰雄 - SYNODOS

                                                          海賊版サイトであった漫画村事件に2021年6月判決が下り、運営者は懲役3年の刑が言い渡された。判決文は「著作物の収益構造を根底から破壊し、文化の発展を阻害する危険性をはらんでおり」と厳しい口調で述べている。 漫画村が著作権法違反であることは間違いない。しかし、文化の発展という観点から見てこの形の解決が前向きと言えるかどうかには疑問がある。前向きの解決は、漫画村をこの世から消去するのではなく、出版社自身が漫画村的なことをはじめることではあるまいか。以下、漫画村の被害額の推定を行いながら、問題を再考して見よう。なお、以下述べることは、秋に刊行予定の『知財のフロンティア』(田村・山根編、勁草書房刊)のなかの拙稿の要約である。詳しい議論はそちらを参照されたい。 まず、漫画村の被害額を個人への調査で推定してみよう。そのため、漫画村閉鎖の前後の比較を行う。漫画村は2018年4月に閉鎖されている。漫画村

                                                            漫画村異聞――海賊版の前向きの解決/田中辰雄 - SYNODOS
                                                          • 現金給付の政府案について考える――複雑で手間のかかる制度設計の成果は?/中里透 - SYNODOS

                                                            現金給付の政府案について考える――複雑で手間のかかる制度設計の成果は? 中里透 マクロ経済学・財政運営 経済 緊急経済対策が閣議決定された。焦点となっていた家計支援策(個人向けの現金給付)については、いくつかの制限を付したうえで自己申告(申請)をもとに給付が行われることとなったが、この政府案についてはさまざまな疑問や批判の声が寄せられている。緊急経済対策の原案の了承を得るために開かれた自民・公明両党の会合においても、対象者や給付の方法をめぐって数多くの異論が示されたと報じられている。そこで、本稿ではパブリックコメントの意味合いも込めて、現金給付の政府案について点検をしてみたい。 あらかじめ本稿のメッセージを要約すると ・ひとまず一律給付を行い、給付金を課税所得扱いとしたうえで、所得が一定の基準を上回る場合には事後に所得税で給付金相当額を回収する方法をとれば、今回の措置と同様のことが、より簡

                                                              現金給付の政府案について考える――複雑で手間のかかる制度設計の成果は?/中里透 - SYNODOS
                                                            • 「聖なるものを人間化する」若者たち―『再帰的近代のアイデンティティ論 ポスト9・11時代におけるイギリスの移民第二世代ムスリム』(晃洋書房)/安達智史(著者) - SYNODOS

                                                              2020.12.11 「聖なるものを人間化する」若者たち―『再帰的近代のアイデンティティ論 ポスト9・11時代におけるイギリスの移民第二世代ムスリム』(晃洋書房) 安達智史(著者)社会学理論、政治哲学 「イスラーム」あるいは「イスラーム教徒(以下、ムスリム)」と聞くと、どんなイメージをもつでしょうか。頭・全身を覆うスカーフやヴェールを着用する女性、白い帽子や首から足下までが隠れるガウンを着こなす男性などを思い浮かべるかもしれません。ヨーロッパに旅行した人なら、西洋の都市空間のなかに異質な文化的景観を作り上げる、少しとっつきにくい人たちという印象を抱くかもしれません。あるいは、より近年では、ヨーロッパやその他の地域で相次ぐ過激主義者による「テロ」となんとなく紐付けてイメージする人も多いかもしれません。 ここで紹介する拙著『再帰的近代のアイデンティティ論―ポスト9・11時代におけるイギリスの移

                                                                「聖なるものを人間化する」若者たち―『再帰的近代のアイデンティティ論 ポスト9・11時代におけるイギリスの移民第二世代ムスリム』(晃洋書房)/安達智史(著者) - SYNODOS
                                                              • 消費税は引き上げられるか?――現代金融理論と「反緊縮」の経済学/中里透 - SYNODOS

                                                                景気後退に対する懸念の高まりから、今年10月の消費増税をめぐる議論が再び活発に行われるようになった。こうした中、反緊縮を謳い、拡張的な財政運営を志向する現代金融理論(Modern Monetary Theory)が注目を集めている。米国の民主党左派が提唱するこの理論の日本における扱われ方は、しばらく前までは「対岸の火事」という感じであったが、最近は国会でも繰り返し議論がなされるようになり、「異端の経済学」は実際の政策運営の動向にも影響を及ぼしつつある。その背景には、緊縮的な財政運営に対する見直しの動きが、「正統派」とされる経済分析の枠組みを含め、より広範な形で生じつつあるということがある。 そこで、本稿では現代金融理論のマクロ経済学的な側面と、緊縮的な財政運営に対する見直しの動きについて論点整理を行うとともに、それを踏まえて今後の財政運営、とりわけ今年10月に予定されている消費増税の行方に

                                                                  消費税は引き上げられるか?――現代金融理論と「反緊縮」の経済学/中里透 - SYNODOS
                                                                • 「富山は日本のスウェーデン」なのか――井手=小熊論争を読み解く/吉田徹 - SYNODOS

                                                                  論壇で「論争」と呼ばれるものを目にしなくなってから久しい。1960年代から活発だった講和条約をめぐる論争、90年代に再燃した歴史認識論争といった硬派な議論はもちろんのこと、80年代の「アグネス論争」といった日常生活をめぐる議論も、女性の地位や男性目線についてなど、今日に通用する社会的な意義を有していた。総合雑誌の類の衰退とネット社会の進展も加わり、時代は「論争」という質的な議論よりも、「一方的な批判」という強度が支配する方向へ軸足を移しつつある。 こうした中、最近になってきわめて注目に値する論争があった。それが日本の市民社会のポテンシャルとその方向性について大きな価値を有する「井手=小熊論争」だ。本稿は、この論争がどのような内容だったのかを確認すると同時に、その背景に大きな社会科学的な意味合いがあること、さらには日本の未来像、もっといって社会設計にもかかわってくるものであることを指摘するも

                                                                    「富山は日本のスウェーデン」なのか――井手=小熊論争を読み解く/吉田徹 - SYNODOS
                                                                  • 日本の公的扶助制度とセーフティネット――国際比較からみた特徴/埋橋孝文 - SYNODOS

                                                                    1.「最後の拠り所」としての公的扶助制度 公的扶助制度とは、「例外的な困窮に対処し貧窮を軽減しうるように、所得および資産の調査(ミーンズテスト)にもとづいて金銭給付を提供する制度」といわれる。それは「最後の拠り所」であって、わが国では生活保護制度が代表的な公的扶助制度である。この制度は次のような2つの性格をもっている。 第1に、年金や医療などの社会保険制度が、貧困を未然に予防するという役割を期待されているのに対して、公的扶助は「所得および資産の調査」を経たうえで給付される“事後的救済”(「救貧」)である。第2に、その財源が全額公費(税金)であること、このことが「所得および資産の調査」を行う根拠となっている。 本稿では、筆者がこれまで発表してきた論文をもとに、日本の公的扶助とセーフティネットが国際比較からみた場合にどのような特徴をもっているかを整理し、そこから導き出される政策的意味合いを述べ

                                                                      日本の公的扶助制度とセーフティネット――国際比較からみた特徴/埋橋孝文 - SYNODOS
                                                                    • なぜ戦争は起こるのか?――『進化政治学と国際政治理論 人間の心と戦争をめぐる新たな分析アプローチ』(芙蓉書房出版)/伊藤隆太(著者) - SYNODOS

                                                                      2020.11.16 なぜ戦争は起こるのか?――『進化政治学と国際政治理論 人間の心と戦争をめぐる新たな分析アプローチ』(芙蓉書房出版) 伊藤隆太(著者)国際政治学、安全保障論 なぜ人間は戦争をするのだろうか。この究極的な問いをめぐり、これまで社会科学では一つの誤った発想が中心的なドグマとなっていた。それは、「戦争は人間の本性とはかかわりがない」という考え方である。 このルソー的なドグマは翻って、「戦争は学習された産物である」、「戦争は西欧文明の退廃さにより引き起こされる」、「人間は本性的には平和的である」といったおなじみの命題に派生していく。たとえば、戦争は人間本性に由来するという古典的リアリスト(ホッブズ、モーゲンソー等)の先見的な洞察にもかかわらず、1970年代以降行動論が台頭する中で、国際政治学はより「科学的」な理論を目指して、人間本性論を拒絶するに至ったのである。 しかし、進化論

                                                                        なぜ戦争は起こるのか?――『進化政治学と国際政治理論 人間の心と戦争をめぐる新たな分析アプローチ』(芙蓉書房出版)/伊藤隆太(著者) - SYNODOS
                                                                      • 異論あり、ファスト映画考――逮捕は悪手である/田中辰雄 - SYNODOS

                                                                        1.問題の所在:ファスト映画とは 2021年6月23日、ファスト映画をアップしていた3人が逮捕された。【注1】ファスト映画とは映画を10分程度に短縮し、解説をつけたものである。映画の一部を切り取ってダイジェスト版をつくり、あらすじがナレーションとして入っており、2時間近くかけて映画本体を観なくても、短時間で映画の中身がわかるようになっている。ファスト映画は権利者に許諾を得ずに映画を切り貼りして利用しているため、著作権法違反は明らかである。容疑者も事実関係は認めており、事件としては決着した。 しかし、逮捕が映画業界として最善策であったかどうかには疑問がある。一般にネット上の違法コピーには正規版の売上を減らす代替効果だけでなく、逆に売上を増やす宣伝効果があるからである。YouTubeで音楽ファイルがながれることは、かつては違法行為とされてきたが、現在では宣伝効果が優るため、音楽業界は音楽をYo

                                                                          異論あり、ファスト映画考――逮捕は悪手である/田中辰雄 - SYNODOS
                                                                        • SYNODOSたわわアンケートが開いたパンドラの函

                                                                          これhttps://synodos.jp/opinion/society/27932/ とかあれhttps://anond.hatelabo.jp/20220425213225の話。 タイトルはちょっとかっこつけたかった。厨二の名残り。 いや、田中辰雄氏が実施したたわわ広告の調査、すごいよね。 ヤンマガも日経も、一つの広告にあれだけ詳細な意識調査をかけることは滅多にないんじゃないろうか。 個人的にかなり面白かったので、ぐだぐだ語ってみたい。しかし、エグい調査やで…。 まず、最近よく無断転載されてるあのグラフ、田中氏の記事でいうと図4。 批判的な意見の者は主に40代~50代の女性に多いことが目立つ。「更年期のヒステリックしわわオバサンが巨乳たわわ美少女に嫉妬」な構図を読み取りたくなるのも分かる。 だがせっかくの調査、他の数字も味わってみよう。様々な決定要因のとこね。 例えば、既婚者。 既婚者

                                                                            SYNODOSたわわアンケートが開いたパンドラの函
                                                                          • 非常事態下の自宅での過ごし方――ヨーロッパの人々の行動や価値観の変化/穂鷹知美 - SYNODOS

                                                                            ヨーロッパ諸国がロックダウンをはじめてから、5週間あるいはそれ以上がたちました。ドイツ語圏では4月下旬から、営業を禁止されていた店舗の営業を認めるロックダウン解除の方針が相次いで発表されましたが、基本的に用事がない限りほかの人と接触せずに家ですごすべき、という原則は変わっていません。人々はそんななか日々をどんな風にすごしてる、あるいはこれまですごしていたのでしょう。 医療や食品や生活必需品に関わる小売や物流関係者、警察など、「社会システムの維持に直結する」と言われる職種の人たちは、就業が義務あるいは認められ、通常以上に多忙な業務に追われています。その一方、現在、仕事ができない人や、ホームオフィスを強いられている人も多々います。その人たちは、1ヶ月以上家にいてなにをしているのでしょう。 みんな家にとじこもっている状況なので、実際のところはよくわかりません。一方で、消費の動向やインターネットに

                                                                              非常事態下の自宅での過ごし方――ヨーロッパの人々の行動や価値観の変化/穂鷹知美 - SYNODOS
                                                                            • 消費減税か現金給付か――制度と経緯に即して考える/中里透 - SYNODOS

                                                                              新型肺炎(コロナウイルス感染症)の影響で景気が急速に悪化しつつある。2月の景気ウォッチャー調査では、足元の景況が東日本大震災の直後の水準に近づきつつあることが示されたが、こうした中、経済対策の柱として消費減税や現金給付の提案が数多くなされるようになった。 もっとも、このような提案については「バラマキ」ではないかとの批判がみられる。この点についてはどのように考えたらよいのだろう? もし仮にこのような措置を実施するとした場合、その具体的なスキームはどのようなものとすべきだろうか? 本稿ではこれらの点について考えてみたい。 バラマキは悪いことか? 一般論からすると、減税や給付などの財政措置については、範囲を限定し対象者を絞ったうえで実施することが望ましい。そのようにしないと、減税や給付などの措置の有効性(ターゲット効率性)が低下してしまうからだ。対象者を特定しない一律の減税や給付を「バラマキ」と

                                                                                消費減税か現金給付か――制度と経緯に即して考える/中里透 - SYNODOS
                                                                              • 趣味の社会学――文化・階層・ジェンダー/片岡栄美 - SYNODOS

                                                                                日本には経済的な格差はあっても、文化的な格差はあまり意識されることがない。たとえばクラシック音楽を好きな人が、JPOPも好きでカラオケをしていたり、あるいは古典文学を愛好しつつアニメも好きという人がいるので、文化はフラット化したとか、日本は文化的に平等だといわれることが多い。しかし本当に文化の格差はないのだろうか。 20世紀後半を代表するフランスの社会学者、ピエール・ブルデューの理論と問題関心に導かれた著者は、計量的な社会調査やインタビュー調査を通じて、日本の文化実践や文化格差について研究を続けてきた。そして昨年、『趣味の社会学 文化・階層・ジェンダー』を上梓した。タイトルの「趣味」とは「テイスト」の意味であり、本書は日本における趣味やライフスタイルの階層性、文化による差異化、文化資本や教育の再生産、階級のハビトゥスなど、文化的再生産とよばれる領域について、ブルデュー理論を日本で検証した社

                                                                                  趣味の社会学――文化・階層・ジェンダー/片岡栄美 - SYNODOS
                                                                                • 「捏造」という言葉の重さについて――批判の自由か《排除》か/志田陽子 - SYNODOS

                                                                                  近年、「捏造」(ないし「ねつ造」)という言葉によって研究者や文筆家を論難する発言が見られる。こうした発言を名誉毀損に問う裁判も起きている。ジャーナリスト・植村隆氏が提起した二つの裁判(2019年6月26日東京地裁判決・東京高裁で控訴審係争中、2020年2月6日札幌高裁判決、最高裁に上告手続き中)や、研究者グループが提起した「フェミ科研費裁判」(2019年2月12日提訴・係争中)などである。この問題で、「表現の自由」を確保するための解釈はどうあるべきだろうか。 以下は2月24日に行われたシンポジウム「フェミ科研費裁判から考える「表現の自由」と「学問の自由」」(於 同志社大学)での登壇報告をもとにまとめた論考です。質問は、司会者の問いかけや質疑応答でいただいた質問を参考に、筆者(志田)のほうで再構成しています。 ――近年、大学所属の研究者が「捏造」「剽窃」などの研究不正に問われる事例が増えてい

                                                                                    「捏造」という言葉の重さについて――批判の自由か《排除》か/志田陽子 - SYNODOS

                                                                                  新着記事