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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (22)

  • 文学は精神に作用するテクノロジーだ『文學の実効』

    「文学は役に立たない」という人がいる。 データに基づく科学とは異なり、文学は主観的な解釈をベースとしており、客観性・再現性は低い。小説を読んでも、実用的ではないという主張だ。 そんな人に真向勝負を挑んでいるのが、書だ。 文学作品が人の心を動かすとき、脳内で起きている変化を神経科学の視点から解き明かす。感動は主観かもしれないが、客観的に計測でき、かつ再現可能なテクノロジーだと説く。 著者はアンガス・フレッチャー[Angus Fletcher]、神経科学と文学の両方の学位を持ち、スタンフォード大学で教鞭をとり、物語が及ぼす影響を研究するシンクタンクの一人である。 『オイディプス王』『ハムレット』『羅生門』『百年の孤独』など具体的な作品を挙げて、それらが脳のどの領域にどう作用し、それがどのような効果を及ぼしているかを説明する。 もちろん、受け継がれてきた作品は、それぞれの時代背景を反映している

    文学は精神に作用するテクノロジーだ『文學の実効』
  • 読書猿さんと飲んできた: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    楽しすぎる&もったいなすぎる会だった。ボイレコ録って文字に起こしたら、それだけでお金もらえるじゃね? というぐらい。 まず「読書猿さんって誰?」という人は、今すぐ[読書猿]に行って帰ってこなくてもよろしい。知らないなら人生損していると断言できるブログだ。どれか一つでもいいので実践したら、それだけで財産になる。 昨今、ハリボテの知の巨人や偽物の教養人が跋扈し、「教養」を人質にコンプレックスを煽って小金を稼いでいる。そのせいで「教養」という言葉が棄損されており、彼を何て呼べばいいか悩む。「哲人」が最適かな(鉄人にも通じるし)と思うが、人は[フィロロギスト]だという。 そんな読書猿さんから、一を投げると十ぐらい返ってくる(1)博覧強記のライトニングトークと、(2)ネットで言えない/聞けないこと、そして、わたしの課題である(3)英語力向上へのアドバイスをもらった。 5時間ぶっつづけでお話したが、

    読書猿さんと飲んできた: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • 読書猿『問題解決大全』はスゴ本

    一生役立つ一冊。 これ、言い切っていいと思うが、わたしが直面するあらゆる問題は、検討済みである。 新しい問題なんてものはない。「問題」をどの抽象度で定義するかにもよるが、新しく「見える」だけで、分析してみれば、分解してみれば、裏返してみれば、再定義すれば、古今東西の人たちがすでに悩み、検討し、着手し、対処してきた問題であるにすぎぬ。 ただし、対応する人にとってみれば、それは新しい問題である。または、初見の状況に直面することもある。だが、人や状況が違えども、問題そのものは、ほどいてみれば、既出なのだ。新しい状況下で、新しい人が、既出の問題を解き直しているといえる。 そして、問題を解決するための方法もまた既出である。わたしが知らないだけで、古今東西の人たちがすでに考え抜いている。ある手法は学問分野になっていたり、またある方法はライフハックやビジネスメソッドになっていたりする。規制や法制度化され

    読書猿『問題解決大全』はスゴ本
  • 『虚数の情緒』はスゴ本

    一言なら鈍器。二言なら前代未聞の独学書。中学の数学レベルから、電卓を片手に、虚数を軸として世界をどこまで知ることができるかを追求した一冊。 「スゴ」とは凄いのこと。知識や見解のみならず、思考や人生をアップデートするような凄いを指す。ページは1000を超え、重さは1kgを超え、中味は数学物理学文学哲学野球と多岐に渡る。中高生のとき出合っていたら、間違いなく人生を変えるスゴになっていただろう。 ざっと見渡しても、自然数、整数、小数、有理数と無理数、無理数、素数、虚数、複素数、三角関数、指数、関数と方程式、確率、微分と積分、オイラーの公式、力学、振動、電磁気学、サイクロイド、フーリエ級数、フーコーの振り子、波動方程式、マックスウェルの方程式、シュレーディンガー方程式、相対性理論、量子力学、場の量子論を展開し、文学、音楽、天文学、哲学、野球に応用する、膨大な知識と情熱が、みっちり詰め込まれ

    『虚数の情緒』はスゴ本
  • 「嫁さんとセックスができなくて泣いた」わたしを変えた2冊

    「嫁さんとセックスができなくて泣いた 」を読んで泣いた。子どもができて夫婦生活が疎遠になって、「もうそういう目では見れない」と宣言される話。 おまえは俺か。 十年前、同じ涙を流したことがあった。他人事とは思えない。なので、試行錯誤の渦中でわたしが出会った2冊を紹介する。参考になるかどうか分からない。だが、わたしが変わるきっかけをくれたのは間違いない。どうか、同じ涙を流した目に触れますように。 結論からいうと、は役に立たない。メンタルなやつ、テクニカルなやつ、いろいろ読んだ。スキンシップはこうしろとかムードはこうやってとか、あまり参考にならない。 しかし、そこに何を見つけてどう動くかが肝だ。「答えみたいなもの」ならにもネットにもたくさんある。だが、そこから何を選んで実行することこそが、「答え」だ。そういう「もがき」の中で、自分に引っかかるものを探していたんだと思う。変わっていく関係のなか

    「嫁さんとセックスができなくて泣いた」わたしを変えた2冊
  • 村上春樹の読書案内&創作教室『若い読者のための短編小説案内』

    もはや「若い読者」ではないし、熱心な村上春樹の読者でもないが、この一冊から得るものは多かった。理由はみっつある。 ひとつは、なぜ村上春樹が短編小説を書くのかを、確認できたこと。もうひとつは、小説を読む喜びの根っこがどこにあるのかを、再確認できたこと。そしてみっつめは、小説を書く秘訣のうち、最も重要なものが何であるかについて再確認できたこと。すべてここで明かすつもりだが、聞いてしまえばなんてことのない。だが、そこに至るまでの過程こそが、喜びであり肝なのだ。これ、「人はなぜフィクションを必要とするのか」にもつながる話。 書は、以下の作家から各一作品ずつ短編小説を挙げ、読み手と書き手の両方の視点から読み解いた読書案内。米国の大学での講義内容を元にしているため、しゃべり言葉になっており、とても読みやすい。また、あらすじを紹介しつつ進めているため、これらを読んでなくても問題なく楽しめる。(ただし、

    村上春樹の読書案内&創作教室『若い読者のための短編小説案内』
  • 妻を持つべきか

    持てる人はほろ苦く、持たざる人は甘さを感じる一冊。 持つべきか、持たざるべきか、それが問題だ……なんて深刻に考えず、勢いよく結婚を申し込んで十余年。他人は知らんが、少なくとも今のわたしにとって、「よい」方向へ進んだ(と、思いたい)。この「よい」とは、自分の人生を破滅的なトコから抜け出す方向への「よい」。砕いていうなら、銭金とか、生活習慣とか、人づきあいとか、感情の落とし処になる。もちろん、子どもの存在も大きい。子のおかげで生きてこられた、と断定できる。 これは、「少なくとも今のわたしにとって」の現在進行形の断定であって一般化できない。だから安易にオススメできない。踏みきるにはある種の勢いと直感が必要だが、続けるには別の種類の努力と諦観が「互いに」必要だから(←これも「今」「わたし」の判断)。 人生は還元できないが、結婚も然り。だが、人生同様、経験を積んだ人の言葉から傾向はつかめる。ソクラ

    妻を持つべきか
  • 劇画「家畜人ヤプー2」がパワーアップしてるぞ

    天下の奇書「家畜人ヤプー」のコミック版。 「子どもからエロを隔離せよ!」という怒号(歌声?)でゾーニングが流行ってる。「非実在青少年」とかいう脳みそ花畑な連中がいるが、学級文庫に乱歩や手塚が並んでいるのは知ってるのかね。「火の鳥」や「二十面相」に耽るわが息子は、「芋虫」や「人間椅子」まであと半歩。見てみぬフリはできぬ。書くにせよ、読むにせよ、物語の駆動力は性と死なのだから。 わたしの子ども時代は、もっとオープンだった(だからこんな変態が育ったともいえるw)。「ドーベルマン刑事」はジャンプだったし、「実験人形ダミー・オスカー」にはお世話になった。しかし、セックスもバイオレンスも「こんなものか」とタカくくっていた小僧に、石ノ森章太郎/沼正三「家畜人ヤプー」は強烈すぎた。人間を完全に改造しつくし、便器や家具にしてしまう発想はなかった。いや、この世界の「日人=ヤプー」は「人」ですらないのだから、

    劇画「家畜人ヤプー2」がパワーアップしてるぞ
  • 徹夜小説「ガダラの豚」

    2ちゃんねらが絶賛してた「ガダラの豚」読了。なるほど、「寝る間も惜しんで読みふけった」のは、激しく同意、わたしにもあてはまった。 図書館に限るが、面白い小説を探す方法がある。天(の上面)から見てみよう。新刊なら長方形の天が、平行四辺形になっているはずだ。つまり、背(背表紙)がナナメになっているのが、面白いなのだ。は開くと、開いた場所から背がひしゃげてくる。閉じると、元に戻ろうとするが、ずっと開いていると、開きグセがつく。つまり、ナナメになっている背が急角度であればあるほど、「ずっと開きっぱなしになっていた」すなわち「閉じる間もなかった」になる。 わたしが借りた、一巻の「ガダラの豚」の背は、45度だった。これほど急角度なのは珍しい。半信半疑で読みはじめ、とまらなくなる。テーマは超常現象と家族愛。これをアフリカ呪術とマジックと超能力で味付けして、新興宗教の洗脳術、テレビ教の信者、ガ

    徹夜小説「ガダラの豚」
  • 親も人の子「子どもの心のコーチング」

    自分の親業を再確認する読書と相成った。 実用書を読む理由は二つある。ひとつは、知らないことを知るためで、もうひとつは、知っていることを確認するため。書は後者に値し、わたしの子育てがコーチング手法に沿っていることが分かった。やり方がよければ「よい子」が育つとは限らないが、(そもそも"よい子"という言葉の胡散臭さは承知の上)、自分で考え・生きていける大人になるための手助けにはなる。書は、まさにそのための良書。読者に問いかけるような章タイトルで、思わず「答え」を知りたくなり、先を促す仕掛けになっている。たとえば、こんな感じ。 子どもが朝起きるのは誰の仕事? 「人の役に立つ喜び」をどうやって教えるか? どうやって「愛すること」を教えるか? 最初の問いかけは、親子の共依存を的確に示している。「起してもらう」子どもが母親に依存していることは明白だが、この問題はむしろ母親。「子どもを遅刻させたくない

    親も人の子「子どもの心のコーチング」
  • 子離れのすすめ「13歳からの心を強くする子育て」

    親の目的は、「わが子を大人にする」に尽きる。 そして、あらゆる子育ては、「そのためにどうする?」を語ったもの。それ以上でも以下でもない。 もし、プラスアルファとか別の「目的」をわが子に見出した場合、無理強いや歪みを引き起こす。どんな時代にも、おかしな親がいる。自分が果たせなかった夢を子どもに押し付けたり、自分の思い通りにわが子を操ろうとしたり(わたしの子ども時代には、『母原病』なる言葉が流行った)。わが子は小学校の高学年。そろそろ難しい年頃にさしかかる前に、予習のつもりで読んでみる。予想通り、厳しい(でも王道の)言葉が並んでいる。 書の真髄はここになる。 赤ちゃんは、肌を離すな 幼児からは、肌を離しても手を離すな 小児からは、手を離しても目を離すな 少年からは、目を離しても心を離すな ← ここ もちろん「少年」に限らず「少女」も同じ。肌をくっつけ存在を知らせ、手を引いて歩き、迷わないよ

    子離れのすすめ「13歳からの心を強くする子育て」
  • 真実より正しいフィクション「アイの物語」

    人類が衰退し、マシンが君臨する未来から、「現代」をふりかえった秀作。 SFがすばらしいのは、現代を「ふりかえって」眺めることができるから。未来や別次元から、「いま」を理解しなおすのだ。もちろんテクノロジーが混ざるから、バイアスはかかる。だが、拡張された鏡ごしに、「いま」を観察できるのだ。「人生は後ろ向きにしか理解できないが、前向きにしか生きられない」と喝破したのはキルケゴールだが、人生だけじゃなく、「いま」も然り。 アンドロイドがヒトに語る6つの物語。それぞれの物語が、「いま」で言う「SF短編」となっている。元ネタ探しが楽しい―――シーマン、BBS、連作小説攻殻機動隊、老人Z、ラブプラス……「ラブプラス」は世に出ていなかったから、"予言"的中度をふり返ってもなかなかのもの。500頁超の大作だが、ミステリ要素の強い展開とあまりの面白さにイッキ読みしてしまう。 なぜマシンが支配しているのか?

    真実より正しいフィクション「アイの物語」
    shirai-satoru
    shirai-satoru 2010/07/02
    {スゴ本}
  • こころの保険「ゆるす言葉」

    怒りについて、考えなおしているいま、ダライ・ラマ14世の「ゆるす言葉」を読み直す。 初読は、北京オリンピックでチベット問題がクローズ・アップされていた2008年のこと。聖火リレーをめぐって世界各地で混乱が起きていたころ、ダライ・ラマのインタビューが読めると聞いて手にしたのだ。日中国の微妙な関係に配慮しており、政治的大人かつ茶目っ気のあるところを見せてくれる(でも70越えた爺ちゃんなんだよね)。 今回は、怒りについて彼の意見を訊く。怒りをどう扱うか、こう断言する。 怒りと憎しみこそが、私たちの当の敵なのです。 これこそ私たちが全面的に立ち向かい克服すべき相手なのであり、 人生に時として現れる一時的な「敵」は、真の敵とはいえないのです。 それぞれの発言は、もちろんチベットの現状を踏まえたものに見える。誰に向けたメッセージかによって、「一時的な『敵』」が誰なのかが変わってくるように受け取れ

    こころの保険「ゆるす言葉」
  • 正しい怒り方

    子どもに「怒り」を教える話。 わたしの息子は怒りっぽい。理由は至極かんたんだ、わたし自身が怒りっぽいから。無茶な割込みをかけるセルシオに怒鳴り、脱税は謝りゃいいんでしょと嘯く政治家は○ねと呪う。教える親こそ未熟者だね。 ささいなこと……計算ミスに気づいたり、誤字を指摘されたりすると、ムキーとなる息子に、「ガマンしろ!」と叱りつけそうになって、ハッと気づく。これは、わたし自身が小さい頃からいわれ続けてきたこと。そう、怒っているときに「怒るな」と強要されることほど理不尽なことはない。だが、わたしは言われ続けた。我慢しなさい、お兄ちゃんなんだから。こらえなさい、もう高学年(中学生、高校生)なんだから、恥しいことだと分かるでしょ? その結果どうなったか?自分の「怒りの感情」とは、抑えるべきもの、こらえるべきものだと教えこまれた。怒りとはウンコのようなもので、適切な場所で排出する以外は、その兆候を漏

    正しい怒り方
  • 自分でエラーに気づくために「失敗のしくみ」

    『失敗のしくみ』は、現場のリスクマネジメントの好著。「失敗」の原因と対策について、ケアレスミスから重大な過失まで幅広くカバーしている。見開き左右に文+イラストの構成で非常に分かりやすい。 仕事上、センシティブな情報に触れることがあるし、失敗の許されない作業もある(この「許されない」とは、失敗したら損害賠償という意)。クリティカルな作業は、複数人でレビューを経た手順を追い、チェックリストを指差呼称するのがあたりまえ。それでもミスを完全になくすことはできない。テストファイルを番環境に突っこんだり、間違ったスクリプトを実行したり、ヒヤリハットは忘れた頃にやってくる。 ありえないミスとして、単位の取り違えも有名だろう。1999年に起きた火星探査機の墜落事故は、メートルとフィートを間違えたことが原因だし、2010年早々に発生した「2000年問題」は、10進数(10)と16進数(0x10)を取り違

    自分でエラーに気づくために「失敗のしくみ」
  • 【成人限定】 「フロム・ヘル」はスゴ本

    100年前のロンドンを舞台に、切り裂きジャックをモチーフにした傑作。血の色は黒、どす黒い闇と同じであることを思い知った。もちろん、よい子は、読んでは、いけない。 「コミック」や「マンガ」という呼び方は適当でない。画とフキダシはあれど、物語装置は精密で、伏線は丁寧に織り込まれており、「見る」というより「解く」ように読みしだく。巷の呼び名「グラフィック・ノベル」が合っているね。 そして、全編モノクロ。バッキンガム宮殿の女王陛下からホワイトチャペルの娼婦まで、ありとあらゆる階層の人物が、文字どおり、「黒」と「白」に塗り込められる。全体的に、重くて、寒い。光の当て具合が絶妙で、独白のときは横顔を浮かび上がらせ、凶行の場面ではもちろん後ろから照らす(当然、表情は見えず、わずかに光る白目が強い殺意を顕す)。「解体」現場は明々と照らされた手術室のようなシーンで立ち会える。嬉しくはないが。 ほとんどのペー

    【成人限定】 「フロム・ヘル」はスゴ本
  • 通勤電車でよむ詩集

    朝はバッテラ状態なので、ちゃんとが読めるのは帰りの電車になる。寝る人・読む人・学ぶ人、狩る人・観る人・聴き入る人さまざま。そんな中で、「じわじわする人」という珍種になれる一冊。 小説とは異なり、詩を読むことは、同じ「読む」でもかなり違う。もっと身体的な作用・反作用を生じさせる。たとえば、アクロバティックでエロティックな言葉づかいに目眩を覚えたり、行間を跳躍する飛距離に総毛だったりと、かなり忙しい。プロットがどうとかテーマがあれだとか、アタマでの再構築がいらない分、わたしの感情に、直接、ことばが流れ込んでくる。疲れて眠くて無防備な顔で読んでいると、思いがけない行に心を奪られて、涙がとまらなくなるときもある。あぶないあぶない。 書は、「通勤電車で読める」ことを目的に、目方を軽く、窓口を広くとった詩のアンソロジー。辛みを呟いたり、哀しみをぶちまけるような元気な詩は入っていない。代わりに、疲労

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  • ジョージ・R・R・マーティンすげえ「洋梨形の男」

    巻措くあたわず夢中に読める、これは面白いぞ! 嫁さんの最近のオススメは、「氷と炎の歌」シリーズ。辛口の嫁さんが「文句なしの大傑作」とベタ誉めする一方、完結してないことが難だという。新刊が出た瞬間に読了するというジャンキーぶりで、翻訳にガマンできず、とうとう原書にまで手を出している。未読のわたしには、「完結してから着手せよ」と厳命する。 なので、同じ著者であるジョージ・R・R・マーティンの「洋梨形の男」に手を出して驚く、ページ・ターナーだよこれは。つかみ、プロット、アイディア、"意外な"展開とオチ、ページをめくらせる手をとめることができない。人間のおぞましさとグロテスク臭が染み出しており、扶桑社ミステリーのスティーヴン・キングのような、読み手を落ち着かない気分にさせてくる。 6作品の中・短編集で、ジャンルはホラー?ファンタジー?SF?うまく付けられない。そんなジャンル分けを無意味にするほどの

    ジョージ・R・R・マーティンすげえ「洋梨形の男」
  • 被曝治療83日「朽ちていった命」

    核爆発時の爆心地レベルで被爆した人は、どんな運命をたどるのか? 1999年9の月に起きた、東海村の臨界事故。核燃料の加工作業中に、大量の放射線を浴びた男を救うため、日最先端の医療チームが結成される。書は、患者とその家族、医療スタッフという「人」に焦点を合わせ、壮絶な83日間をレポートする。 運びこまれたときは"普通"に見えていた患者の染色体は、既に完全に破壊されていたため、症状が進行してゆくにつれ、臓器・組織・機能は深刻なダメージを受けていく。読み手は、放射線被爆の凄絶さとともに、前例のない治療を続ける医療スタッフの苦悩に向き合うことになる。 もちろん患者の細胞は、ほとんど分裂しない。新しい細胞が生み出されることなく、古くなった皮膚が剥がれ落ちてゆくと、どうなるか?カラー写真で示された「右腕」が詳細に語る。入院当初の、ふつうに見える右腕と、被爆26日目の、ちょうどミディアム・レアに焼け

    被曝治療83日「朽ちていった命」
  • 嫁と「天元突破グレンラガン」

    これはスゴい神アニメ!見たことが経験となる傑作。「ナディア」「エヴァ」に並ぶ、殿堂入り。生きててよかった、こんな作品を見れて。テーマソングを耳にするたび、繰り返し観るたびに、生きる勇気をもらえる。オレの能書きは放っておいて、みんな見ろ観ろ! 話は少しさかのぼる。「鋼」の新しいのが予想外というか予想通りにアレで、「原作のどこを削ったか探し大会」になってしまう。「そのセリフを外すのか!?」「水島のほうが愛がある」と厳しい厳しい。夫婦ともどもアルコールがしこたま入っているのと、期待が大きすぎるのとで、新シリーズには容赦しない。「ホラ、原作どおりに忠実にアニメにしてやったからよぉ」という態度に辟易して録るのも観るのもやめてしまった。 で、エマソン「自己信頼」のコメントでオススメされた「天元突破グレンラガン」が浮上する(hageさんありがとう)。他にも「君が望む永遠」や「巌窟王」が候補としてあったが

    嫁と「天元突破グレンラガン」