国王から貧民まで 活版印刷は、まさしく「世界を変えた発明」でした。 火薬や羅針盤など、国々の趨勢を決め、歴史を変えた発明品はたくさんあります。しかし、戦場や航海に出ない人々がその威力を味わうことは難しかったでしょう。一方、印刷物は国王から貧民まであらゆる人が手にします。社会のすべての階層に影響を与えて変化をもたらしたという点で、印刷技術は特別です。 活版印刷の特徴は、あらかじめ「文字を刻んだ小さなハンコのようなもの」を大量に作っておく点です。このハンコのようなものを「可動活字」あるいは単に「活字」と呼びます。印刷したい文章に従って、この活字を専用の枠に並べます。この作業を「植字」あるいは「組み版」と呼びます。組み終わった版にインクを塗り、紙に押し付けることで、文章を印刷します。これが活版印刷のごく大雑把な仕組みです。 まず、①活字を組み換えれば、原理上、どんな文章でも印刷できること。また、