浮気をしたことがない、と言い切れる人間は、今、この世にいるのだろうか。何処から何処までが浮気で、何処から何処までが浮気じゃないのか、浮気をしたら、されたらどうするか。いつでも、そんな話は巷に溢れていて、誰もが食傷しているのではないかと思うが話は尽きない。 ちえりは、今、先日、「彼のことが大好き」と言いながらも、昨日、家に泊まった別の男が忘れていった靴下が臭過ぎて困る、と言いながら、けらけら笑う早苗の話を聞いている。 * * * 早苗は、私の勤めるキャバクラの後輩の友達だ。後輩と一緒に体験入店したものの、早苗はいい加減で遅刻を繰り返し、罰金を取られ、それに対して文句を言って店に出なくなった。まだ19歳で、四国から今年の春に上京したばかりだ。今は、結局、親の仕送りで暮らしている。 早苗には今、好きな男がいる。早苗いわく「人生で最大に最高に好きな人」で、何処でも、どんな話をしていても場所も文脈も