家計簿は、時代の空気から景気、物価、賃金の動向、税・社会保障の仕組みまで映す鏡。第1部の「転機の構図」は、人生の節目を迎えたときどう向き合うのか。人々の営み、この国の成り立ちを見つめ直します。 ◇年収380万円「我慢強制、ふびん」/一人っ子に年250万円支出 「妻は子どもを欲しがっている。しかし、子ども1人を育てるのにいくらかかるのか、不安。産むのをあきらめかけている」 近畿圏の山あいで農業を営む男性(35)は、家計簿を見ながら語った。5年前、脱サラして農家に。朝8時から畑に出てミズナやコマツナを作り、夜は毎日、夜10時過ぎまで塾で教える。ここ数年の手取り収入は平均で年約220万円。介護施設で働く妻(33)も約160万円を稼ぎ、手取りは計380万円になる。貯蓄は農地や機材を買ってほとんどなくなったが、出費を300万円以下に抑え年80万円以上の黒字だ。 子どもをためらい始めたのは、同年代の友