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hidekatsu-izuno.hatenablog.com
「最低限必要な日本史の知識を考えてみた」でも書いたけれど、歴史教科書やいわゆる教養書、いずれも細かすぎるという不満がある。私のようにそこまで歴史に詳しくなりたいと思っていない人間にとっては内容が過剰すぎるのだ。 知識には「知らない」と「知っている」と「詳しく知っている」の3段階があると思う。そして「知らない」と「知っている」の差は果てしなく大きい。歴史を学びたければ高校の歴史教科書が良いとは言っても、「知らない」ところからスタートするにはハードルが高すぎる。 そこで、もし私が子供の頃に出会うのなら、こういう資料が欲しかったな、という思いを込めて「10分で日本史」という資料を作ってみた。表紙含め10ページしかないので、1ページ1分で読めば10分で全部読める。 原始時代から現代までを網羅しており、人物も権力の移り変わりに重点を置くことで、歴史好きでなくとも知られているような主要人物はひと通り出
「統計学とは何か、そしてベイズ統計学の話」に反論があまり寄せられなかったので調子に乗って、今度は(古典的な)統計モデルの話(ただ、だいぶ理解の怪しい話なので間違いがあれば教えてほしい)。 現実の世界では単なる加減算だけでなく2乗や 3 乗あるいはべき乗、反比例といったいろいろな関係があるはずなのに統計モデルではめったに出てこない。あったとしても対数変換や一般化線形モデルのリンク関数のように、それぞれの方法で1次関数の線形モデルに落とし込んで扱うものばかりで任意のモデルを自由に扱えるようなものではない。 では、n次関数はどう扱うんだろうと思って、調べた結果「Wikipedia: 多項式回帰」にたどり着いてはたと気付いた。これも結局、基底関数を使って1次関数の形に。そして、この先にはカーネル法を使うSVMがある。これもカーネル関数を使って1次関数に変換して解いている。 そういえば昔、人類は結局
最近、統計学にはそれなり詳しくなってきたと思う一方、統計学と機械学習は本質的に何が違うのか、という基本的なところでずっともやもやを抱えていた。統計学にもノンパラメトリックなものはあるし、統計学も広い意味では機械学習のひとつと言えなくもない。機械学習の中にもNNもあれば、テーブルデータにより適していると言われる決定木モデルやクラスタリングに使う教師なし学習の k-means もある。 たしかに「「統計学と機械学習の違い」はどう論じたら良いのか - 渋谷駅前で働くデータサイエンティストのブログ」で説明されるように、統計学は説明に、機械学習は予測により重きが置かれているという目的の違いはあるものの、例えばランダムフォレストなどの決定木モデルは機械学習と言えど説明にも使えるし、ベイズ推定などは予測を通じて説明するという側面も強い。そこにはグラデーションがある。 ニューラルネットとランダムフォレスト
リチャード・P・ルメルト「戦略の要諦」という本を読んだ。書名の通り、戦略について書かれた本ではあるのだけれど、経営者よりもむしろPMやPdMにとって有用なリーダー論になっているのが面白い。あまりに面白かったので前著の「良い戦略、悪い戦略」まで読んでしまった(前著も素晴らしいが、「戦略の要諦」の方がより洗練されているので先に読んだ方が良いと思う)。 戦略の要諦 (日本経済新聞出版) 作者:リチャード・P・ルメルト 日経BP Amazon 以前「管理職の条件」というエントリで所謂「リーダー」には業務マネジメントと部下マネジメントという2つの異なる概念があることを書いた。その切り口で語るならば、この本では業務マネジメントにおける「戦略」の重要性が書かれている。 私はPM/PdMが本業ではない(たまにはやる)けれども、システム開発の業界に20年以上いて、数億~十数億円規模の大規模開発案件のアーキテ
細々と統計学を調べ続けているが、最近ようやく統計学というものが何なのか、おぼろげながらわかるようになってきた(なお、統計学ができるようになってきたわけではない) 統計学を知る前の自分と今の自分をくらべたとき、間違いなく違うのは統計学に対する信頼だろう。以前は、統計学は数学の一分野であり、正しい分析手法を使えば真の答えが得られるものだと思っていた。しかし、実際には統計学者ジョージ・ボックスが言ったとされる「すべての(統計)モデルは間違っている、だが中には役立つものもある)」という言葉の方が実態に近い。 統計学は基本的に「不可能なことを可能にする(不良設定問題を扱う)」学問だ。例えば、1、3、5 という数字の列から何が言えるだろうか。確実なことは3つの実数値が観測された、ということだけで、それ以上のことは想像するしかない。奇数列かもしれないし、乱数から3つの値を取得した際に偶然それっぽい数字が
たまたま見かけて買った本だったけど、おそらくこれはすごい本だ。マーケティングについては門外漢なので、間違ったことを言っている可能性もあるが、「21世紀におけるマーケティングの教科書」と呼んでも差し支えない内容だと感じる。 戦略ごっこ―マーケティング以前の問題 作者:芹澤 連 日経BP Amazon 作りとしては「事実に基づいた経営―なぜ「当たり前」ができないのか?」に近く、主に2000年以降のマーケティング系論文を著者なりにまとめて解説した本となっている。このような作りは邦訳書籍ではしばしば見かけるものの、日本の書籍としては大変珍しい。日本人が書いたビジネス書はたいてい、著者の経験から来る思いつきが列挙されるだけで根拠は皆無なことが多い。この本では、多くの箇所で引用元の論文が記載されておりかなり信頼できる。*1 マーケティングの本と言えば、コトラーや4P/4C分析などのフレームワークの解説
歴史に苦手意識があるわけではないのだけど、まったく縁がない人生だった。理系に進む多くの人がそうだと思うが高校で地理を専攻すると高校でまじめに歴史を学ぶ必要がない。高校でも授業はあったはずだけれど、中学校の知識(しかも不完全)で止まっている。 どれくらい縁遠いかと言うと、旅行に行くとその先の史跡の説明で名前くらいは知ってたけどこんなことがあったんだ、と知るくらい。 それがこの歳になって多少歴史づいている。たぶんきっかけは大河ドラマを見たことで奥さんの付き合いで見た篤姫だと思う。篤姫自体は歴史好きの人なら(小松帯刀にフォーカスがあたったことを除けば)噴飯もののストーリーだったとは思うのだけど、日本史を知らない私にとって最初は幕府よりだった薩摩藩がいつの間にやら敵になっていく流れはミステリーとして面白く感じた。 その後、幕末に関する本を読んだり、青天を衝けを見たりして、明治維新期の異常性に気づい
年末らしく今年のおすすめの本3選と思ったのだけど、子育てと仕事が忙しくてあんまり読めておらず2冊しか思いつかなかったので3つ目は動画を選んでみた。 その1「遺伝と平等(キャスリン・ペイジ・ハーデン)」 遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる― 作者:キャスリン・ペイジ・ハーデン 新潮社 Amazon この手の本は大好きで「頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か」は愛読書と言ってもよい。とはいえ、さすがに古くなっていることもあって、情報のアップデートも必要だよな、と買ってみたら大当たり。想像を超える素晴らしい本で大変感銘を受けた。 知っている人は知っている話ではあるのだけど、現在の研究では人の知能は平均的にはほとんど遺伝と育った環境で決まってしまう(身体能力に至っては、さらに遺伝の影響が極めて大きい)。もちろん、これは「平均的には」という注釈付きで個々人の能力が必ずしも遺伝や育ちで決まるわけでは
別に好きで趣味にしているわけではないのだが、ダイエットに関する研究本は継続的に買っている気がする。私の家系にはやせ型がいない。齢を重ねると痩せにくくなるのはわかってはいるが、最近は食が細くなっているにも関わらず体重は徐々に増加中だ。 今回読んだのは「運動しても痩せないのはなぜか:代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」」という本だ。 運動しても痩せないのはなぜか:代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」 作者:ハーマン・ポンツァー 草思社 Amazon タイトルだけ見ると、ありきたりなダイエット本に見えるが、中身は想像以上に難しい。まず冒頭からタンザニアの原住民ハッザ族のフィールド調査の話で始まる。普通この手の話は他者の研究が引用されることが多いのだが、この本の場合、実体験である。著者は、フィールド調査を通じて自然の中で暮らす人々と都会で暮らす人々のカロリー消費について調べる研
「過去は変えられないが、未来は変えられる」とか書くとちょっと啓蒙書っぽいタイトルで気恥ずかしくなる。ただ、自身の考えが昔と変わってきたので書き留めておこうと思う。 今、ちょうど話題だからジャニーズ事務所の性加害問題を例に挙げる。しばしば、このような問題に対し、過去への補償・清算に重点が置かれる。もちろん、当事者には重要な話だけど、被害があったという事実が消えてなくなるわけではないし、北公次のようにすでに亡くなっている人にできる補償などあるわけがない。過去は変えたくても変わらない。できるのはせいぜい解釈くらいか。 過去のことは、生きている当事者たちが何らかの合意に基づいて落としどころを決めるしかない。そしてそれがどのような結末を迎えようが社会にとってはあまり重要ではない。 一方で、未来は変えることができる。だから、このような問題が発覚したときに我々、同時代に生きる人間にできるのは、同じような
先日「AFURI」というラーメン屋の商標の件でひと悶着があったことは知っている人が多いと思う。 さて、この吉川醸造の主張を読んでどう思っただろうか。普通は「AFURIはひどい会社だ。許せん」と思うのではなかろうか。では、次の記事を読んでみてほしい。 私は事の真相を知らない。しかし、上記の記事を読んだらまったく別の感想を覚えるのではなかろうか。 吉川醸造の記事に人々が共感を寄せてしまうのは、読み手の次のような先入観があるからだろう。 吉川醸造という名前から来る、古くからある小規模な個人経営の酒蔵に違いないという思い込み(実際には、2020年に不動産系などの多角経営やってるシマダグループに買収されている) 「阿夫利」という名前は地名であり地域の共有財産であるべきだ、という先入観(この主張は必ずしも間違いではないが、俗称であり、そこまでメジャーな名前でもなく、AFURI がブランドを広めた側面も
現代のソフトウェア開発を支える大きな技術のひとつにハッシュ関数がある。ハッシュ関数とひとえに言っても用途に応じて必要となる特性にも違いがあり一概にこうだとは言い難い。ハッシュ関数の用途としては次の3つがある。 ハッシュテーブルのキー位置導出 改ざん検知 パスワードの安全な保管・比較 ハッシュ関数でまず連想されるのは最初に挙げたハッシュテーブルだろうか。プログラミング言語によって Map と言ったり連想配列と言ったりするが、文字列などのキー値からそれに紐づく値を取得するデータ構造の代表例だ。このようなデータ構造の実現に必ずしもハッシュ関数が必要なわけではないが、O(1)相当の処理となり高速なためデフォルトの実装にはおおむねハッシュテーブルが使われる。*1 2番目の改ざん検知では、暗号学的ハッシュ関数と呼ばれるものが使われる。ハッシュ関数の結果(ハッシュ値)から元の値が推測できないなどの工夫が
以前、「日本の労働生産性はなぜ低いのか」というエントリを書いた。 先日、Twitter にて 日本の統計データの分析について積極的に発表されている小川製作所さんとやり取りさせていただいた中で、新たに気付かされたことがあった。 まず、下記のツィートのグラフを見てもらいたい。 思いがけずアイディアをいただいたので、労働生産性(時間あたり付加価値)の購買力平価換算値のグラフを作ってみました。 時間あたりだとドイツ、フランス、イタリア、イギリスの水準がかなり高くなります。 日本はアメリカ、ドイツ、フランスの半分強です。 pic.twitter.com/XHuRnNhGdF — 小川製作所 (@OgawaSeisakusho) 2023年5月2日 前述のエントリで書いたように労働生産性を考える場合には購買力平価換算ひとり当たりGDPを見るのが一般的であるが、日本においては少子高齢化が進みすぎ大きく歪
日本におけるデータベースの大家である kumagi さんが「An Experimental Comparison of Thirteen Relational Equi-Joins in Main Memory」という論文を紹介していた。 13種類のJoinアルゴリズムを比較ベンチしたよという論文。800万行以上ではパーティション分割を使うべき。HugePageやSWWBなどのテクニックは侮れない。NUMA環境対応の奴はでかいJOINで特に速い。マテリアライズ等のJOIN以外の計算コストでクエリ全体では遅くなったりする。 https://t.co/i2kSE8fF4w pic.twitter.com/igbgJTA3Vm— kumagi (@kumagi_bot) 2023年2月2日 システム開発の実務においても、プロジェクト後半になると著しくパフォーマンスの悪いクエリが見つかりパフォーマ
オライリーから出た「大規模データ管理」という新刊を読んだ。 大規模データ管理 ―エンタープライズアーキテクチャのベストプラクティス 作者:Piethein Strengholt オライリージャパン Amazon 私の担当するような基幹系システムでも、特に業務は変わっていないと思うのだけど、扱うデータ量は日々増加しており、昨今の機械学習の進展やDXなる謎キーワードの登場でデータの重要性が叫ばれる中、その傾向には拍車がかかっている。 ということで、非常に興味を持って読み始めたのだけど、個人的には違和感を持ってしまった。誤解を招くと良くないが、トピックを網羅的に扱っている真面目な本で、決して悪い本ではない。*1 違和感の理由を考えてみたのだけど、ひとつは切り口が機能に寄りすぎてニーズがはっきりとしないところにあると思う。書いてないわけではないけれど、あくまで世の中にはこういう機能があってこう使う
Preferred Networks の創業者 岡野原さんの「AI技術の最前線」をひと通り読んだ。 AI技術の最前線 これからのAIを読み解く先端技術73 作者:岡野原 大輔 日経BP Amazon 岡野原さんは、以前から簡潔データ構造などアルゴリズム系で有名な方だったが、起業した PFI もいまや日本を代表する企業に育っており、すごいとしか言いようがない。 そういう経歴であるから、この「AI技術の最前線」も帯に書かれた手加減なしの言葉通り大変マニアックな仕上がりとなっている。読んだ感覚としては経済セミナーみたいな専門誌の記事に近い。日経ロボティクスの連載記事だったみたいなのだけれど i.i.d (独立同分布)など専門用語が特に説明なしに出てくる。この雑誌の読者層ってどこら辺の人なんだろ。背伸びして知識を得たい私には大変楽しいけれども。 AI技術の「最前線」を読んだ以上、やはりその先を予想
WSL2 はリリース以来とても便利に使っているのだけど、不満がいくつかあった。ひとつは Systemd が使えないこと、もうひとつはそれが理由で docker のサービス起動が厄介なこと。 Docker Desktop for Windows を使うというのが今までのセオリーだったのだけど、起動のたびに通知やらが来てインターフェイスがうざったいのと、最近有償化された(個人利用は無償だけど)こともあって利用を避けていた。 ところが先日 WSL2 用の Ubuntu 22.04 が出ていたので更新してみたところ、標準で systemd が使えるようになったというではないか。systemd が使えるなら docker も問題なく使えるはずでこれは試してみねば、とさっそく設定してみたというのが本日の内容です。 [2022/09/01] Windows 11 だけでなく Windows 10 でも動
一介のサラリーマンにとって「経営」というのは神秘に満ちたキーワードだ。なんといっても、どうすればうまくいくのかまったくわからない。優れた経営者の多くは、しばしば神格化され、彼らのどういう資質が会社の成功をもたらしたのかは才能というベールの向こう側にある。 以前紹介した「なぜビジネス書は間違うのか」によれば、多くのビジネス書に書かれる経営者の資質というものはハロー(後光)効果によりかさ上げされ、実際にはほとんど説明することができないようだ。 ジョブズや孫正義といった伝説的なカリスマは天才的すぎてその手法を一般化するのは難しい。それだけではなく、うまく時代に乗ったという強運によるところもある。なかなか普遍性のある教訓を見出すのは難しい。 それに対し、今回紹介する「会社を立て直す仕事」は、ビジネス自体が衰退期に差し掛かり、放っておけば遠からず潰れてしまうであろう企業の再建を果たした著者が、その手
以前、「中高生の時に知りたかった英語の話」というエントリを書いたが、相変わらず英語学習を続けている。で、今回は文法の話。 文法を学ぼうと思ったとき、まず考えたのは(私はプログラマなので)BNFとかチートシートを見るのがよいんじゃないか、ということだった。しかし、これが意外に見つからない。*1 ないのなら作って見せようホトトギス。 というわけで作ってみたのがこちら(SpeakerDeckからPDFのダウンロードも可能)。 様々な文法を一覧化するよりも、文全体の構造を1枚で表現しつつ、副詞のルールにこだわってみた(というより副詞のルールがよくわからなかったので勉強がてらまとめてみた)。 今回はこのチートシートを使って英文法を解説してみようと思う。*2 まず、下記が文の構造となる。 文の構造 実のところ英語の文の構造はさほど難しくない。 主語と述語は、(命令文、感嘆文などでは省略されることがある
「Kaggle Grandmasterに学ぶ 機械学習 実践アプローチ」という書籍を読んだ。Kaggle グランドマスターがどういう風に分析をしているんだろうという点に興味を持って読んでみたのだけど、意外に普通のことが書かれていて拍子抜けしてしまった。どうも Kaggle グランドマスター という煽り文句は日本語版で付けられただけのものらしい。うーむ、実際にすごい人がどういう手順で思考しているのかを知りたかったんだけど。 Kaggle Grandmasterに学ぶ 機械学習 実践アプローチ 作者:Abhishek Thakur マイナビ出版 Amazon 本書で説明される機械学習の流れは以下のようになっている。 現実を(質的変数化するなどして)データに変換する データを正規化、合成、変換して有用な特徴量を作り出す 不要な特徴量を排除する モデルを構築し最適化する モデルを評価する この流れ
今回紹介するのは「こうして世界は誤解する」という中東特派員の書いた本だ。たまたま Twitter で目にした本だったのだけど読んでよかった。 こうして世界は誤解する――ジャーナリズムの現場で私が考えたこと 作者:ヨリス ライエンダイク 英治出版 Amazon 911以降、断片的に耳に入っている中東情勢には正直あまり興味はなかった。あまりにも知らなすぎるのでイスラム教の解説本を開いたこともあったが、ふーんという感想以上のものはなかった。ドラマ「ホームランド」はすごく面白かったが、キャリー・マティスンの狂いっぷりと騙し騙される見事な脚本が面白かっただけで、あれを見て中東諸国の現実がわかったという感覚はまったく持たなかった。 あまりにも縁遠いのだ。 タイトルだけ見ると中東の現実を知るものから見る欧米ジャーナリズム批判の書であるように思うかもしれない。そういう側面も確かにある。だが、この本で語られ
前回に引き続きアジャイルの是非を調べるために論文を読んでいる*1。 今回、紹介するのは 2009 年のウォーターフォールとスパイラル型開発を比較した「A Comparison of Software Cost, Duration, and Quality for Waterfall vs. Iterative and Incremental Development: A Systematic Review」という論文。先に断っておくと、この論文でも「ソフトウェア開発プロセスの比較に関する実証的な研究はほとんど行われていない」ことに触れられており、スクリーニングの結果残った5本の論文だけを元に論じられている。 とはいえ、それでもなかなか興味深い結果が得られている。ウォーターフォールとスパイラル型のモデルで「どちらが優れているかを裏付ける証拠はほとんどない」ものの、以下の命題については調査する
前々から気になっている話題ではあるのだが、いくつも文献を見るうちに新たな気付きがあったのでメモ代わりに書いておく。 日本のGDPは世界第三位だということはよく知られているが、それが日本の人口の多さに起因していることはあまり知られていない。4位のドイツは 8,300 万人、5位のイギリスは 6,700 万人程度しかいない。中国も豊かになったとはいえ、まだまだ貧しい地域に住む人も多く、世界第2位のGDPも14億の人口あっての順位だ。(なお、この順位は名目でも実質でも変わらない) 一般に国の豊かさは人口で割ったひとり当たりGDPを見るが、この指標を使う場合、物価変動や為替レート変動の影響を除去するため購買力平価換算するのが一般的となっている。この購買力平価換算ひとり当たりGDPで見た場合、日本の順位は大きく下がる。先進7か国の中で最下位であるだけではなく、2009年には台湾、2018年には韓国に
「岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。」という本を読んだ。 前々からMOTHER2立て直しの逸話など聞いたこともあり興味があったのだけど、岩田聡さん本人が書いた本でないことから手を出さずにいた。しかし、ちょっと後悔。これは革新的な経営者像を示したと言ってもよいのでは。 岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。 (ほぼ日ブックス) 作者:ほぼ日刊イトイ新聞 Amazon 史上最も優れた経営者としてはスティーブ・ジョブズがよく挙げられる。「日本にはなぜジョブズが生まれないのか」という発言をよく聞くが全くそんなことはなく、ファミコンを生み出した山内溥故任天堂社長は匹敵する人物と言っていいと思う。 岩田聡さんも山内溥さんほどではないにしろ、PSとサターンによる次世代ゲーム機戦争以後、陰りを見せ始めていた任天堂をニンテンドーDSとWiiで復活させ、Switch という大ヒットゲーム機の誕
最近、因果推論がはやっている。はやっているのだが、これがさっぱりよくわからない。いろいろな方が資料を公開してくれているので手がかりはたくさんあるものの、手法が中心になっているものが多く、統計学全体からみた位置づけのような理解に必要な情報が欠けている。 前回の記事で書いたように、因果性は科学哲学において難問とされており、いまだ定義できないものとされている。定義できないのに因果推論とはどういうことなのか。 過去、統計学の文献を開くと「重回帰分析で因果関係はわかる」「ベイズ推定で因果関係はわかる」といった記述をたびたび見かける。今までの「因果関係がわかる」と因果推論の「因果関係がわかる」は何が違うのだろうか。 今回は次の資料を元にどのように理解すべきか考えてみたい。例によってまったく専門家ではないので、間違った理解に基づいている可能性は極めて高いことをあらかじめ断っておく。 現代哲学のキーコンセ
世間的には因果推論の話題ばかりだが、因果以前に確率の理解すら覚束ないので「現代哲学のキーコンセプト 確率」という本を読んでみた。 現代哲学のキーコンセプト 確率 作者:ロウボトム,ダレル・P. 岩波書店 Amazon 以前、議論になったので、頻度確率と主観確率のふたつがある、ということは知っていたのだけど、科学哲学方面の理解は(予想していたものとは)かなり違っていて驚いた。 まず、確率には頻度論に代表される「世界ベース」の確率とベイズ推定でしばしば言及される主観確率に代表される「情報ベース」の確率がある。「世界ベース」というのは、サイコロを振ったら6分の1の確率で1が出る的な普遍性のある確率で、中高生が学ぶ確率といえばこちら側の概念だ。 しかしながら、その代表である頻度確率は科学哲学側ではあまり適切な解釈だとは思われていないようだ。なんと言っても、頻度は過去のデータであって、それが未来の予
私が SI という業務システム中心の受託開発業界にいることも多分に関係していると思うのだけど、ソフトウェア・テストに関する各種の方法論に対してどうしても懐疑的な考えを持ってしまう。端的に言ってしまうと「それは私(あるいはSI業界)がテストに関して抱えている問題を解決してくれる」ようには思えないからだ。 ここで言う一般的なソフトウェアテストの文脈での方法論というのは具体的には次のようなものを指している。 ブラックボックス/ホワイトボックステスト 分岐網羅、命令網羅 境界値テスト、状態遷移テスト、組み合わせテスト 複雑度に基づくテスト もちろん、これらの方法論は使っていないわけではなく、単体テストケースのケースを考えたり、網羅度を上げるために使うわけだけれど、ある意味テストをするなら誰しもが考えることをより確実に実施するためのものであって、それ以上のものではないように思える。 「私(あるいはS
前回「ベイズ統計学に関する議論を整理する」では、できるだけ中立的な視点で書くことに注力し、伊津野なりの結論については特に書かなかった。今回のエントリでは、様々な見解や調べた結果を元に私見を書く。 もちろん、伊津野は専門家ではなく、情報や理解が不足する部分については想像で補ったため「それはおかしい」と感じられる点もあるだろう。そのような記述を見つけたら、単に批判を書くのではなく、なぜ問題だと思うのか、自身のブログやTwitterなどで他の人間にも理解できるように論点を明確に書くようにしてほしい。うんこの投げ合いはうんざりだ。それに、コメント欄に批判や反論を書かれても、伊津野の理解力では適切な回答ができるとは思えない。広い範囲に意見を投げかけた方がより専門的な回答が得られ生産的だろう。*1 前置きが長くなったので本論に移ろう。 まず先に結論を述べる。現在、ベイズ統計学は「(頻度主義とは異なる)
最近、「統計学を哲学する」の出版をきっかけとした Twitter 上の議論を追いかけながらベイズ統計学について調べている。 統計学を哲学する 作者:大塚 淳発売日: 2020/10/26メディア: 単行本(ソフトカバー) 前々からベイズ統計学については興味があったので、議論を追ったら何かしらの理解を深められるのでは、と思い関連するツィートを読んでみたのだが、これがびっくりするほどわからない。 通常「わからない」と書いたら高度な数学的議論が繰り広げられているからわからない、という意味だと思われるかもしれないがそうではない。そもそも何が論点なのかもはっきりとせず、議論らしき議論も行われず、ほとんどうんこの投げ合いと呼んでもいい状況だったのだ。 なるほどこれが「頻度主義 vs ベイズ主義」の対立なのかと思いもしたのだが、もやもやが残ったこともあり、議論の内容は理解できなくても論点整理くらいはでき
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