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猫
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皆さん、ご無沙汰いたしております。いま、私はアメリカ・マサチューセッツ州ボストンにあるハーバード大学ヴィース研究所(Wyss Institute)のPeng Yin研究室でポスドクとして研究しています。 現在の研究テーマはざっくり言うと、DNAをツールとして使って、新しい顕微鏡テクノロジーを開発し、それを使って細胞核の中にある染色体の姿を細かく見てみよう、というものです。真面目に書けば、「DNAナノテクノロジーを用いた新規3D多色1分子局在顕微鏡法による細胞間期染色体構造の解明」です。 ヒトゲノム解読、バイオインフォマティクス、iPS細胞、次世代DNAシーケンサー、ゲノム編集。21世紀の生物学は、テクノロジーの進歩によって飛躍的に発展してきました。そしていま、これらに続くブレイクスルーの波が、生物学に押し寄せています。それが顕微鏡テクノロジーです。 ボストンに引っ越して、今日でちょうど2年
半年ほど前に話題となったNASAの研究チームによる「リンの代わりにヒ素をDNA中に取り込む微生物が見つかった」という報告ですが,発表の直後から科学的な批判にさらされてきました. そしてついに先週の金曜日,元の論文が掲載された科学誌Scienceに,他の研究者から寄せられた8つの批判と,それらに対するNASAチームの再反論が掲載されました. 今回も詳しい解説記事を書く時間がないので,批判のポイントを一枚の画像(表)にまとめてみました.半年ぶりに「ヒ素DNA細菌」のお話です*1. Comment on "A Bacterium That Can Grow by Using Arsenic Instead of Phosphorus" 「リンの代わりにヒ素を使って生育することができる細菌」へのコメント Steven A. Benner David W. Borhani James B. Cotn
Enterobacteria phage T4.壁紙画像(1920x1080)はこちら Michael D, Jones氏作成のSVGデータを改変して作成しました.この画像のライセンスはCC BY-SA 3.0に準拠します. アポロの月着陸船や宇宙探査機にも見えるこの物体.実は細菌に感染するウイルス,通称ファージの立体図です*1.正十二面体の形状を持つヘッド(頭部)と円盤が積み重なったテイル(尾部)の2つの部分からなり,さらにそれぞれは,細かいパーツが組み合わさってできています.これらの形は,電子顕微鏡などを用いた長年の研究により明らかにされました.ヘッドの中身(DNA)以外は,すべてタンパク質製です.ファージなどのウイルスを生き物と捉えるかどうかは意見の分かれるところですが,生き物のデザインの一部であることは確かです*2. このファージ,テイルファイバーと呼ばれる部分を使って大腸菌などの
Potassium channel KcsA from Streptomyces lividans in high concentration of K+ 緑色の球はカリウムイオン,赤色の球は水を表している. 壁紙サイズ(1920x1080)の画像はこちら ナノの世界で生き物を見ている私にとって,「生き物らしさ」と言われて思い浮かべるものは,自然が創り出したデザインの美しさです.今日はそんなデザインの中から,教科書にも載っている有名なものを1つ取り上げてみようと思います. どんな生き物でも,細胞の中や外は色々なイオンが溶けた水溶液に満たされています.例えば,カリウムイオンは,細胞の内側の方が,外側より30倍濃い濃度で保たれています.ナトリウムイオンはその逆です.30億年以上前に,生命が生まれた時の原始の海(生命のスープ)を表しているのではないか,とも言われています. 細胞は脂質でできた膜に
2011-03-19追記 林松涛([twitter:@tao1tao])さんが,本記事を中国語に翻訳してくれました. 被ばくの不安を抱えている在日中国人の方や,日本に家族・親族・知人がいて心配されている中国の方に,中文版の記事を広めていただければと思っています. 「受到核辐射,对人体有怎样的影响?」 - ときどき中国 通俗易懂的说明。[twitter:@tao1tao]将其中文。核电站日益稳定,可能是马后炮了。 地震で被害を受けた原子力発電所では,今なお安全を確保するための作業が続けられています.その一方で,多くの方が「被ばく」への不安を抱えているのではないでしょうか. 原子炉で何が起きているのか,被ばくしても大丈夫なのか/危ないのか,被ばくしたらどうすればいいのか.こういったことについて,ネット上にも様々な解説が掲載されています.その一方で, そもそも「被ばく」すると人体に何が起きるのか
「NASAが宇宙人を発見か?」と話題になった「宇宙生物学上の画期的な発見」とは,「リンの代わりにヒ素をDNA中に取り込む微生物が見つかった」というものでした. 詳しい解説記事を書く時間はないので,発見のポイントを一枚の画像にまとめてみました.世界的大ニュース(?)に合わせて,久しぶりの更新です. A Bacterium That Can Grow by Using Arsenic Instead of Phosphorus 「リンの代わりにヒ素を使って生育することができる細菌」 Science. Dec. 2, 2010. 発見のインパクト これがなぜ大発見なのか,というと… まずは背景知識. DNAは地球上に存在するほぼ全ての生物が基本的に持っている 遺伝情報を利用し,子孫に伝えるためにDNAが利用されている 生物の大部分は,水素(H),炭素(C),窒素(N),酸素(O),リン(P),硫
先日掲載した『人工細菌誕生』の論文を解説してみるに対して,「公開後1年以内の論文について,解説・講義などを公開することはモラルハザード*1だ」という指摘のメールが届いた. 自分としては寝耳に水の内容だったのだが,確かに公開されているとはいえ,商業論文誌に掲載された論文の内容を解説することが当然許されているものかどうか,深く考えていたわけではない.しかし,送られてきたメールは,内容に納得できない点が多々ある.そして,指摘は,このブログの存在意義の根幹に関わることでもある. はたして,最新論文の解説はモラルハザードなのだろうか? 送られてきたメール どうやら個人あてのメールを全文公開したり,引用することは違法となる可能性が高いそうなので*2,ここでは全文を掲載することはせず,送信者が特定できない形で,送られた内容についてのみを要約する. 差出人は,学術論文のモラルハザードを管理する民間団体に所
前回は,Mmゲノムの人工合成法について解説した. 今回は実験内容と結果の続きとして,Mmゲノムの移植による人工細菌の創出と,「半合成ゲノム」を持つ細菌の創出の2つについて解説する. 研究の流れ2:Mmゲノムの移植 図3. 人工合成Mmゲノムの移植と人工細菌の創出. 移植方法については,2009年に出版された以下の論文に掲載されており,今回の論文では詳しい説明が省略されている*1.ここでは概略だけを説明する. Creating Bacterial Strains from Genomes That Have Been Cloned and Engineered in Yeast. Lartigue. C. et al. Science. Sep. 25, 2009 人工合成Mmゲノムの移植 研究の流れ1.で,人工合成したMmゲノムを酵母の中で組み立てることができた.人工細菌を創るための次のス
これから2回のエントリで,実際に行われた実験内容と結果について解説する.専門的な内容が続き,つまらないかもしれないが,実験内容の理解なくして,意義の理解はありえないので,ご容赦願いたい. 研究に使った細菌 この研究には,2種類の細菌が登場する. Mycoplasma mycoides(以下Mmと略す) マイコプラズマ・マイコイデス.マイコプラズマ属の細菌の1種.MmゲノムDNAを人工合成して移植した.wikipedia:マイコプラズマ Mycoplasma capricolum(以下Mcと略す) マイコプラズマ・カプリコラム.マイコプラズマ属の細菌の1種.Mmの近縁種.MmゲノムDNAの移植先. マイコプラズマ属は,数ある細菌の中でもゲノムサイズがとても小さい,つまりDNA全体の長さが短いことで知られている.ゲノムを人工合成・組立てする際に,合成するDNAがなるべく短い方が実験難易度が下が
自分の将来についての好奇心と不安が入り混じった問いは、どんな世界に身を置いていても頭をもたげることがあるのではないかと思うのですが、ご多分にもれず自分も今から数年前、こんなことを考えていました。 まだ10年ちょっとですが、自分のこれまでの研究人生を振り返って見るに、大学院時代はRNAタンパク質複合体の構造生物学、学位取得後の1st ポスドクでは分野を大きく変えて、RNAサイレンシング複合体の1分子イメージングをやってきました。そしていま(2nd ポスドク)は、DNAナノテクノロジーを用いた超解像顕微鏡観察技術の開発をしています。当然のことながら、深い考えと明確なビジョンをもって研究テーマを選んできたというわけではなく、その時その時のやりたいことを選んできました。ただ、どんな生物学上の問題を解くかということよりも、どうやってその問題を解くか、という方法論により強い興味をもってきた気がしていま
5月20日,アメリカの科学論文誌Scienceに「人工細菌誕生」という論文がオンライン掲載された. Creation of a Bacterial Cell Controlled by a Chemically Synthesized Genome Gibson. D. G. et. al. Science. May. 20, 2010 (online) この研究成果のインパクトは相当なもので,日本でもTVや新聞で取り上げられた(読売新聞の記事).しかし,日本語媒体の解説記事では「人工生命の誕生に近づく成果」「テロに悪用される危険や、自然界にない生命体が実験室から逃げ出す可能性」(読売新聞の記事より)など,研究が及ぼす影響についての話題だけが先行してしまっていて,そもそもどんな研究成果なのか,つまりどういう経緯で研究が行われ,何が進歩したのかを詳しく解説しているものは見当たらなかった. そ
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