犯罪件数増加に悩んでいた英ブレア政権 トニー・ブレア首相は、ブリストル大学の学生たちの前で話していたとき、実際には自分が全国民に語りかけていることを自覚していた。「この国の未来」と題された一連の特別講演の一つとして企画された、犯罪と反社会的行動についての講演内容は、なんらかの方法で一般の有権者のもとにも届けられることになっていた。 そんなわけで、この講演が意図していたのは、「政権を握って9年目に入った労働党は、『犯罪に対して厳しい態度で臨む』という公約を忘れていない」と伝え、有権者たちを安心させることだった。 「犯罪への不安が、なぜ、昔よりずっと大きくなっているのでしょうか? その答えは簡単です」と、ブレアの声が響いた。「1997年(注:ブレアが首相に就任した年。この講演は2006年に行われた)の警察犯罪認知件数は、1900年の57倍だったからです。これは、人口増加の影響を考慮しても、29