チグリス河岸に古くからある町、ハサンケイフ。ウルス・ダムが完成すれば川の水位が約60メートル上がり、このモダンなカフェや背後の900年前の橋の遺構、岩山にある新石器時代の洞穴も水没する。PHOTOGRAPH BY MATHIAS DEPARDON,INSTITUTE トルコ南東部を流れるチグリス川のほとりにハサンケイフという町がある。1万2000年前に開かれ、高台には新石器時代の人々が掘った洞穴と、ビザンチン帝国時代の要塞の遺構が見られる。古代ローマ時代の痕跡がある集落には、シルクロードに沿って架けられた橋など、中世のイスラム建築も残されている。 ところが2006年、トルコ政府はチグリス川をせき止める巨大ダムの建設に着工した。ハサンケイフの町の8割を水没させ、3000人の住民が立ち退きを余儀なくされるとみられる。その「ウルス・ダム」は現在、ほぼ完成しており、2019年には町の水没が始まるか