AIや最新テクノロジーは人の仕事を奪うかもしれない――しかし、それを新たな社会をつくるチャンスと捉えようとする思想が、アメリカのミレニアル世代から生まれてきた。彼らがめざす「素晴らしい新世界」は実現可能なのか? ※本稿は、岡本裕一朗著『アメリカ現代思想の教室』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。 スルニチェクとウィリアムズの加速主義 10年ほど前までは、資本主義に代わるようなオルタナティブは、ほとんど想定されなかった。2008年にアメリカで金融大崩壊が発生し、社会システムを変えるには最も適したその時期に、左翼の大物であるジジェクは「実行可能である代案が示せない」と告白していた。この2008年に示せなかったら、もう永久に示せないのではないか、と思われたのである。 ところが、最近になって「資本主義以後」が少しずつ描かれるようになった。ポール・メイソン(1960―)が2015年に『ポスト