ハイゼンベルク(1)の不確定性原理Uncertainty principleは奇妙なものである。この原理を生活レベルに翻訳すればこうなる。われわれがグラスなどの対象をみるとき、目から発せられる光がすでに対象を変化させている。厳密にみようとすればするほど、目から発せられる光は強くなり、変化はより大きくなる。したがって、ひとは、根本的に対象を正確に測定することはできない。…… この原理の奇妙さはうえの説明にはない。おそらく大抵は認識論的な話で早合点されてしまう。物事を一種の《虚構》に変えてしまう、こうした観測上の人間的かつ不可避的条件が、《現実に》対象を変化させてしまうとしよう。この論理を突き詰めていくと、どうなるか。たとえば、零点振動と呼ばれるものがある。物質のもっている「温度」は、熱振動によって規定されている。したがって、この振動がなくなるところが、温度の下限となる(-273.15℃とされ