激しいリズムにひるむ。叩きつける音圧に押される。急上昇するオクターブに持っていかれる。部屋は静かなのに、小説を読んでいるだけなのに、そこに描かれるセッションを、夢中になって聴いている。 彼女の想いは衝突を繰り返すサウンドの手応えではっきりと伝わってくる。そう、衝突だ。合わせるなんて馬鹿馬鹿しい。他のパートに合わせて叩くなんてドラムスじゃない。お互いに叩きつけ、傷つけ、貪り、奪い合いながらひとつになっていくのが音楽のほんとうの姿だ。 高校生の「僕」が弾いてるのはベース、荒々しいドラムスが後輩の女子、隣の部屋からは、同級生の子がピアノで圧倒する。3人が演(や)っているのは、レディオヘッドの『クリープ』だ。無防備な状態で歌の中にぶっ込まれ、沸き上がってくる激情のままに声を絞る。 そんな昔の知らないよ、というツッコミ上等。大丈夫、これ読んでると、かつて自分が聴いた曲を思い出すから。音楽に撃たれた経