「世界のヒラヤマ」と呼ばれる男 現在、55歳を迎えた平山ユージは、世界を代表するフリークライマーとして、多くの功績を残してきた人だ。15歳でクライミングに出会った彼は、10代のうちから国内で頭角を現し、フランスに渡った後はヨーロッパでトップクライマーとして活躍した。 1998年にはワールドカップで日本人初の総合優勝、ランキング1位となった翌々年にも二度目の総合優勝を飾る。その後もアメリカ・ヨセミテ渓谷の「エルニーニョ」、スペインの「ホワイトゾンビ」といった岩壁での登攀とうはんなどを成功させ、そのクライミングの姿の美しさから、「世界のヒラヤマ」と呼ばれることでも知られる。 そんな平山には、「あの一瞬」が自らをすっかり変えてしまった、と確かに言える体験がある。それはワールドカップでの優勝や数々の「成功」ではなく、結果的に失敗に終わった壮大な挑戦でのことだった。 ほぼ垂直の1000メートルの岩壁