2010年10月10日14:06 カテゴリ本法/政治 ロールズの『正義論』 待望ひさしかったロールズの古典的名著の新訳が、ようやく来月出る。前の訳本(私も持っている)は最悪だったが、今回の訳者は信頼できる。サンデルのベストセラーで注目度も上がったので、これを機に日本でも本書が読まれ、「派遣村」のような幼稚な議論を卒業して正義や公平をめぐる学問的な論争が行なわれることを期待したい。 菅首相のいう「最小不幸社会」というのは――本人も知らないようだが――ロールズの格差原理に似ている。それはもっとも不幸な人の利益を最大化するかぎり不平等は容認されるというもので、不幸の最小化とも解釈できる。しかしこの主張は、サンデルをはじめ多くの人々の批判を浴びて、ロールズ自身ものちに大幅に修正した。 まず明らかなのは、この「不幸」は米国内に限定されているのではないかという批判である。これはロールズも認め、のちの『