「父島ノ皆サン、サヨウナラ」 というのは硫黄島の一通信手が最後に送った電文だが、それではその「父島ノ皆サン」は何をしていたかというと、これが米軍捕虜を殺害してその肉を喰ってたんだな。所謂父島人肉食事件。勿論喰ったのは極々限られた一部であったが、其の中に旅団長や根拠地隊司令官が含まれていたから、事件は極めて特異性を持つこととなった。 父島には第109師団隷下の第1混成旅団がいた。旅団長立花芳夫は愛媛出身の陸士25期。陸大は出ていない。広島聯隊区司令官から現職に就いた。一方父島で輸送業務にあたっていた堀江参謀には、栗林中将より、作戦指導に関する権限が与えられていた。硫黄島が玉砕すると、混成第1旅団は第109師団に改編され、立花少将は中将に進級と同時に師団長に補された。このとき堀江参謀は大本営に「事情あり、適任の師団長を派遣せられたし」と電報を打った。更に返電が無いと見ると、「参謀長でもよいから