enzee「このような「翼を拡げて 大空に 鳥のように 飛び立とう」的な歌とは大昔からあるような気がするけど、実際は20年ぐらいの歴史しかないものなのだ。それどころかたった30年前には「翼など愚かな憧れだ」と諌められていたのだ。ついでに、さらに2年前の1978年の泉谷しげるのアルバム「80のバラッド」に「翼なき野郎ども」が収録されているが、歌詞に直接「翼がどうこう」といった言及はない。だが、歌詞を読めば「火力の雨降る街角」といった発電所が軒を連ねる労働者の街の話だとわかる。「ヤクザがいらつく 午後の地獄 ふざけた街にこそ家族がいる」社会の底辺で逃れようにも逃れられないしがらみがある。はじめから翼など持てなかった男たちの挽歌なのだ。つまり、この時代はまだ「翼を拡げて飛び立つことは困難だ」とされていたのだ。それが90年以降、翼を拡げることは大前提的に「いいこと」となった。この時代の転換点に「旅