東大生・京大生にいま最も読まれている本”として話題の『勉強の哲学』。4月の発売から現在まで順調に版を重ね、人文書としては異例の大ヒットとなっている。 勉強についての指南書が次々出版される中、なぜこの本だけがこれほど支持されるのか。日本トップクラスの頭脳集団の心を掴んだポイントとは? その理由を、著者の千葉雅也自身が分析。さらに、これまでの勉強との関わり方や自身の体験から導き出した“勉強できる子どもの育て方”まで、存分に語ってもらった。 頑張れば頑張るほど、ズレていく 『勉強の哲学』はなぜ東大生・京大生にウケたのか。それは、僕自身の経験に基づく内容に、彼らが強く共感する部分があったからだと思います。 例えばこの本の中にある“小学生の頃、うっかり難しい言葉を使って友達にからかわれたり、キモがられた”という記述はそのまま僕の実体験ですが、まわりの研究者仲間に聞いてみると、こういったことは学生時代
中学一年生の娘が二歳のころに離婚して、シングルファーザーになりました。当時は娘を都内の保育園に預け、講義がある日は群馬の高崎経済大まで通勤。買い物、料理、洗濯など、家事が忙しくても、寝かしつける時には必ず絵本を読み聞かせました。千葉に住む両親もよく電車で手伝いに来て、支えてくれました。 子育てを助けてもらった保育園の先生方には、感謝しかありません。入園時はまだオムツがとれていませんでしたが、ある日迎えに行ったら一人でトイレに座っていた。感激しました。保育園の父母会の役員も四年間経験し、素晴らしい保育制度を守っていかなければと強く思いました。園の駐車場が狭かったので役所と交渉し続けた結果、市が敷地を整備してくれたことも。やりがいがありました。 シングルになって数年後、写真家の妻と再婚しました。娘が五歳のころかな。僕と妻がけんかになって、「謝る」「謝らない」で言い合いをしていたときのこと。娘が
この秋、思いもよらない入院生活を体験することになった。幸いにも今後長期にわたる治療が必要になるような病気ではなかったが、それでも2週間ほどの入院が必要だと言われた。 それからが大変だった。ぼくの体調ではない。我が家の生活の話である。子どもはまだ小さいうえに妻も仕事がある。お互いの親は介護状態だったり遠方に住んでいたりで気軽に助けを求められるような状態にはない。もともと家事は完全に分担していたから、妻はいきなり作業量が倍になることになる。そこに病院との往復も加わるとなると、一挙に生活が回らなくなってしまうのだ。我が家の日常がいかに危ういバランスのうえに成り立っていたかを思い知らされた。 それでも我が家の場合はまだゴールが見えていたから、なんとか踏ん張れた。これが先の見えない闘病生活だったらどうなっていたことか。病床で写真家・植本一子の『降伏の記録』を読みながらそう思った。 植本の夫はラッパー
主婦44歳 主婦の昼食は残り物の煮物、キムチ、紅茶、ご飯。「食事を中断するときには、お箸は刺しておく」家庭。夫の食事写真も主婦の食事写真も、お箸はご飯に刺し立てて撮影している。ラーメンやうどんなどの麺類でも、同様。 幼いころ怒られて教えられた記憶がよみがえる。「お葬式の時にすることだから絶対やっちゃダメ」というのはもはや常識ではなくなってしまったのだろうか? 本書は「食ドライブ調査」に基づいて考察された、現代の日本の食卓にのぼる和食の実態である。たくさんの写真とインタビューから描き出される姿に、あなたは驚くだろうか、それとも何とも思わないだろうか。 データの基本となる「食ドライブ調査」とは何か。 調査対象は1960年以降に生まれた、首都圏に在住する、子どもを持つ家庭の主婦である。食卓を定点観測するが「食事や「食品」の調査ではなく、現代の家庭のあり方や、家族の関係を明らかにするのが目的だ。
2014年に京都大学総長に就任した山極壽一氏(65)は、コンゴの森などでゴリラの中に分け入って研究を続けてきた霊長類学者だ。一方、千葉雅也氏(38)は仏哲学者ドゥルーズの研究を専門とする哲学者。今年4月に上梓した『勉強の哲学』は、東大、京大を中心に哲学書としては異例の5刷、4万5000部と版を重ねている。その千葉氏と勉強法に関する著作もある山極氏が、勉強の本質について語りあった。 ◆◆◆ 山極 千葉先生の『勉強の哲学』が、我が京大や東大の生協で月間売り上げナンバーワンらしいですね。 千葉 いえいえ……。ただ「勉強」という、普遍的ではあるけれど、地味なテーマの本がここまで支持されたのは意外でした。 山極 いまや京大生も東大生もどんどん勉強をしなくなっています。今日は話題の哲学者と、勉強という行為を見つめ直すようなお話ができるのを楽しみにしてきました。 千葉 まず僕が『勉強の哲学』を書こうと考
自分ではきちんと話せているつもりでも、なかなか言いたいことが相手に伝わらない…そんな経験はありませんか? そんなもどかしい「伝わらない」が「伝わる」に変わる教科書、その名も『大人のための国語ゼミ』が話題をよんでいます。著者の野矢茂樹氏は哲学者として長年論理トレーニングを重ねてきた人物。思考の旅を経て野矢先生がたどり着いた「国語力」を磨くとは一体どんな方法なのか、インタビューしました。 「国語力」が落ちている ―日々の暮らしの中で誰もが使う「普段使いの日本語」をもういちど学びなおすための一冊です。これまで哲学や論理学について多くの本を書かれてきましたが、いま「普段着の言葉」に立ち返ったのはなぜでしょうか。 それはもう、「日本を変えるため」です(笑)。私はこれまで、自分が楽しいから本を書いてきました。哲学についても、論理学についても、高尚な理想を掲げて書いたことはありません。 しかし、この本は
私はいま38歳。ちょうど私が産まれたときの、父親の年齢になった。私が物心ついたときには、すでに父は膠原病にかかっていた。膠原病はタチの悪い病気で、いわゆる難病である。父の場合は、手足の血流が悪くなり、すべての指が大きくソーセージのように丸くふくれ、関節はこわばり、すべての爪と指のあいだには潰瘍ができていた。 指先を常に深く怪我している状態だから、何をするにも痛みが走る。そのため、指先を保護する布製の指サックが欠かせず、いつも家には何本もの指サックが干されていた。夕方になると、父が「六一〇ハップ」を洗面器に貯めた湯に溶かして、指を浸けた。「六一〇ハップ」とは、硫黄分を多く含んだ入浴剤の一種である。危ないから絶対に触っちゃいけないと言われていたその入浴剤の容器の周りにこびりついた白い粉、湯に溶かしたときに部屋全体に広がる硫黄の独特の臭いは、数少ない幼少期の記憶のひとつである。 2016年夏、本
いかなるビジネスであれ、ビジネスは人間と社会を相手に行うものである。そうであれば、僕は、人間と人間が創り出した社会の本質を理解することがビジネスにとっては何よりも大切だ、と思っている。その意味で、小坂井敏晶著『社会心理学講義』(筑摩書房)は、ここ数年の間に出版された本の中では、最高のビジネス書と呼んで差支えがあるまい。 『答えのない世界を生きる』は、その著者の最新作である。著者の作品は、何を読んでも深く考えさせられるが、本書も例外ではなかった。知的刺激に満ち満ちた素晴らしい1冊である。 本書は、二部構成をとっているが、第一部は「考えるための道しるべ」と題して、「知識とは何か」「自分の頭で考えるために」「文科系学問は役に立つのか」という3章から成る。戦後の日本はアメリカに追いつき追い越すことが目標だったが、課題先進国となった現在ではどこにも目標とすべき国はない。これからの日本は、自分の頭で考
<ミシガン州立大学などの実験で、自分に対して「三人称」で語りかけるだけで感情のコントロールがずっと楽になることが分かった> 三人称で自分と距離を作る 怒りやイライラなど、ネガティブな感情はできればすぐに手放したいものだが、なかなか難しい。しかしこのほど発表された実験で、自分に対して「三人称」で語りかけるだけで感情のコントロールがずっと楽になることが分かった。実験はミシガン州立大学とミシガン大学の心理学者が行なったもので、科学系の米ニュースサイト「サイエンス・デイリー」が伝えた。 方法はとても簡単で、通常、人は頭の中で一人称を使って話しているが、これをただ三人称に変えるだけだ。 サイエンス・デイリーが紹介した方法はこうだ。 例えば、ジョンという男性がいたとする。最近恋人に振られてしまい、気持ちが動揺している。ここでジョンが自分の感情に向き合い、「俺は何で動揺しているんだ?」と一人称で自問する
理想主義がまぶしい。濁ったおっさんには青すぎて懐かしすぎる。 これ、中学生でかぶれたら、一生治らないヒューマニストになっていただろう。池田晶子の著作から箴言を選り抜いているが、どの言葉も強く厳しく、主語がでかい。 時代が悪いというのなら、あなたが悪いのだ。何もかもすぐにそうして時代のせいにしようとするあなたのそういう考え方が、時代の諸悪のモトなのだ。なぜ自分の孤独を見つめようとしないのか、なぜよそ見ばかりをしているのか。不安に甘えたくて不安に甘えているくせに、なお誰に不安を訴えようとしているのか。(太字化はわたし) 自分の体験から語ろう、体験としての思想をもとうなどというのこそ、戦後民主主義の寝言なのである。体験からしか言えない人は、体験が逆ならば、逆の意見を言うだろう。だから個人の意見などいくら集めてもしょうがなのだ。 第一印象は茨木のり子。それも「倚りかからず」を目指しているように見え
国民総生産(GNP)が西ドイツを抜き、第2位になるのが1968年、その前年に本書は出版された。高度経済成長期の真っ只中であり、急速な成長の裏返しとして公害や環境破壊が世間の注目を集め、公害対策基本法が制定された。そこから版を80回以上重ね、現在までに80万部以上を売り上げている。 発想法とは、アイディアを創り出す方法である。問題提起から記録、分類、統合にいたるプロセスをすべてカバーしている。そのため、インタビューでメモする細かい実技から、本書の核であるダイナミックにデータを統合する具体的な方法、さらに、方法論が生まれた背景にある日本人の思考の癖、禅と発想法の関わり、西洋の「有の哲学」に対する東洋の「無の哲学」まで、話題の幅は広い。 幅広い内容に読者が混乱しないように、章ごとの冒頭に読者をガイドする図解がある。その図解自体が本書で発想法の一部として紹介されているものである。本書を読み通した後
『勉強の哲学 来たるべきバカのために』の発売から3か月あまり。現在5刷4万5000部と版を重ね、「東大・京大で一番読まれている本」にもなった。5月25日には、東大の駒場キャンパスにて、著者の千葉雅也さんによる「勉強の哲学」講演会が開催。かつての学びの地である駒場にて、『勉強の哲学』のポイントを紹介しつつ、教養教育の意義が語られた。その一部を掲載する。 ※気鋭の哲学者・千葉雅也の東大講義録 #2「勉強は変身である」より続く ◆ 勉強のテクニック(1) 自分なりのメタゲームをつくる 勉強にあたって二つほど、ぜひ押さえてほしいテクニック的な話をしましょう。まずは、「自分なりのメタゲームをつくる」ということについて。 教養的に物事に関わるとは、社会学も勉強する、物理学も哲学も勉強する、とジャンル横断的につまみ食いをすること、いわば複数のゲームを同時にプレーすることです。皆さんにはぜひ、こういった教
『中動態の世界』で考える 2020.04.02 更新 ツイート 第1回(全4回) 【考える時間】人生は「それはお前の意志が弱いからだ」では解決できない問題で満ちている【再掲】 國分功一郎/千葉雅也 外出自粛で増える自宅での時間。それは自分を見つめなおすのにもってこいです。思考に潜ることのおもしろさを教えてくれる記事をご紹介します。 * * * 『中動態の世界――意志と責任の考古学』(医学書院)と『勉強の哲学――来たるべきバカのために』(文藝春秋)。今年の2大話題作の著者、國分功一郎さんと千葉雅也さんの対談を4回にわたってお届けします。 対談が行われたのは、2017年3月31日、福岡・天神の書店Rethink Books(5月31日で閉店)。『中動態の世界』の第一弾刊行記念イベントでした。 トークは最初から縦横無尽に楽しく鋭く盛り上がり、まさに「無二の戦友」のお
ショートなどで電池に大きな電流が流れたために、電池のエネルギーで発熱したものと思われます。 〔バックや机の引き出しなどに入れていた場合〕 乾電池と一緒に、金属製のものを保管していた場合に、何らかの影響で電池のプラス電極とマイナス電極がショートして大きな電流が流れた可能性があります。 特にバックなどに乾電池を入れて持ち運ぶ際には、乾電池をビニール袋などに入れて金属製の物が直接触れないようにしてください。 〔機器にアルカリ乾電池を装着した直後の場合〕 電池を装着する際、プラス端子側を入れてからマイナス端子側を装着したために、機器のマイナス端子が変形してマイナス電極と電池外装(プラス電極)がショートして大きな電流が流れた可能性があります。 やけどに気をつけながら速やかに乾電池を機器から取り外してください。(熱が冷めるまで安全な場所で放置し、該当の電池は再使用はしないで廃棄してください。) 〔電池
(文藝春秋・1512円) 日常から哲学へ続くなだらかな道 勉強のやり方・ハウツー本の体裁をとった、哲学書。とにかく文章がわかりやすい。《勉強とは、わざと「ノリが悪い」人になることである》(二〇頁(ページ))なんて書いてあるので、その先が読みたくなる。高校生なら十分読みこなせるだろう。 とは言え、議論のなかみは本格的だ。著者は、フランス現代哲学が専門。ドゥルーズ&ガタリやラカンにこう書いてあります、ではなくて、それをフーコーや分析哲学にも絡めつつ、独創的な議論を展開する。その舞台が、「勉強」である。 勉強とはなにか。教室で一斉に同じことを習い、試験があるのは、勉強ではない。自分の興味で本を読んだり調べたり、勝手にあれこれ考えたりしていくのが、著者のいう勉強である。
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