小熊英二『1968』 分厚い。分厚いね、と思っていたら「上」である。「下」もあるのかよ。上巻で1000ページ、下巻で1000ページ。電話帳である。いや、昨今の電話帳はこんな厚くないし。しかも上下巻で1万3600円。誰が買うんだよ、こんなの。俺か。 著者の小熊は読み手に思いっきり無愛想なこの冊子を通読しなくてもすむように最初に目的にあわせた読み方指南までご丁寧につけている。ぼくもそれにそって読もうかな、などとヌルいことを考えていたのだが、面白くてつい最後まで読まされてしまった。 1968年前後の全共闘運動を中心とした〈若者たちの叛乱〉は何を意味するのかを、当時の資料をたどりながら、研究したものが本書だ。何がぼくに「面白さ」を感じさせるのかといえば、党派の公式見解や「正史」ではなく、当事者の後日の回想録、週刊誌や新聞での学生・青年のつぶやき、世論調査などを中心につづっているという、この叙述の方