愛、家、科学、神、国、こころ、自由など、日本語の基本的な概念を担っている語は、その言葉ができるまで、また現在の意味になるまでに、長い歴史を背負っている。こうした言葉の歴史、その意味の変遷を知ることは、日本人の物事のとらえ方や考え方をたどることでもある。国語辞典のような限られた分量では十分に語りつくせない、一語一語の背景にあるドラマティックともいえる「ことば」の物語を、一語一冊のスタイルで取り上げていくシリーズ。言葉の歴史、概念の背景にあるものを発見する、書下し「ことばの伝記」。 ●刊行のことば 一語に歴史がある。「自然」も、「くに」も、「技術」も、時代とともにその意味を変化させ、また時代の層をくぐることで、意味内容を豊かにしてきた。否定的な意味合いが肯定的なものに変化することもある。たとえば、「わび・さび」。逆に、かつては聖戦として肯定的な意味合いを帯びた「戦争」は、今日では否定的な響きを