「20年前」「観客のほとんどいない平日の昼間」の劇場で…のちSF大賞作家・長谷敏司が“新海誠作品”を鑑賞していたワケ 私がミニシアターで観た思い出の映画
女性向けwebコミックにおいて大人気になっている「令嬢系」というジャンルをご存知だろうか。 「令嬢系」とは、「没落貴族の令嬢が、位の高い王様や貴族の男性と政略結婚し、一緒に暮らすうちに徐々に心を通わせていく」という設定・展開を基本フォーマットとするカテゴリーのことだ。 近年はその基本フォーマットから様々な派生作品が誕生し、「スタンダード令嬢」「悪役令嬢」「異能系令嬢」などが生まれているが、「位の高い男性に溺愛される」というのが多くの作品で共通するポイントだ。 「きみを愛する気はない」と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます 大手電子書籍ストア「ブックライブ」の2023年のランキングでも、「少女・女性マンガ」部門の上位10作品のうち5本を「令嬢系」が占めている。 1位の『「きみを愛する気はない」と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます』(漫画:水埜なつ、原作:三沢ケイ)や、3位『虐げられ令嬢
伸びる児童書、落ちるラノベ 書籍不読率減少と平均読書冊数増加の恩恵を受け、児童書市場は少子化にもかかわらず堅調に推移し、子どもひとりあたりの書籍代も増加傾向にある。 1998年には児童書販売額700億円、14歳以下人口は1937万人、児童書の14歳以下人口ひとりあたり販売額(年間)が3614円だったのが、2021年には児童書販売額967億円、14歳以下人口は1493万人、ひとりあたり販売額が6477円(図10参照。児童書販売額は出版科学研究所『出版指標年報2022年版』、14歳以下人口は総務省統計局人口推計を元にした) 対照的なのが文庫のライトノベル(ラノベ)市場だ。ライトノベルとは何かの定義はさまざまだが、簡単に言えばKADOKAWAの電撃文庫や角川スニーカー文庫といった特定のレーベルから刊行されるエンターテインメント小説だ。カバーや口絵、挿絵にキャラクターのイラストを用いており、マンガ
なろう系・ラノベの動き 「出版月報」2021年9月号によれば、文芸単行本全体に占めるウェブ発のラノベ単行本の割合は冊数ベースで43.7%、金額ベースで37.2%に及ぶ。つまりウェブ発のライトノベルジャンル以外の小説(ホラー、ライト文芸など)を含め、また、刊行形態も単行本に限らず文庫や新書(児童文庫)まで含めれば、おそらく日本の文芸市場のおよそ「半分」はウェブ発の書籍が占めている(*1)。そしてこの数字には当然ウェブ小説投稿サイトの売上は含まれていないが、エブリスタと「小説家になろう」運営のヒナプロジェクトの2021年度の売上を足すだけで20億円程度ある。作品数や閲覧数に目を向ければウェブ小説の方が紙の小説よりも多い。 *1 「出版月報」2021年9月号、5頁 また、日販 営業推進室 出版流通学院『出版販売額の実態2021』掲載のグラフによれば、2010年の売上を100としたときの文芸市場の
なろう系専門の「ライトノベル」文庫レーベル・ヒーロー文庫の衝撃 2012年最大の出来事はなろう系専門「レーベル」が誕生し、判型が「文庫」だったこと、それが「ライトノベル」として認識されたことだ。 9月末に主婦の友社ヒーロー文庫が創刊され、第1弾として渡辺恒彦『理想のヒモ生活』、赤雪トナ『竜殺しの過ごす日々』を刊行。ヒーロー文庫は創刊から数年にわたって重版率100%を達成(*1)、新刊の初版部数が漸減傾向にあった既存のラノベレーベルの編集者と読者に少なからずなろう系を意識させることになった。創刊から約1年後には全国紙にも登場している。 *1 拙稿「重版率100%の「ヒーロー文庫」」、「新文化オンライン」、新文化通信社(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/netnovel/netnovel05.htm) ヒーロー文庫(主婦の友社)の編集者、高原秀樹さんは、日本
JRが東京周辺ほぼすべての電車の運行を停止した歴史的な土曜日の翌日、2019年の10月13日の夜8時、あなたは台風19号の後始末に追われていたかもしれない。ようやく動き始めた電車に乗って、日曜日の職場で前日の後始末をして月曜に備えていたかもしれない。避難勧告で家を出たまま、避難所ですごしていたかもしれない。 そしてもちろん、多くの視聴者と同じように、家で、あるいはスポーツバーで、視聴率39%を記録したラグビー日本代表のスコットランド戦に声援を送っていたかもしれない。 色々な状況があり、いろいろな価値観がある。僕が今から書くのは、あの日、日本を覆った台風被害とスポーツの熱狂の裏で『いだてん』宮藤官九郎が何を語っていたかということについての話だ。夜に放送された第39回『懐かしの満州』は、第二章の最終幕であるだけでなく、『いだてん』という大河ドラマの本質、宮藤官九郎本人が「最も描きたかった」と語
近日、講談社『現代ビジネス』上で発表されて大いに話題となった藤田祥平さんのウェブ記事「日本が中国に完敗した今、26歳の私が全てのオッサンに言いたいこと」。この記事を肴に、中国ライターの安田峰俊と中国ITライターの山谷剛史が引き続き語る(前編より続く)。 ネトゲ廃人に希望はあるのか 山谷 ところで藤田さんの記事には、深センのネトゲ廃人村「三和」の話が出てきます。これって明らかに、安田さんが今年の夏ごろに現地取材して、SAPIOとか文春オンラインでバリバリ書いていた内容の後追いだと思うんですが、ソースへの言及が全然ないですよね。藤田さんの独自取材みたいに読めてしまう。たとえばこういう部分です。 >たとえば私は、三和地区という深センのスラム街に分け入った。ネットカフェで3日間ゲームをやり、1日だけ肉体労働をして暮らす「廃人」たちに、取材をするためだ。 >その地区に降り立ったとき、「人力資源市場」
12月2日、文筆家の藤田祥平さんが『現代ビジネス』に「日本が中国に完敗した今、26歳の私が全てのオッサンに言いたいこと」と題する記事を寄稿した。活気にあふれる中国の新興都市・深センの現在を情熱的に切り取った記事は、同月12日現在までの10日間で、フェイスブックの「いいね」が2.7万件、はてなブックマークが1290件と、空前の大ヒットを記録している。 もっとも、ツイッターや「はてブ」などのコメントを観察する限り、記事内容には賛否両論がある。特に中国に詳しい人からは批判的な意見も多いようだ。例えば雲南省昆明在住の中国ITライター・山谷剛史氏(41)は当該の記事に実に否定的である。そこで私こと安田峰俊(35)との中国ライター2人で、今回の藤田さんの記事を肴に対談をおこなってみることにした。 深センだけを基準に「日本が中国に完敗」って飛躍しすぎ 安田 藤田さんの記事なんですが、ツイッターやフェイス
興行収入82.5億円。キャスト329人、スタッフ総勢1000人以上。『シン・ゴジラ』はなぜ大ヒット映画となったのか? あれから1年。樋口真嗣監督と泉修一役・松尾諭さんが秘話に次ぐ秘話を語り尽くします! (#1からつづく) 樋口 小学生のときにテレビで観ました。僕ら子どもの頃は土曜日の夕方、8チャンネルで4時からいろんな怪獣映画をやっていて、「もうゴジラやるから帰るわ」って友だちと遊ぶの切り上げてましたから。 松尾 野球とか途中でやめて、帰っちゃう。 樋口 そう。友情より怪獣をとった。 松尾 ハハハ。しかし、そんな樋口少年が、将来ゴジラの監督になろうとは。 樋口 ゴジラ役を野村萬斎さんに演じていただくことになるとはね、思いもしませんでしたよ。野村さんは「なりきりたいから面をつけさせてくれ」と仰ってくださって、能面を参考にしながら同じような造りのゴジラのお面を作って、それをつけて動いていただき
樋口 最初に松尾さんに会ったのは、いつだっけ? 松尾 『MM9』ですよ。伝説の深夜ドラマ。あれがなかったら『シン・ゴジラ』はなかったという。監督が樋口さん、キャストに高橋一生、ピエール瀧さん、橋本じゅんさん……。そして『シン・ゴジラ』総監督・庵野(秀明)さんも出演してました。 樋口 粟根まことさんも出てました。『MM9』はもう5年前くらいになる? 松尾 いや、もっと前ですよ。僕に子どもが生まれる前ですもん。7年前ですか。 樋口 俺がもう映画に疲れてて、これからはテレビと配信の時代だって、テレビドラマをやってみたくなったんですよね。そこで一緒になって、仲良くなって、僕の撮るやつ撮るやつ全部に……。 松尾 いやいや、そんなことないですよ。『のぼうの城』とか全然お呼びがかからなかったですからね(笑)。5年くらい前に偶然会って、それで『進撃の巨人』の役をいただいたのが樋口さんとの2回目のお仕事です
日本史上の大トピックとされていながらも、全体像を捉え難い「応仁の乱」。そんな題材を、既成史観の図式に頼ることなく、絶妙なバランス感覚で丁寧に整理した新書がヒットしている。NHK大河ドラマの歴代最低視聴率記録を長年保持していた『花の乱』(1994年)を始め、「応仁の乱」を扱ったものに成功例は少ないので、異例の現象だ。 「『応仁の乱』をテーマに選んだのは著者ご本人です。地味かもしれませんが名前を知らない日本人はおらず、そういう意味では歩留まりがよい。大ヒットはしないまでも絶対に失敗はしないテーマという認識でした。中公新書は『歴史ものに強い』というアドバンテージもありますし後は“著者力”で突破だ、と」(担当編集者の並木光晴さん) 古くは網野善彦さん、近年では磯田道史さんなど、日本史研究者には、時に、学識の確かさと読み物としての面白さを両立させるスター学者が登場する。36歳とまだ若い本書の著者は、
本誌の読者にはライトノベルは縁の遠いものだろう。だが賀東招二の『コップクラフト』は、海外ミステリや海外刑事ドラマのファンは見逃すべきでない作品なのです。 舞台はアメリカ沖合の都市サンテレサ。日系人刑事ケイ・マトバが囮(おとり)捜査を行なう場面で幕を開ける。だが事態は急変。相棒は殺害され、違法に取引されていた“もの”も殺人犯に持ち去られてしまう…… 堂々たる海外ハードボイルド風の幕開けだが、変わった点が二つ。取引されていたのは“妖精”であり、犯人が“魔術師”であることだ。実は15年前、サンテレサの沖合に突如、魔法や妖精が実在する異世界に通じるゲートが出現した。街には異世界からの移民があふれ、異文化の衝突が頻発。妖精が狙われるのは、その体から麻薬が生成されるためだった。今回の事件で消えたのは高位の妖精。救出のために異世界から騎士が派遣され、マトバは彼女(美少女なのだ)とコンビを組んで事件を追う
ななつきたかふみ/大阪府生まれ。電撃文庫『Astral』でデビュー。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』は2015年度10~20代女性に最も読まれた文庫本(日販調べ)。近著は『ケーキ王子の名推理(スペシャリテ)』等。 桜庭一樹さん、米澤穂信さん、有川浩さんなど、「ライトノベル」(主に若者をターゲットとしたイラスト付きの小説)出身の作家が広く一般文芸の世界で活躍するようになって久しい。七月隆文さんもそのひとり。ただ、桜庭さんたちがライトノベルの中では異色の作風で知られていたのに対し、七月さんはポップなコメディを主に手がけ、長年ジャンルの本流に近いところを歩んできた。 『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』はそんな七月さんの初の一般文芸作品。100万部突破の大ベストセラーで、12月には福士蒼汰さん、小松菜奈さん主演の映画も公開される。京都の美大に通う〈ぼく〉と、秘密を抱えた美少女の束の間の逢
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