ブックマーク / at-akada.hatenablog.com (11)

  • ピピンのフィルム・ノワール論 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    ロバート・B・ピピンという哲学者がいる。ヘーゲル研究で有名だが、実は映画をたくさん書いている。私はフィルム・ノワールが好きなので、ピピンがフィルム・ノワール論を書いているのを知り、さっそく読んでみた。とりあえず一章まで読んだので紹介する。 Fatalism in American Film Noir: Some Cinematic Philosophy (Page-Barbour Lectures) (English Edition) 作者:Pippin, Robert B.University of Virginia PressAmazon ピピンの基的なアプローチは映画を哲学の実践として読むというもので、『他の手段による哲学Philosophy by Other Means』という方法論のも書いている。要するに映画映画という「他の手段」を用いた哲学であるということらしい。雰囲

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  • カントの天才論 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    『判断力批判』の一部で、カントは「天才論」というかたちで芸術作品の創造について論じている。それは『判断力批判』全体のプロジェクトの中では、決してメインのテーマではないのだが、それなりにおもしろい主題となっている。 判断力批判 作者:イマヌエル・カント作品社Amazon まず、カントが芸術作品の創造について、どのような問題を見出していたか説明しよう。 芸術の産物について意識されていなければならないのは、それが技術であって、自然ではないということがらである。とはいえ、それでも芸術の産物が有する形式における合目的性は、選択意志を拘束する規則によるいっさいの強制から、それがあたかもたんなる自然の産物であるかのように、自由なものと見えなければならない。 イマヌエル・カント『判断力批判』熊野純彦(訳)(2015)、作品社、p.277 カントは芸術作品の制作に、一種のパラドックスやジレンマを見出していた

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    lbtmplz 2024/01/13
  • 『メタゾアの心身問題』 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生 作者:ピーター・ゴドフリー=スミスみすず書房Amazon ピーター・ゴドフリー=スミス『メタゾアの心身問題』塩﨑香織訳、2023年、みすず書房 『メタゾアの心身問題』を読んだ。前著『タコの心身問題』を楽しく読んだのでこちらも楽しみにしていた。年末年始に読んでいたらあっという間に読み終ってしまった。ちなみに「メタゾア」は耳慣れない言葉だと思うが、多細胞の動物がだいたい含まれるカテゴリーらしい。 タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 作者:ピーター・ゴドフリー=スミスみすず書房Amazon 『タコの心身問題』もそうなのだが、読んでいない人に内容を伝えるのがとても難しいタイプのだ。どちらも基的には心の哲学のといって良いと思うのだが、心の哲学のと聞いてイメージする内容とはかなり異なっている。何しろ『メタゾアの心身問題』には、「カイメン」「

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    lbtmplz 2024/01/09
  • ゲシュタルト知覚について - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    ゲシュタルト知覚またはアスペクト知覚について自分なりに説明してみる。なぜこの記事を書こうと思ったか。ゲシュタルト知覚の話は、別にそんな難しい話ではないはずなのだが、なぜかピンと気づらいものらしく、理解していない人が結構いるという印象をもっているから。また、あまり丁寧に説明した文章を見たことがないため(どこかにはあると思うが)。なぜ大晦日にそんな文章を書いているのかはよくわからない。 ゲシュタルト知覚とは何か。基的には〈要素の知覚に還元できない知覚〉と覚えればいい。そのようなものが存在することは、以下のように論証できる。 ウサギ-アヒル図 出典 有名なウサギ-アヒル図である*1。この図はウサギのように見えたり、アヒルのように見えたりする。また、ウサギでもアヒルでもなく、単なるインクの固まりのように見ることも可能かもしれない。以下を読む前に、まず自分なりに上の図を見て、ウサギ状態、アヒル状態

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    lbtmplz 2024/01/01
  • Jホラーと怪談収集小説 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    『ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在』が出たので、掲載した論考「Jホラーの何が心霊実話なのか?——実話怪談、ドキュメンタリー、心霊写真」の補遺的な話を書く。 ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在 ―伝播する映画の恐怖― 作者:高橋洋,大島清昭,小中千昭,佐々木友輔,田辺青蛙青土社Amazon ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳ももうすぐ出ます。 filmart.co.jp Jホラーと呪われた映像 『ユリイカ』に書いた文章では、「呪われた映像」「心霊映像」がJホラーの重要なモチーフのひとつであるという話を書いた。また、そのモチーフがフェイク・ドキュメンタリー、ファウンド・フッテージ、POVといった手法と相性が良いという点に触れた。このモチーフの一番有名な例は言うまでもなく『リング』の呪いのビデオだが、Jホラーをある程度観たことがある人なら知っているように、「心霊映像

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    lbtmplz 2022/08/27
  • ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳が出ます(3) - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    第一回 第二回 ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳が出ます。 filmart.co.jp ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在にも書いています。 www.seidosha.co.jp 紹介 - ホラーの詩学 断片的にいくつか紹介してきましたが、『ホラーの哲学』を、トータルに紹介することもしてみようと思います。 『ホラーの哲学』とはどんなか。ふたつの軸で整理するならば、縦軸は「ホラーの詩学」であること、横軸がパラドックスであるという整理を思いつきました(縦と横は特に意味がないのでどっちがどっちでもいいです)。おおむねふたつとも「序」に書いてあることですが。 「ホラーの詩学」とは何かというと、要するに〈制作〉の観点からのホラー論であるということです。 キャロルの言い方で言えば、「アリストテレスが〔『詩学』で〕悲劇に対して行ったことを、ホラージャンルに対して行う」(p.8)。アリ

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    lbtmplz 2022/08/26
  • ルートレッジコンパニオン美学「ビデオゲーム」 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    お勉強。 The Routledge Companion to Aesthetics (Routledge Philosophy Companions) 作者: Berys Gaut,Dominic Lopes出版社/メーカー: Routledge発売日: 2013/04/04メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る 著者はGrant Tavinor。 目次 ビデオゲームはアートか? インタラクティブアート ビデオゲームと存在論 パフォーマンスと評価 著者も書いている通り、ビデオゲームは芸術か?という問題は大半のゲーマーにはどうでもよい問いだ。その答えによってビデオゲームおもしろさが変わるわけでもない。しかし、芸術の定義問題を考える上ではおもしろい問題になりえる。 ビデオゲームは芸術かという問いは、「ビデオゲームは芸術形式か?」という問いとして理解されねばならない。ビデオゲー

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    lbtmplz 2016/11/20
  • Philip Quinn「キリスト教における人生の意味」 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    Philip QUinn, The meaning of life according to Christianity - PhilPapers Quinn, Philip (2000). The meaning of life according to Christianity. In E. D. Klemke (ed.), _ The Meaning of Life _. Oxford University Press 57--64. The Meaning of Life: A Reader 作者: E. D. Klemke,Steven M. Cahn出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (Sd)発売日: 2007/10/11メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (1件) を見る Klemkeのアンソロジーに入ってるやつ。 著者は

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    lbtmplz 2016/06/14
  • 哲学の論文を作る時 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    発表したり、論文を書くとき、自分がいつもどういう工程でやっていて、どこにどれくらい時間をかけているのかというのを考えていた。「この辺効率化できるかなー」とか考えたかったのでいろいろ書き出してみる。できれば他の人の例も知りたいよね。 重要な前提条件: 私は趣味で論文書いたり発表するだけの人なので、業績を増やす必要があまりない。*1 私の場合、基的に作業は、「読む」「考える」「書く」くらいしかない。実験しないし、データ集めたりもない。 工程を区分してみる。 読む: サーベイ 考える 書きだす 書く 読む: 出典探し用の調査 アウトプット用の練習など 各工程どれくらいだろうか。目安以下くらいな気がする(数値は営業日単位なので、一週間5日、一月20日くらいで計算している)。数字はほんとに目安なので、1/2で済むこともあれば、2倍かかることもあるだろう。 1と2: 並行で40日 3: 10日 4と

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    lbtmplz 2016/05/21
  • Harry Frankfurt「最終目的の便利さ」 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    この論文で、フランクファートは、そもそも人間が何らかの目的をもつことは何の役に立つのかという問題を扱っている。 On the Usefulness of Final Ends Necessity, Volition, and Love 作者: Harry G. Frankfurt出版社/メーカー: Cambridge University Press発売日: 1998/11/28メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る おそらく、何の最終目的ももたない生というのは可能だろう。何の目的ももたない人も、意図的行為はできるかもしれない。あるいは、何の目的もなくとも、何らかの価値を認識することさえできるかもしれない(何かに価値を見出してもそれを目指したりしなければ)。 しかし、いかなる目的も目標もない人生は、意味のない人生ということになるだろう。意味ある人生は、自分にとって重要な活動に

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    lbtmplz 2016/05/17
  • Paisley Livingston「哲学としての映画に関する近年の仕事」 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

    Livingston, Paisley (2008). Recent work on cinema as philosophy. Philosophy Compass 3 (4):590-603. philpapers.org 「映画に哲学ができるか?」というテーマには、意外と蓄積があって、これはPhilosophy Compassのサーベイ論文。 皆様ご存知のように、映画には哲学的テーマを扱ったものがたくさんある。これらは独自の哲学的貢献をなすと考えられるべきなのか? 目次 映画には「哲学する」ことができるか? 作者と意図 解釈のプロジェクトのタイプ 解釈の戦略と哲学としての映画に対する含意 哲学としての映画の強い主張の問題点 この論文のメインの貢献は、映画が「哲学する」と言われる場合には、様々なパターンがあるとして、解釈の種類をわけている部分。著者は以下のような解釈のタイプを区別してい

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