裏まんが道へ ゴシック漫画の次はマニエリスム漫画を領略する。一般道徳・一般通念に中指を勃起させる「綺想」と「エロス」に宰領されたこのマニエリスム漫画の世界は、ゴシック漫画の「醜」と「美」のアナーキーな糾合、すなわち日野日出志と楠本まきが隣り合う(!)『悪魔のいる漫画史』の楕円宇宙さえ安定構造でしかなかったことを暴露する。読者は人跡未踏の「裏まんが道」を血みどろで歩むことになるやもしれず、手塚治虫は神の座から転落する。ゴッド手塚の聖なる像を打ちこぼつ異教徒たちが洞窟の中で跳ね回り、松明に照らされたグロテスクな偶像を崇め奉まつる異教徒の踊りに読者は驚愕、ショック、不安、痛みを隠せないであろう。しかし私の嫌いな思想家スラヴォイ・ジジェクが唯一正しいことを言ってるように、「真実は痛い。そして事故のかたちでしか訪れない」。辺境最深部の「フリンジ・カルチャー」(宇田川岳夫)がセンターに躍り出る転倒・倒