闘病されていると知ったのは、今年のダービーが終わった直後、カメラマンや関係者でごった返すターフの上です。久しぶりに顔を合わせた宇田川淳さんが「石川さんの体調、あまり良くないみたいなんだよね……」とつぶやきました。なんと末期癌とのこと。あまりに突然のことだったので目の前の風景がグニャッと歪んだような気がしました。 それから2ヵ月半、レーシングプログラムや雑誌などで幾度か文章を目にする機会がありました。以前と変わらぬ調子のそれらを読むと、ひょっとしたら病気はガセネタではないか、と思ったりもしました。仮に癌が本当だとしても、かなり持ち直してきているのではないか……。 それは空しい願望でした。亡くなったと知らされたいま、脳裏に甦るのは石川さんの人懐こい笑顔です。大らかで陽気で優しく、冗談とダジャレと女性が好きで、いつも人の輪の中心にいらっしゃる方でした。初めてお会いしたとき、わたしは20代前半のペ