「72時間で再生する淡い期待がある」「なんとなく胸が動いた」。埼玉県ふじみ野市で2022年に起きた医師射殺・立てこもり事件の公判で、ある音声が再生された。 【写真】「クスリをやられた」患者宅で執拗にお茶を勧められ…口を付けた女性看護師は意識障害に 訪問医療に潜む暴力・ハラスメント 事件前日に死んだ母親について、68歳の被告の男が母親の男性主治医と会話する様子だ。母親を熱心に介護していた男は事件当日、呼び出したこの男性医師に蘇生を求めた。断られると発砲し、男性医師を殺害した。同行した理学療法士の男性も銃撃されて瀕死の重傷を負った。男はそのまま部屋に立てこもり、翌朝に逮捕された。 なぜ医師らを撃ったのか。2023年末に開かれた公判で、男はこう語った。「母親の蘇生を断られた。今でもおかしいと思う」。死者の蘇生。その知識の基になったのは、30年近く前にテレビで紹介された内容だった。(共同通信=勢理