国立研究開発法人の理化学研究所の労働組合などが、約600人の研究者が雇い止めとなる可能性があるとして、文部科学相と厚生労働相あてに要望書を提出した。近年は、日本人のノーベル賞受賞者がまるで口をそろえたように、日本の科学力の低迷と研究環境の悪化を訴えてきたが、歯止めどころか拍車がかかっているような出来事だ。俳人で著作家の日野百草氏が、中国人技術者が日本の研究者や技術者の環境をどう見ているのか聞いた。 【写真】アーチの天井に装飾柱もある歌劇場でマイクを向けられるノーベル賞受賞者・眞鍋淑郎氏。他、ハイアールの重厚感ある銀色の洗濯機が並びゴシック姿の女性が立つ様子 * * * 「日本は優秀な人がとても安いと思います。なぜ辞めさせるのですか」 筆者の旧知の中国人技術者から話を伺う。ITエンジニアでゲーム開発にも精通している。中国人のエリートならごく当たり前だが4ヶ国語を話せて日本語も堪能だ。しかし本
ことしのノーベル化学賞の受賞者に、有機触媒の研究で大きな貢献をしたドイツの研究機関とアメリカの大学の研究者2人が選ばれました。 スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は日本時間の6日午後7時前、ことしのノーベル化学賞の受賞者を発表しました。 受賞が決まったのは、ドイツのマックス・プランク研究所のベンジャミン・リスト氏とアメリカのプリンストン大学のデビッド・マクミラン氏です。 2人は有機触媒の分野の研究で大きな貢献をしたことが評価され、選考委員会は、彼らが開発した有機触媒を利用することで新たな医薬品などを効率的に作り出せるようになったとしています。 有機触媒の研究に詳しく、2人とも交流のある学習院大学の秋山隆彦教授は「リスト氏とマクミラン氏は、2000年に化学反応を促す新たな有機触媒をそれぞれ同時に発表した。これまでの触媒はパラジウムなどの金属を使うことが一般的だったが、こ
理化学研究所と富士通は28日、共同開発したスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」(神戸市)がスパコンの計算性能を競う4つの世界ランキングで1位になったと発表した。半年ごとに発表されるランクで、昨年の6月と11月に続き、3期連続で4冠を達成した。 富岳が制したのは、高速計算を安定して実行できる総合的な性能を示す「TOP500」のほか、物理現象をコンピューターでシミュレーション(模擬実験)する際の処理性能を主に測る「HPCG」▽人工知能(AI)の開発でよく使う計算の指標である「HPL―AI」▽道路網などネットワークで表現される現象やビッグデータの解析性能を示す「Graph500」。幅広い用途での富岳の威力が改めて示された。 理研計算科学研究センターの松岡聡センター長は「3度4冠に輝き、『富岳』の広い分野における世界的な先進性が示された」とコメントした。 TOP500は、前身である「京(けい)
NASAのルナー・リコネサンス・オービターが撮影した月の画像。月の裏側が無数のくぼみで覆われているのがわかる。中央の青い部分は、南極エイトケン盆地。直径約2500キロで、太陽系で知られている限り最古かつ最大の衝突クレーターだ。(PHOTOGRAPH BY NASA/GODDARD) 月の裏側の地下に、何やら巨大な物体が潜んでいるらしい。質量がハワイ島の5倍もある金属の塊のようだという。 学術誌「Geophysical Research Letters」に最近発表された論文によると、その物体は南極エイトケン盆地の地下300キロよりも深い場所にある。南極エイトケン盆地は、数十億年前、月の表面がまだ高温の溶岩に覆われていたときに、隕石が衝突してできた巨大クレーターだ。月面が完全に冷え固まる少し前に形成されたため、今も痕跡が残っている。(参考記事:「【解説】月の裏側でマントル物質を発見か、中国」)
科学的な実験の結果、このポテトチップスを食べるかどうかを判断する基準は、3秒以内に拾うかどうかといった時間の問題ではないことが判明した。(PHOTOGRAPH BY LORI ADAMSKI PEEK) 私たちは子どもの頃から、ある疑問につきまとわれている。落とした食べ物は、はたして食べても安全なのだろうか? 答えのひとつに、素早く拾えば大丈夫というものがある。いわゆる「3秒ルール」だ。よく似たルールは世界中にあり、米国では「5秒ルール」と呼ばれている。 それだけに、こうしたルールにさしたる根拠があるとは思えず、世界各地の家族の論争や科学展でもおなじみのテーマになっているが、2500回以上も科学的に測定を行った興味深い実験の結果があるので紹介しよう。 米ラトガーズ大学の食品科学者ドナルド・シャフナー氏らが、2016年に学術誌「Applied and Environmental Microb
「死の勝利」を描いた15世紀イタリアの作者不明のフレスコ画。一般的に中世の3大疾患は、感染症、栄養失調、そして戦争や事故による負傷だったと考えられている。(ART VIA WERNER FORMAN ARCHIVE, BRIDGEMAN IMAGES) 現代では、英国人の半数以上が一生のうちにがんと診断されると言われている。一方で考古学的証拠から、産業革命以前には、がんにかかる英国人は1%程度だったと考えられてきた。 だが5月4日付けで学術誌「Cancer」に発表された論文では、この1%という見積もりは小さすぎた可能性が指摘されている。 研究では、現代のがん検出ツールを用いて、数百年前に埋葬された遺骨を分析した。その結果、産業革命以前の英国人ががんにかかる確率は、これまで考えられていたより少なくとも10倍以上高かった可能性があることが明らかになった。 この研究を主導したのは、英ケンブリッジ
反物質とは、通常の物質とは逆の電荷を持つ物質で、物質と接触すると膨大なエネルギーを放出して対消滅してしまうという存在です。そんな反物質でできた「Antistar(反物質星)」が、銀河の中に複数存在している可能性があるとの研究結果が発表されました。 Phys. Rev. D 103, 083016 (2021) - Constraints on the antistar fraction in the Solar System neighborhood from the 10-year Fermi Large Area Telescope gamma-ray source catalog https://journals.aps.org/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.103.083016 Stars made of antimatter could lurk i
ベラルーシのミンスクにある甲状腺センターでは、1986年のチェルノブイリ原発事故で発生した放射性降下物に曝露して甲状腺に深刻なダメージを受けた患者の治療が行われている。(PHOTOGRAPH BY GERD LUDWIG, NAT GEO IMAGE COLLECTION) チェルノブイリ原子力発電所の事故から今年で35年。事故が人々の遺伝子に及ぼした影響を徹底的に調べた研究結果が、4月22日付けで学術誌「サイエンス」に発表された。その2本の論文で明らかになった詳細は、私たちの不安を和らげるような内容だ。 1986年4月26日の朝、現在のウクライナ北部にあったチェルノブイリ原発の原子炉が爆発・炎上し、史上最悪の原子力事故が発生した。激しい火災で雲のようにわき上がった放射性物質が降下して周辺地域に住む人々の肺に入り、家や畑や牧草地に積もり、食べ物などに入り込んだ。ある原子力技術者の言葉を借り
東京大学がちょっとびっくりするくらいの超良質な教材を無料公開していたので、まとめました Python入門講座 東大のPython入門が無料公開されています。scikit-learnといった機械学習関連についても説明されています。ホントいいです Pythonプログラミング入門 東京大学 数理・情報教育研究センター: utokyo-ipp.github.io 東大のPython本も非常にオススメです Pythonによるプログラミング入門 東京大学教養学部テキスト: アルゴリズムと情報科学の基礎を学ぶ https://amzn.to/2oSw4ws Pythonプログラミング入門 - 東京大学 数理・情報教育研究センター Google Colabで学習出来るようになっています。練習問題も豊富です https://colab.research.google.com/github/utokyo-ip
過剰なビデオ会議が、リモートワーカーの「ズーム疲れ」を引き起こしている。(PHOTOGRAPH BY STEFAN WERMUTH, BLOOMBERG VIA GETTY IMAGES) ソーシャルディスタンス時代に欠かせないビデオ会議ツール。パンデミックが終わってもリモート勤務を続けると決めた企業もある。だが、既に1年以上オンラインでの生活と仕事が続き、ビデオ会議による疲労「ズーム疲れ」に悩まされる人が増えているという報告がある。(参考記事:「「ズーム疲れ」は脳に大きな負担、なぜ?」) 研究チームは、1万人以上を対象にズーム疲れについて調査、その原因について幅広く考察し、4月14日付で査読前の論文を共有するサイト「SSRN」に発表した。論文によると、ズーム疲れは誰もが同じ程度に感じているわけではないようだ。疲労の程度は女性のほうが男性よりも平均して13.8%高いことがわかった。 こうし
大阪市などが出資する公益財団法人「大阪バイオサイエンス研究所」(OBI、大阪府吹田市)が3月末で解散することが3日、OBIや大阪市への取材でわかった。人件費などにあてていた大阪市からの補助金が今年度で打ち切りとなり、存続できなくなった。大阪市が所有する土地と建物は理化学研究所(埼玉県和光市)に無償譲渡されるが、約30年にわたって生命科学分野で世界的業績を残した研究機関は姿を消す。 OBIは大阪市制100周年を記念し、同市や企業が出資する形で昭和62年に設立。脳科学や神経の研究を中心に手がけ、ネイチャーなどの科学誌に多数の論文が掲載されている。研究費は国などの補助金で、人件費や施設管理費は大阪市の補助金で賄(まかな)ってきた。 だが、橋下徹市長が24年に打ち出した市政改革プランで、「自治体が運営を助成する必要がない」として、26年度限りでの補助金廃止を決定。23年度は6億2千万円だったが、2
赤キャベツに含まれる青色の天然色素が発見された...... Credit: Rebecca Robbins, Mars Wrigley Global Innovation Center <米カリフォルニア大学デービス校、名古屋大学などの研究によって、安定的に青を発色する天然色素が発見された......> 食品着色料は、食品や医薬品、化粧品の分野で広く用いられてきた。近年は、健康への影響のおそれや製造工程での持続可能性などの観点から、化学的に合成された「合成着色料」に代わって、植物の花や葉、実など、自然界にある物質を原料とする「天然着色料」への需要が高まっており、その市場規模は2027年までに32億ドル(約3520億円)に達すると予測されている。 とりわけ、青色着色料は、黄色と混ぜて緑にするなど、調色において重要な色素だ。しかし、安定的に青を発色する天然色素はこれまで見つかっておらず、現時点
約4億年前に生きていた顎のない甲冑魚(かっちゅうぎょ)。骨細胞を含む骨があり、筋肉に重要なミネラル分を供給することが可能だった証拠が新たに発見された。(ILLUSTRATION BY BRIAN ENGH) 古生代の魚の化石から、骨の進化における大きな転換点が明らかになった。3月31日付けで学術誌「Science Advances」に発表された論文によれば、ヒトの骨にあるのと同様な骨細胞がおよそ4億年前に発達し、いわばミネラル分の「電池」として機能していたという証拠が確認された。 ヒトなどの脊椎動物の場合、骨は主に体内の支えとなると同時に、絶えず損傷を修復して自らを維持しながら、血流に重要な栄養素を供給している。対して、ごく初期の骨は大きく異なっていた。魚の体を保護する殻の役割を果たしており、むしろコンクリートのようなものだった。骨がなぜこれほど進化を遂げたのかは大きな謎だが、初期の魚の表
麻酔銃で眠らされ、南アフリカからモザンビークの保護区に再導入されるライオンたち。一方で家畜を食べるライオンの場合、生息場所を変えるやり方は良い結果につながらないことが最新の研究で明らかになった。(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE) ボツワナで野生動物保護に取り組むグリン・モード氏は、科学者は研究対象に愛着を持つべきではないことを知っている。しかし、モード氏とその同僚たちは、彼らが「マギギ」と名付けた6歳のライオンの幸運を願わずにはいられなかった。なぜなら、それだけ過酷な運命が待ち構えていることを知っていたからだ。 マギギというのはボツワナ語で「魔術師」を意味し、このメスがよく姿を消してしまうことから付けられた名だった。マギギがベレの村外れで家畜の牛を繰り返し襲うようになったため、当局はマギギを捕獲して、元いた場所から約130キロ離れたセントラル・カラハリ動物保護区内に移送し
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