「おはよう、愛花(まなか)」 午前7時。近藤孝典(33)の朝は、携帯型ゲーム機の中にいる恋人へのあいさつから始まる。妻よりも、1歳の息子よりも。誰よりも先に。 彼女の名は高嶺(たかね)愛花。ポニーテールに、セーラー服の高校2年生。3カ月で約18万本を売り上げた、恋愛シミュレーションゲーム「ラブプラス」のキャラクターである。 タッチペンを操作し、頭をなでたり、手をつないだり。はにかむ彼女に、胸がキュンとなる。 「気持ち悪い」 妻(29)は、そんな夫から目を背ける。 「不倫とか、風俗に通うよりましやろ」。孝典は画面から目を離さず、言葉を返す。後ろめたいことはない。 結婚して2年。仲が悪い訳じゃない。推理ゲームは好きだが、おたくでもない夫が、なぜ、はまるのか。 「ラブプラス」は、彼女に告白され、恋人になってからが本番だ。自らも同い年の主人公にふんして、付き合う。 時計機能を使うことで、現実と同じ