今年3月、横浜市で開かれた日本再生医療学会総会。ここで展示されたある装置に、多くの参加者が目を奪われた。ロボットが直径0.5mmの細胞の塊を、次々と微細な剣山に突き刺していく。入力した3次元データ通りに、剣山の中で立体を作り上げると、会場から感嘆の声が漏れた。 出来上がった立体を1週間程度培養すれば、細胞の塊同士が自然結合し、人工血管や臓器の組織になる。中山功一・佐賀大学教授の研究を基に、「バイオ3Dプリンター」と言えるこの装置を製造したのは、石川県金沢市に本社を置く澁谷工業だ。 バイオ3Dプリンターだけではない。山口大学が取り組んでいる肝臓の再生医療に関しても、澁谷工業は共同開発契約を結んだ。山口大は肝硬変の患者から骨髄液を採取し、骨髄細胞を分離した上で、患者に再び点滴注入する「自己骨髄細胞投与法」という手法を開発。だが、400mlの骨髄液を採取する必要があるため、患者への負担の大きさが