私は人間だ。電車で通勤している。 朝の電車では、乗客の4割ほどが猫だ。 ふわふわの毛。一匹一匹違う模様。丸い大きな目。ピンと伸びたひげ。 空いていれば吊り革に掴まっている肉球も、満員の車内では届きようもなく、所在無げにペロペロされるのみだ。 猫は人間と人間の間に縦に挟まっている。お腹の毛並が脇からからだの中心に向かって伸び、胸元でぶつかってはねている。細い柔らかそうな毛だ。6つか8つかある乳首は埋もれて見えないが、毛のへこみでなんとなく位置がわかる。そんな体を惜しげもなく晒して、猫は電車に乗っている。 私はつい、猫の後ろに立ってしまう。 真っ白いお腹と違い背中は茶の縞模様。艶やかな毛並みはまっすぐしっぽに向かっている。一本一本生えている毛が少しずつ色を変え、見事な模様を描いている。私はこの模様が不思議で仕方ない。 電車が揺れた。猫は少しバランスを崩し、後ろに立つ私に寄りかかってすぐに離れた