ああ面白かった、だけでもかまわないが、話の筋やスターの華やかさだけで映画を見た気になってしまうのは寂しい。よほど出来の悪い作り手は別にして、映画作家は、先人が残した豊かな遺産やさまざまなたくらみを、作品のなかにしっかり練り込もうとしている。 それを見逃すのは、本当にもったいない。よくできた娯楽映画は、知恵と工夫がぎっしり詰まった鉱脈だ。その鉱脈は、地表に露出している部分だけでなく、深い場所に眠る地底の王国ともつながっている。さあ、その王国を探しにいこうではないか。映画はもっともっと楽しめるはずだ。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 第12回:「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」とトム・クルーズの本気ローグ・ステイト(rogue state)を「ならず者国家」と訳したのはだれなのだろうか。言葉自体は私