「SNSで死なないで」。2019年2月、AV女優の戸田真琴さんがnoteに投稿した記事が反響を呼んだ。ある中学生がネット上で「ヒッチハイクでアメリカを横断する」と宣言し、騒ぎになったことをきっかけに書いたものだ。無謀な冒険に打って出て、皆に「勇気や夢を与えたい」とツイートしていた中学生。戸田さんはその発言を引きながら《勇気を与えたいんじゃなくて、『何者か』になりたいだけなのだ、たぶん》と綴った。特別になりたいという欲望に、踊らされなくていい――。その文章に出会ったとき、私は久しぶりに深呼吸できたような気がした。 SNSで特別な自分を上手に表現してファンを集める人がいる。インフルエンサーと呼ばれる人たちのプロフィールには、聞いたことがないからこそ凄そうな肩書や、個性的な経歴が躍る。私の「自分らしさ」なんて取るに足らないものに思える。「自分らしさ」までジャッジされ続けるようになったこの社会で、