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女子の大学進学率が男子より高い状況も問題。アメリカの「落ちこぼれ男子問題」は日本でも火を噴くか?(Wezzy2017.09.12掲載) 約一年前にwezzyでの連載で、男子の方が女子よりも大学就学率が高い日本の状況は、先進諸国の中では極めて例外的であり、この問題を解消しないことには社会における男女平等を実現することは難しいというお話をしました。その状況を端的に表しているのが以前も紹介した下記の図です。 しかしこの図を見て、いくつかの国で女子の大学就学率が顕著に男子よりも高くなっているのは問題ではないのか? という違和感をもった人もいるでしょう。 確かに女子に比べて顕著に低い男子の就学率は良い状況ではありません。男女で機会が平等でないということもさることながら、落ちこぼれた時に、女性はこれまで労働参加していなかった状況が継続するのに対し(もちろん女性が労働参加できていない状況も大問題です)、
就学前教育の就学率95%の日本で、幼児教育の無償化は本当に必要?(Wezzy2017.06.21掲載) 前回、特に不利な環境にある母親に対する最初の1000日(子供が母親のお腹に宿ってから、2歳の誕生日を迎えるまでの約1000日間)の支援の重要性について指摘しました。 6月初旬の経済財政諮問会議で骨太の方針2017の素案が発表され、「幼児教育・保育の早期無償化や待機児童の解消に向け、(中略)、社会全体で人材投資を抜本強化するための改革の在り方についても早急に検討を進める」と明記されました。日本は子供を含めた家族への予算が小さい国なので、最初の1000日も含めた就学前教育の重要性が広く認識され、そのために予算が割かれるようになるのはとても良いことだと思います。 幼児教育が無償化されると家計の負担も減ります。おそらく読者の多くが幼児教育無償化に大賛成でしょう。しかし、幼児教育への予算は増やされ
女の子たちは受験戦争を勝ち抜くことができるのか? 男子がいると女子の競争力が低下する問題(Wezzy2017.07.12掲載) 近年、アメリカやイギリスでは「男子の落ちこぼれ問題」が議論の的となりつつあります。「男子の落ちこぼれ問題」とは、主要産業が第二次産業から第三次産業にシフトし、大卒の人材が必要とされるになったにもかかわらず、女性に比べて男性の高等教育就学率が向上しなかったために「男子の落ちこぼれ」が生まれてしまった、という問題です。一方、理数系を中心に女子の成績が男子ほどではない点も問題視されており、どうすれば女子の学力が向上するのか、男子と女子の学習行動の違いから女子教育の拡充に取り組むような分析が行われています。 今回は数ある学習行動の中から「競争」に関するものをご紹介しようと思います。教育段階が上昇するほど教育の中に「競争」の要素が出てきます。競争の要素が出てくるということは
「女の子は勉強しても意味がない」 シングルマザーの貧困とその連鎖は女子教育軽視の産物である(Wezzy2017.04.04掲載) 近年、日本では貧困問題がメディアで取り上げられることが増えてきました。数ある貧困問題の中でも女子教育の問題と強い関連があるものが、シングルマザーの貧困と、その貧困の連鎖です。今回は、なぜシングルマザーの貧困が貧困の連鎖を生み出してしまうのか、そしてそれがなぜこれまで日本が女子教育を軽視してきた産物なのか話をしていきたいと思います。 ひとり親世帯と婚姻世帯の子供の教育格差ひとり親世帯の貧困がその子供の貧困へと連鎖していく原因の一つは、子供の教育水準が低い所で留まりがちという点です。 平成27年4月20日厚生労働省「ひとり親家庭等の現状について」によると、全世帯の大学進学率が53.7%あるのに対して、ひとり親世帯はわずか23.9%と、半分以下に留まっています。第二回
今回は教育のブラックボックスのひとつである「女子校が持つ可能性」を覗いてみたいと思います。 まず、教育のブラックボックスとはなんぞや? という話から始めましょう。ある教育政策について考えるとき、多くの場合は、教育活動にあるインプット(タブレットや新しい教科書など)を投入したとき、どのようなアウトプット(学力や所得などの向上)が生み出されるか、という関係をみます。連載でもこれまで、女性の所得向上やエンパワメントといった教育活動のアウトプットに効率的に結び付くとされているインプット(奨学金や女性教員など)を紹介してきました。 しかし、このような分析では、実際に教室や学校の中で何が起こっているのか(プロセス)に注意を払わなかったり、注意を払っても指標化が難しいために十分な分析ができないということが往々にしてあります。そのため、何が起きているのかがわからない教室や学校の中を「ブラックボックス」と呼
教育無償化が争点のひとつとなっている選挙を前におさえておきたいこと。日本の女性は教育の恩恵を社会に手渡し過ぎている(Wezzy2017.10.09掲載) 10月22日に投票を控えている衆院選。新党の結成や合流など政局は混乱を極めていますが、そもそもこの選挙は「教育無償化」が争点として取り上げられていました。今回は「教育無償化」にも関係するお話をしたいと思います。 連載「女子教育が世界を救う」の初回で、教育には「人権アプローチ」と「経済アプローチ」があることを紹介しました。大雑把に説明をすると、前者は「教育を受ける権利」を実現するためのアプローチであり、後者は、教育の経済的な損得を踏まえて政策を考えるというアプローチです。 経済アプローチに基づいて教育を考える際には「私的収益率」と「社会的収益率」と「外部性」が重要になります。 私的収益率は個人が主人公です。教育を受けるためには、授業料はもち
「女子の就学率が低いのは頭が悪いから」のウソ 優秀な女子の潜在能力を活かせ!(Wezzy2017.01.03掲載) 先月、PISAとTIMSSという国際学力調査の結果が立て続けに公表されました。 本連載ではこれまで、日本の女子の高等教育就学率の低さ、STEM系(いわゆる理系)学部における女子学生の少なさ、トップスクールにおける女子学生の少なさ、といった日本の女子教育の課題を指摘してきました。それらの記事に対する反論として少なからず見えたのが「テストの結果だから仕方がない」という感想です。しかし国際学力調査の結果を見ると、日本の女子は他の先進国の女子と比べて理数系科目で平均的にも優秀な成績を残していますし、トップ層の割合も分厚くなっています。つまり、日本の女子教育の課題は、女子の低学力に起因しているというよりも、別の要因に大きな影響を受けていることが読み取れます。 前回は女子向けの奨学金とい
そういえば2023年もそろそろ終わるな―という感じですが、日本に丸一年いたのは2007年以来になるので、感慨深いものは特に何もないですが、一年を〆とくかということで、12月頭に秋田の国際教養大学で行ってきた教育とジェンダーの授業記録を残して、2023年を〆たいと思います。下記の授業は全部英語でしたが、多分英語で書くと誰も読んでくれないので日本語にしておきます。 1. 世界に認識され始めた落ちこぼれ男子問題授業の内容に入る前に、以前記事を書いたこともあるので、少し寄り道をします。Of Boys and Menという米国の弱者男性を扱った本がヒットし、この本の紹介記事も書きましたし(弱者男性が救われる日は…多分来ない)、2017年9月にはWezzyで「女子の大学進学率が男子より高い状況も問題。アメリカの「落ちこぼれ男子問題」は日本でも火を噴くか?」という記事を執筆しましたが、この落ちこぼれ男子
なんかここ数か月毎週出張に行って講義をしていて、一昨日も秋田の国際教養大学に行ってGender and Educationの授業をしてきたところですが、忙しすぎて話題に乗り遅れましたがPISA2022の結果が出ましたね。もう既に色んな人がやいのやいの言っているので、普通のことを言っても何も面白くなさそうです。というわけで、今回は報告書の中にある沢山の図表の中からたった一つの図だけ使うという縛りをかけてどこまで言えるかやってみたら楽しそうなので、そんな感じで私もやいのやいの言ってみたいと思います。 1. 独仏米よ、お前らは黙っとけ、二度と喋るな今回使用する図は、PISA報告書の1巻の136ページにある、国民一人当たり所得と数学の成績の相関図です。基本的に国が豊かになればなるほど子供達の成績も上がっていきます。そうすると、中には豊かではないのに成績が良い凄い国、豊かなのに成績が悪いどうしようも
はじめに2017年にアメリカのいわゆる落ちこぼれ男子問題に焦点を当てた記事を書きましたが(アメリカの「落ちこぼれ男子問題」は日本でも火を噴くか?)、この落ちこぼれ男子問題を放置した結果、米国でいわゆる弱者男性が生み出され続けています。 そして、この弱者男性問題を取り扱った、Of Boys and Men: Why the Modern Male Is Struggling, Why It Matters, and What to Do about Itという本が昨年出版されました。Brookings研究所という、国際教育協力でも影響力が大きい、世界最大手のシンクタンクに所属する研究者が執筆しただけあり、学術的なエビデンスやデータに基づいて、なぜアメリカで弱者男性が苦境に立たされ、このイシューを解決するためにどのような対策を講じられるのかを議論していて、非常に面白いものでした。切り口は弱者男
アフガニスタンで女の子達が学校へ行けなくなったのは遠い国の話ではなく、この記事を読んでいるあなたにも責任があるんだぞ、という話 タリバンがダメダメな理由アフガニスタンでは既に、女子の中等教育へのアクセスが停止されてしまっていましたが、ついに高等教育へのアクセスまで停止されてしまいました(ニュース)。まだ中等教育の停止は許容範囲内でしたが、高等教育の方は超えてはいけない一線を越えた感じがあります。 一つ目の理由ですが、国際教育協力では中等教育の空洞化などと言われたりしますが、ドナーの支援も初等教育か高等教育へ行きがちで、その中間である中等教育はおざなりにされたりします。ただこれは、経済成長や貧困削減の観点からみると実は大きく間違っているわけでもなくて、世銀が出したペーパーを読むと、中等教育への教育投資収益率は、初等教育や高等教育のそれの半分以下だったりします。つまり、 ・初等教育は比較的誰で
ミシガン州立大学に博士論文を無事提出して15年ぶりに帰国しました、畠山です。Ph.D. in Education Policyって、日本語だと学術博士(教育政策)でいいんですか? そんな質問の前に、お前何で帰ってきたんだ?というツッコミもあるかと思いますが、まあ端的に言えば仕事が見つからなかった&土壇場でビザの関係で内定が消えたという事で、どうもニートです。就活もろくすっぽせず毎日隣町のBMDジムに行ってパワーリフティングの練習をしている元気なニートです。 そんなニートが偉そうに言うのも何ですが、最近気になったニュースといえば、なかやまきんに君の日本マスターズの6位入賞です。種目こそ違えど、筋肉という大きな括りではパワーリフティングと遠くないですし、私もマスターズで全日本の表彰台に登りたいと思っているので、気になったニュースはやはりバイデン政権の教育ローン一部返還免除です。 このニュースが
アイ・キャント・ブレス(息が出来ない)、という言葉を遺してジョージ・フロイドさんが警官達に殺されて、BLM運動が全米どころか海を越えて広がったきっかけの地にやってきました。 今年は比較国際教育学会(CIES)がミネアポリスで開催されるのを知った時に、ミネソタ・ツインズのマエケン投手が見たい!、よりも前に、ジョージ・フロイドさんが殺害された地(ジョージ・フロイド広場と現在では呼ばれています)を見に行こうかどうかの迷いの方が先に来ました、ほ、本当なんだからね!しかし、実はミネアポリスに到着してからもまだ迷っていました。なぜなら、BLM運動の拡大は私のキャリアに大きな影を落としたので、あまりよい感情を抱いていないからです。 BLM運動は、ある特定のアメリカ社会を大きく変えた一方で、結局変わらなければいけない部分のアメリカ社会を変える事は出来ませんでした。変わった社会の一つに、教育大学院が挙げられ
頭が働かず、この状態で博論や就活や本の執筆をすると危険なので、頭を使わない作業として、今年気になった教育ニュースをまとめておこうと思います。 なぜ頭が働かないのかというと、39.5Cの熱が出て、オミクロン株をついに拾ったのかと思いきや、咳も鼻水も出ていないし鼻も喉も大丈夫で、ただ高熱が出て腹痛で一日トイレに籠っていたので、これはあれですね、途上国あるあるの食中毒。雨季のネパールならまだしも、冬のミシガンでなぜ・・・? 1週間休み。 ①バイデン政権の新型コロナ対応バイデン政権の新型コロナ対応は、CARES Actというトランプ政権が打ち出した新型コロナ対応に乗っかる形となったAmerican Rescue Planで行われました。トランプ政権下のCARES Actで教育に割かれた資金が30.75Bドル(約3兆4千億円)、その中でも基礎教育に行ったのは13.2Bドル(約1兆5千億円)なのに対し
今回の日記は、ミシガン州議事堂の前で行われていた共和党支持者たちの集会を社会見学していて、米国の白人女性達の間にある大学に由来する深い深い分断を象徴するOur Boys Matterという印象的な言葉を聞いたので、それに関する日記です。まず私の社会見学の文脈を理解してもらうために、余談から始めようと思います。 0. はじめにー州都にある名門州立大学アメリカへの大学院留学というと、カリフォルニアのどこかか、東海岸IVYリーグを思い浮かべがちですが、ちょっとそれらとは異なる視点から私がおススメできる大学があります。それは、ミシガン州立大学、ウィスコンシン大学マディソン校、テキサス大学オースティン校、オハイオ州立大学といった大学です。 アメリカの大学に詳しい人なら州立大の名門校だ、というのは気が付くかもしれませんが、それだけだと全ての州立大学の中のトップに君臨するミシガン大の名前が入ってこないの
前回は、アメリカン・インディアンの子供達を殺す舞台となったインディアン寄宿学校が成立することになる、教育政策的な背景とインディアン政策的な背景を簡単に解説しました。今回は、 ①インディアン寄宿学校の成立 ②インディアン寄宿学校のシステム の2点に焦点を当てて話を進めていきます。 今回も教育史の授業のノート&プレゼンを基にあれやこれや書いていきますが、授業で沢山参考文献を読まされましたが、時間が無い人は「Education for Extinction」さえ読んでもらえれば、概要はほぼ完璧につかめると思います。 4. インディアン寄宿学校の成立そもそも論として、寄宿学校(ボーディングスクール)という教育形態はなかなか恐ろしい物です。アメリカ・イギリスで、エリートの中のエリートの学校が寄宿学校という形態をとっているのは、家庭や地域に触れる機会が残っていては、完璧なエリートに育て上げることができ
0.0 インディアン寄宿学校で見つかった215人の子供の墓地カナダのインディアン寄宿学校の跡地から、215人もの子供の墓地が見つかったことが大きなニュースとなっていました。アメリカ教育史を授業で取った人なら、 ①インディアン寄宿学校でメチャクチャ死亡児童が出たこと ②当時の交通手段や通信手段の問題などから亡骸が故郷に戻る事無く埋葬されたケースが一定割合存在していること(そしてそれは往々にして埋葬されてから親に知らされた、ないしは長期休暇や卒業の時期になっても戻ってこない我が子の状況を問い合わせて初めて知らされた、ないしは子供が既に死亡していることを知らされないまま親も虐殺された・死亡した。恐らく今回の件はこの3番目のパターンかなと思います) ③被害の全容は完全には明らかに出来なさそうなこと の3点を知っているので、これはもちろん悲劇的な話ではあるものの既知の問題の氷山の一角に過ぎない事を理
アフリカや南アジアでの国際教育協力を専門にしています。頂いたサポートは私が理事を務めるNGOの活動資金にしますのでよろしくお願いします。詳しい自己紹介はコチラ→http://www.sarthakshiksha.org/ja/who-we-are/staffs/sh/
米国の大統領選挙も終わり、留学生・国際協力の立場からすると、バイデン次期大統領が誕生したのは大変喜ばしい事です。しかし、獲得代議員数だけを見るとバイデン次期大統領が圧勝したかのように映りますが、単純な票数だけ見れば、なかなかの接戦でした。 トランプ政権誕生の背景にはリベラルと反リベラルの分断があり、トランプ政権下でこの分断は一層深刻化したと言われています。では、バイデン次期大統領はこの分断を癒すことができるのでしょうか? 私は、分断が一層深刻化することはあっても、これが癒えることはまず無いと思っています。それは、リベラルと反リベラルの分断はもっと根が深い所にあり、1980年代以降の教育政策がその悪化を加速させ、これが改善に向かう見込みがないからです。どういう事でしょうか? まず、リベラルとは主に誰で、反リベラルとは主に誰なのかを確認しましょう。バイデン次期大統領の支持は、①都市部、②若者、
日本でも新型コロナが猛威を振るっていますが、読者の皆様が無事健康に過ごされていることを祈っています。新型コロナの影響で、博士論文の予定が完全に狂ってしまったので、対応に追われる忙しい日々を送っていますが、久しぶりに面白いブログを読みました。抵抗さんの「国連機関で働く私が転職を検討するに至った背景」です。 少し前から抵抗さんをフォローしていて、自分の20代は抵抗さんとよく似ていたので(スキルセットは抵抗さんの方が上なので、似ているというのもおこがましいですが苦笑)、抵抗さんの記事を読んだ感想を、特に20代で国際教育協力で国際機関(本当は特定の国際機関を指したいですが、抵抗さんが所属をぼかしているので、それに従ってこの記事でも、私の過去以外は、国際機関という表現を使おうと思います)でデータを駆使して働くという観点から、つらつらと述べてみたいと思います。 ①20代で国際機関に行くと、成長は止まっ
米国は、新型コロナ・それにまつわる大量失業・暴動、と驚異的な事態となっています。新型コロナだけを見ても、依然として毎日2万5千人の新規感染者を出しつつ、あれだけ人々が密になる暴動が全米各地で起こっているという状況です。ちなみにですが、米国はオリンピックで最大の代表団なのですが、これを来年東京で受け入れるんですかね? 私の事をご存じない方のために、この記事に関連するバックグラウンドを説明すると、2008-2012年までワシントンDCにある世界銀行で働き、今はミシガン州立大学という、網走刑務所のような極寒の地で教育政策の博士課程をしながら、ネパールの貧しい子供達の教育支援をしているサルタックというNGOの運営をしています。 早速になりますが、この記事の内容を説明すると、少なくとも今後数十年経っても米国から暴動は消えないと私は考えています。それは、ワシントンDCという土地と、米国の教育政策を理解
良い記事を読みました。 「「いい加減な方法」の候補者選び 米大統領選、なぜ複雑」 私の書いた記事を読まれたことがある方なら、米国の教育システムは、基本的にその地域の固定資産税を財源とし、州政府や連邦政府からの支援を受けないもので、裕福な地域は固定資産税が沢山集まるので良い教育が、貧しい地域では固定資産税が集まらないので教育の質が低い、という大変不平等なシステムであることを理解していると思います(例えば、日本人が大好きな「ハーバード式・シリコンバレー式教育」の歪みと闇)。 米国の教育システムのもう一つの特徴は、教育委員会を選挙で選ぶものの、政党の影響が出ないようにその選挙は奇数年の春に行われるのが通例となっている点です(補足:大統領選挙が今年2020年の秋に行われるように、米国での大きな選挙は基本的に偶数年の秋に行われることになっています)。 この教育委員会公選制と固定資産税に基づく教育予算
博論の資格審査が控えているので手短に。これはあれですね、期末試験直前になると部屋の掃除をしたくなる感覚と同じですね。 今年は米国の大統領選挙の年で、誰が大統領になるかで私の進路も大きく左右されるので固唾を飲んで見守っています。現在は民主党候補者選びのスーパーチューズデーの直前ですが、誰がトランプ大統領のクビを取ってくれるのか私も注目しています。 有力候補の一人が日本でも知名度の高い、バーニー・サンダース氏ですが、もちろん私は政治学の専攻ではないので彼の全体像は分かりませんが、彼の掲げる教育政策を見ると、ムチャクチャ酷い、というか完全に詐欺師です。日本にも彼に似た詐欺師的な政治家がいるので、なぜバーニーサンダースは天才詐欺師なのか、ほんの少しだけ解説してみようと思います。 まず、サンダース氏が掲げる教育政策を確認してみましょう→リンク。一応日本語で要約すると次の通りになります。 ①高等教育機
博士資格審査試験の直前なので手短に、ユニセフにひどく失望しました。 ユニセフの教育部門の大きな方向性として、少し前にGeneration Unlimitedという物が出てきました→リンク 内容を要約すると、10-24歳の若者を対象とした、教育・研修・職業教育を重視し、ユースにスキルをつけて、ユースが持つ可能性をフルに生かせるようにしようというイニシアティブです。 このイニシアティブはユニセフ内で大きな影響力を持つようになってきていて、実際にJPOの募集でもスキル・中等教育分野を対象とした空席がGeneration Unlimited特別版として追加で大量に出ました→リンク。特別版でない方のユニセフの教育部門のJPOの募集(リンク)と比較すると一目瞭然ですが、空席の数は圧倒的に基礎教育よりもユース部門の方が多くなっています。JPO募集の締め切りは明日に迫っていますが、この流れを鑑みると、教育
今学期が終わりました。夏のネパールでの調査の失敗が尾を引き、なかなかに酷い学期でしたが、来学期は遂にComprehensive Examなので、気を取り直していきたいものです。来年の夏の調査は上手くいくよう頑張りますので、NGOの支援の方もよろしくお願いします(NGOの方でとてもインフォーマティブな有料ブログを始めたのでそちらもぜひ→https://note.com/sarthakshiksha/m/mcfe0d7a92fb0)。 今学期はミクロ経済学の授業を受けていて(今更感がありますが…)、これはひょっとしてPTAを考察するモデルになるんじゃないかというトピックが最後の授業で出てきたので、ここ数年日本でも話題になっているPTAについて、そのモデルを基に私なりに考えたことを少し書き留めておこうと思います。 税の物納(In-kind tax)とは?ミクロ経済学の授業の最後のトピックが労働供
今年もノーベル賞の季節が来ましたね。今年はMITのバナジー教授・デュフロ教授とハーバードのクレマー教授がノーベル経済学賞を受賞しました、おめでとうございます。授賞理由は、開発経済学におけるフィールド実験によって、貧困と戦うための知を切り開いたという点にあります(より詳しい授賞理由はこちら)。このお三方の功績は国際教育協力をやっていれば本当に日々実感する所であり、それはこのお三方がこの賞をいつか受賞しなければおかしいレベルだったので、選考委員会は良い仕事をしたなと思います(余談ですが、デュフロ教授のTEDトークは素晴らしいので、ぜひ見てみて下さい)。 高くて儲かるRCTが氾濫を起こすですが、タイミングとしては割と最悪だったように思います。それはなぜかと言うと、今現在この実験アプローチ(主流はRCTなので、以下RCT)が国際協力(日本を除く、重要なので二度言いますが、日本を除く)で氾濫していて
いよいよ明日テストなのですが、テスト前になると部屋の掃除がしたくなるように、ついほかごとをしたくなるので、Twitterで教育経済学にゆかりのある米国の経済学者たちが博士号を経済学部で取得する事と、公共政策大学院で取得する事の、メリットとデメリットを議論していてとても興味深かったので、それをちょっとまとめてみようと思います。 日本だと、まだあまり公共政策大学院で博士課程というのは馴染みが無さそうですが、米国だとハーバードのケネディースクールの博士課程なんかは結構名前が知られています。 経済学部の博士課程ではなく、公共政策大学院の博士課程で学んだ場合、①ミクロ経済学と計量経済学は、必修として経済学部の院生と同じ授業を取るケースが多いが、マクロ経済学や貿易なんかの分野はカリキュラムに入っていない事が多く、自分で必修外として学びに行かなければならないので負担が増す、②学ぶ内容とクラスメイトの幅が
先日、現代ビジネスの方に「アメリカの大学生はよく勉強する」は本当か? 、という記事を寄稿しました。大学生の平均的な勉強時間を日米で比較すると大差がないというデータに、自分が学んできた・教えてきた一流ではない米国の大学では学生は熱心に勉強していたから、このデータはおかしいというコメントが散見されました。なぜ「一流」ではない大学での体験談と、平均を表すデータにずれが生じるのか、少し解説してみようと思います。このズレを理解するカギは、米国の大学を下から見ているか、上から見ているか、にあります。 1. 米国の大学ピラミッド 「米国の大学は分野によって強い大学が違うので、日本のように全ての大学を一律にランキングすることは難しい」という話を耳にしますが、これは正しくもあり、間違ってもいます。 お隣のミシガン大学ならまだしも、私のいるミシガン州立大学は日本では超マイナーな大学だと思いますが、ここの教員養
今学期は必修の教育政策特論を取ることになりました。毎年トピックが変わるこの授業、最悪なことに今年はミシガン州の副教育長によるミシガン州の教育政策という全く興味の無いトピックになりました。 授業の内容は全く興味が湧かないのですが、実務家がどういう授業をするのかは、私も10年間国際機関で働いてきた実務家なので、とても興味が湧きました。 初回の内容は、過去20年間の大きな教育政策の流れと、それのエビデンスとなった論文の読解でした。対象となった論文は末尾に置いときますが、重要所はカバーされているし、最近の論文も入っていて、実務家でもこんなに因果推論に注意を払って、エビデンスを吟味して、がっつり論文を読ませる授業をするんだなと驚きました。まあ、ここミシガン州立大学で博士号を取得している人なので、さもありなんという感じかもしれませんが。 授業の帰り道に、同じ授業を取らされているインド人の友人に「授業の
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