社会政策・労働問題研究について歴史的なアプローチで研究しています。ここではそのアイディアやご迷惑にならない範囲で身近な方をご紹介したいと考えています。 私が労働問題研究を始めた2000年代の前半、左派の凋落は痛々しいほどだった。原因ははっきりしていて、かつては社会科学の基礎教養とも言うべきだったマルクス経済学が、90年代のソ連崩壊とともに徐々に影響力を失ったからである。「マルクス」まわりの最大の魅力はまさに社会科学万般から哲学に至るまで接合するパースペクティブを持っていたことだった。だから、異分野の対話を行いやすかった側面がある。それにマルクス経済学の成果がことごとく無に帰したわけではない。通俗的に言えば、資本主義対社会主義、アメリカ対ソ連の対立があり、フリードマンらの新自由主義とマルクス経済学が構図上、対立しているように見えたのである。だから、ソ連が崩壊したことはマルクス経済学が敗れたか