冬を迎えたチリで、感染症専門家のクラウディア・コルテス氏はここ2カ月、勤務先の病院で新型コロナウイルス感染症患者を生存させることに全力を尽くしていた。一方、この状態で例年通りインフルエンザ患者の波が加わればどうなるのかと深く危惧していた。 だが、その波が訪れることはなかった。 アルゼンチンや南アフリカ、ニュージーランドといった南半球の国々では今年、インフルエンザや他の季節性の呼吸器ウイルス感染が従来の水準をはるかに下回っている。中にはインフルエンザがほぼ消えたとみられる国もあるほどだ。専門家らによると、マスク着用や渡航制限など、新型コロナ封じ込めに向けた措置が寄与しているとみられており、予想外の明るい兆しをもたらしている。 秋から冬にかけてコロナ感染の第2波を警戒している欧米の保健当局者にとって、インフルエンザの感染減少は朗報だ。寒さで屋内に人が集まる環境ではコロナの感染が広がりやすいだけ