生存者たちの悲鳴やすすり泣きが聞こえるなか、2014年にルワンダを訪れた潘基文(バン・キムン)国連事務総長(当時)は、スタジアムを埋め尽くす3万人の聴衆に呼びかけた。「『二度とあってはならない』という言葉を何度も発するようなことがあってはなりません」。その20年前、ルワンダではわずか100日間に80万人以上が殺害される大量虐殺が起き、のちにジェノサイドと認定されている。(参考記事:「ルワンダってどんな国?」) ルワンダ虐殺は、国際刑事裁判所が歴史上初めてジェノサイドの罪で有罪判決を下した事件だ。ジェノサイドはナチスのホロコーストをきっかけに定義された犯罪だが、ロシアによる2022年のウクライナ侵攻は、ジェノサイドの定義と訴追をめぐる議論を再燃させている。以下では、ジェノサイドという言葉が生まれた経緯と、その認定が難しい理由を解説する。(参考記事:「大虐殺後に女性躍進、ルワンダで何が起きたの