長かった梅雨のあけた翌日、谷中へ出掛けた。 JR 日暮里駅から谷中霊園を通り、坂の多い街並みをジグザグに下のほうへ降りていくと、そこは猫の町である。 写真は 「夕やけだんだん」 と名付けられた階段。以前、家人がここを訪れた際は、ちょうど猫の集会が行われていたらしく、十数匹の猫に会ったそうである。だが、真夏の白昼、猫は一匹も見当たらなかった。 「谷中銀座」 という下町商店街を抜け、根津方面に向かったのだが、どこまで歩いても猫はいない。 仕方なく、通りすがりの人に案内をもとめることにした。 「すみませーん」 「はい?」 「あの、ここらへんで猫に会える場所、ありますか?」 「あー。よくそういうひと来るんだよね。じゃあ、ちょっとついて来なよ」 親切な人でよかった。さすがは下町、人情味にあふれている。 だが、案内のひとは通りをはずれ、どんどん住宅街の中を歩いていく。あたりは蝉時雨が聞えるばかり。周囲
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