<イスラエルでは家族の遺体から精子を採取して、子供をつくりたいと望む人が増えている> わが子に先立たれた親の喪失感は計り知れない。「血筋」にこだわる伝統的な社会では、特にそう。イリットとアシャーのシャハール夫妻も、まだ息子の死を受け入れられない。今も壁に遺影を飾り、キッチンにはブロンズ像を置き、父アシャーは息子の顔を刻印したメダルを首に掛けている。 息子オムリが亡くなったのは6年前のこと。何の前触れもなくイスラエル軍の使者が同国中部の町クファルサバにある夫妻の家にやって来て、オムリ(海軍士官で当時25歳)が自動車事故で死亡したと告げた。 母イリットは泣き崩れた。そして使者に迫った。「息子の精子を、遺体から取り出して!」 使者は困ったような顔をして、「それには裁判所の許可が必要です」と答えた。すると元軍人のアシャーは、使者の目を見据えて言った。「では、ぐずぐずしておれんな」 アシャーは使者と
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