Q,宗教学の研究者として、現代の宗教学の役割とは、ひいては、人文系の学問の役割とはどんなことだと思われますか。 A,宗教学の役割とは、「そもそも宗教とは何か」という問いに答えること、そして、歴史的に存在してきた宗教、世界中に存在する宗教に対し、それがどのような経緯とメカニズムによって成立しているのかを、可能な限り客観的に分析することです。 宗教学のこれまでの歴史においては、こうした役割を果たすための学問的業績が蓄積されてきたことは確かですが、思うようにはいかなかったというのも、また事実でしょう。現在の日本の宗教学や、その他の人文学について言えば、そこには大きく二つの問題があるように思われます。 一つ目は、戦後の人文系の諸学において、戦前・戦中の国家主義への反動から、「左翼的イデオロギー」が必要以上に幅を利かせたことです。まず、五〇年代から六〇年代にかけては、マルクス主義的な革命運動や反国家