→紀伊國屋書店で購入 ハングルは15世紀という遅い時期に他の文字を十分研究した上で作られたので造字原理が非常に洗練されている上に、誕生の経緯を記した文書群が今日に伝わっている。南北朝鮮の人たちがいうような至上の文字だとか万能の文字だという自画自賛は別にしても、非常に興味深い文字であることは言うを待たない。 本書はハングル創製にあたって李朝第四代の王世宗が公布した『訓民正音』を現代の言語学というか現代思想の観点から読みとこうとする試みである。ハングルの言語学的考察としては姜信沆『ハングルの成立と歴史』があるが、その成果を踏まえながら漢字の世界と決別した「正音エクリチュール革命」としてハングルを考えようとしたらしい。 らしいと書いたのは本書でくりかえし語られる「驚き」には政治的レトリックがちらついていて、文字通りには受けとりにくいからである。 わたしがまず引っかかったのは北朝鮮を共和国と表記し