東南アジアの歴史に対しては茫洋としていていまひとつ捉えどころがないイメージを感じてきた。目を閉じてみる。茫洋とした海原を越えた先に燦然と輝くアンコール・ワットが浮かんだかと思えば、すぐにヴァスコ・ダ・ガマらポルトガル人が押し寄せ、商人と海賊とが交錯するうちにポルトガルやオランダ、イギリスの植民地と化して、東南アジアの現地の人々の営みはすぐにイメージから消え去っていく。そのあとに浮びあがるのは二十世紀の苛酷な内戦と独裁と戦争、そして二十一世紀の目を見張る経済成長の姿だ。特に十五世紀以前の東南アジア地域のイメージは殆どないと言っていい。 近くて遠い東南アジアの歴史はどのようなものだったのか。著者は東南アジアの歴史を、古代から中世、中世から近世、近世から近代というような、直線的な『進歩と発展をともなう歴史展開ではな』(P29)く、『いうなれば「自己充実史」であり、「精神文化深化史」ではないだろう
シリーズの特色 ■「国家」や「領土」を基軸とする歴史認識を越えて,人・モノ・情報が移動・交流する場としての「海域」から東アジアを捉えなおす. ■近代以前の国交なき時代に展開した,日中・日韓の往来の歴史を知る. ■歴史学を中心とした人文学のみならず,建築学,植物学,環境といった自然科学の視点もまじえ,総合的に交流の諸相を明らかにする. ■書画,書物,仏教など「日本伝統文化」の起源を,多彩で豊富な交流のなかに探る. ■多分野横断的な共同研究の成果を,やさしい叙述と多数の図版でわかりやすく提示. 1 海から見た歴史 羽田 正 編 これまで「国」単位の歴史をもとに理解されてきた東アジア史を,「海域」概念を用いて描きなおし,新たな歴史解釈の可能性を示す.「東アジア海域」という地理的には同じ位置に視点をおきつつ,時間軸のうえでは異なった3つの時期に注目することによって描きだされるそれぞれ
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