■2012年のなかで最高の書物 街にクリスマスソングが流れるころ、歯科医師の一家4人が皆殺しにされる。犯人はケータイサイトで知り合った若者2人。目的はカネでもなく恨みでもなく、ただなんとなく。残酷ではあるけれども凡庸な事件を、徹底的に緻密に描いたのが高村薫『冷血』である。 上下2巻、3章からなる。「第1章 事件」は、被害者と犯人、それぞれの視点で、犯行に至るまでのプロセスが描かれる。「第2章 警察」は、事件発生から犯人逮捕までを警察側の視点で描く。刑事・合田雄一郎が登場するのは、この第2章、149ページから。そして下巻は「第3章 個々の生、または死」に丸々充てられる。 たいていの犯罪小説は犯人が逮捕されるところで終わる。ヤクザの家系に生まれた男と教育ママに育てられてドロップアウトした男が出会い、行きずり的な犯罪に手を染める。男たちの意識の流れは克明に描かれていて、どこにも謎はない(はずだ)
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く