吸血鬼というと貴族的な怪物を思い浮かべる者も多いだろう。医師ポリドリが詩人バイロンをモデルにして作り上げた吸血鬼やブラム・ストーカーが創造したドラキュラ伯爵などによって生み出されたイメージである。一方、民間伝承の吸血鬼という奴がいる。こちらには貴族的なところなどまるでない。何だかぶよぶよしたもの、もしくは死人、である。この作品ではウピールと呼ばれている。ジェキの村の領主クワルスキはこう解説する。 ――吸血鬼だ、とクワルスキが口を挟む。――ゲーテが書いたような美女でも、バイロン卿が書いたような青褪めた美男子でもない。この辺で信じられているのはもっと野蛮なやつだ。よくある話では、最初は形がない。家畜や人を襲って血を吸うと、ぶよぶよの塊になる。更に餌食を貪ると、次第に人の形を整える。別の説では死人だ。生まれた時に胞衣を被っていたり、歯が生えていたりした者が死ぬと墓から出て人を襲う。大抵は余所者や